授業中、あまりにもうるさいので生徒を注意した。

とはいっても、しゃべっているのは3人。

彼女らの話題は昨日のドラマの俳優らしい。 

 

「ほら、そこ。授業はじめるぞしゃべらない!」

 

「センセィ!昨日のドラマの俳優さん知っていますか?」

 

時々授業を潰したい生徒は、

自分が注意されているにもかかわらず

問題のすり替えを行う。

 

そして、それに乗っかるダメ教師。

 

「・・・ん?あぁ。ジャニーさんでしょ。」

 

「あの人いいでしょ?」

 

3人が顔をそろえて言った。

 

「あの俳優、どこがいいんだ?」

 

確かに顔はいい。声もまぁまぁ。だけど

正直、目の肥えてしまった

大人からしてみたらあの俳優の演技はいただけなく

学園祭の延長レベルだった。

 

「なんかねぇ?」

「ねぇ~」

 

共通する概念があるらしく、3人は声をそろえた。

 

「先生にも分かるように何点か挙げて説明してくれない?」

 

「分かった。じゃあ考えてみる。」

 

すると、しばらくの沈黙の後、彼女らは答えた。

 

「え~。う~ん・・・顔?」

 

 

なんだろう。

この、俳優が哀れに聞こえる発言は・・・。

高山たち4人は高校生の冬休み、大きな荷物を抱え

電車で田舎の温泉街のスキー場へ行った。

 

 

「なぁ、小守、残金いくら?」

 

「590円。」

 

「そんだけか?中島は?」

 

「・・・1300円。」

 

「そう言う松本はどうなの?」

 

「300円!!」

 

『最低じゃないか!』

 

「はぁ・・・」

 

ため息交じりで高山が口を開く。

 

「・・・お前ら3人で1人分か?俺のサイフも5000円ちょっとしかないぞ?」

 

文句も白く色つく雪の世界。

 

松本の無計画な思いつき提案旅行で家を飛び出した4人。

散々遊び歩いた後、やっと

帰りの駅の構内に着いたものの、

全員の残金を合わせても

ひとり分の電車賃が足りなく立ち往生。

 

「どうするよ?もう来るぞ?子ども料金は無理か?」

 

そう提案した彼の身長は180を越えている。

高山が苦笑しながら言う。

 

「松本、お前の身長じゃ子ども料金は無理だろ?つぅか、お前ら計画立てなさすぎ。」

 

「だってさ、来る時に特急に乗るとは思わなかったんだもん。」

 

小守がお土産の山をがっちりと抱えながら訴える。

その姿はお調子者の末路しか見えてこない。

 

「あのな・・・。せめて金くらい・・・。こんなぎりぎりで。足りん言われても・・・。」

 

中島はぼんやりと駅を眺めている。

我、関せず。決めてくれと言わんばかりに。

 

松本はまた一言。

 

「子ども料金・・・。」

 

「だから、無理だって!」

 

「いや、小守だよ、小守。」

 

「小守?あぁ、確かに、150ないしなぁ・・・って、アイツひとり、子ども料金でも足りねぇの!」

 

「はぁ・・・。」

 

大荷物を抱え、一同は頭を悩ませていた。

やっぱりひとり置いていく事になるのだろうか・・・。

もう明日まで電車は来ない。

 

コレに乗り遅れたら、家までヒッチハイクだ。

 

場内アナウンスが流れる。

 

『3番線に快速△△が入ります』

 

ガタンゴトン

ガタンゴトン

 

プーーーーーー

 

 

「ん?どうするんだ?松本。」

 

「小守ゴメン!!」

 

「えぇ!?ちょっ・・・」

ガタンゴトン

ガタンゴトン

 

プーーーーーー

 

「中島、コレ持って!」

 

 

 

松本、高山、中島の

3人は、荷物4人分を抱え、急いで帰りの電車に乗った。

 

「中島、重くないか?」

 

一番体格のいい中島が2人分荷物を持っているのだが、

小守の荷物はやたらと重いらしく引きずるように運んでいる。

 

「・・・ん。大丈夫。」

 

「お前、2人分持っていても全然違和感ないな。」

 

「何キロだっけ?(笑)」

 

「なぁ、とりあえず、座ろうぜ。その荷物、丁寧に扱えよ?」

 

 

カタンカタンカタンカタン。

線路を走る音はまだ聞こえ、立っていると少しバランスを崩しそうだ。

 

3人は席を探し、向かい合うように座った。

松本の隣には高山、向かいに中島。

中島の隣は荷物置き場と化していて、

松本の足の先に一番大きなかばんを置いた。

 

 

「しかし、うまく行ったよなぁ。」

 

「コレしか方法はなかったのか?ちょっと可愛そうだぞ?」

 

高山と松本は今、自分たちの行った行為について話しだす。

外は枯れきった木々と雪景色が写る。

ぼんやりと小守のかばんを眺める中島。

 

「・・・・。」

 

「さっきも言ったけど、中島、それ、一応丁寧に扱えよ?」

 

高山が、心配そうに中島に言った。

 

「ん。」

 

高山と松本が間一髪だったと会話している中、

中島はまだ小守のかばんを見ている。

 

「・・・。」

 

「・・・大丈夫?」

 

「だいびょうぶ。」

 

「オイ、中島。かばんに話しかけるな。ばれたらどうするんだ?」

 

「・・・ん。」

 

「いいじゃないか。誰もかばんの中に人が押し込められてるって思わねぇよ。」

 

「クラィィ・・・。」

 

「我慢してくれ。この中じゃ、小守しか入れないんだ。」

松本はかばんに語りかける。

 

半笑いしながら高山は言った。

「・・・・松本、お前よくこんな事思いつくよな。」

 

「狭いし、暗いぃ~。」

 

「松本、かばんがなんか、言ってるぞ?」

 

「後、2時間ほど我慢してくれ。」

 

「えぇ!?」 

 

 

 

・・・・・10分後・・・・・・

 

 

駅員さんがやってきた。

 

「キップの・・・」

 

「あっ、はい。」

 

みんなのお金を預かっていた高山が答えた。

小銭ばかりしかないものだからジャラジャラ音が立つ。

 

「大人3人で、終点までお願いします。」

 

駅員さんは

手に持っている券の発行機が苦手なんだと話しながら

手馴れた様子ですんなりと計算し料金を算出した。

 

高山が、精算している間、松本が駅員さんと会話している。

 

「どこから?」

 

「えっと、もう帰るところなんですよ。」

 

「あぁ、じゃあ、あの街の出身かい?」

 

 

準備し終わった高山が駅員さんに尋ねた。

 

「お金小銭多いですけど大丈夫ですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ。じゃあ6780円ね。」

 

高山が小銭の山を手渡そうとしたその時、

かばんから声が聞こえてきた。

 

「ねぇ、まだぁ~?」

「・・まだぁ~?」

 

「!!」

 

松本は思わず目の前にあるかばんを蹴った。

 

ボフッッッ

 

かばんは、サッカーボールを蹴ったような清清しくいい音がする。

 

「いたぃぃ・・・」

 

 

雑音をかき消すように高山は

愛想よく駅員さんに語りかける。

 

「い、いくらでしたっけ?」

 

 

しばらく、小銭をジャラジャラさせている

高山の顔を見る駅員のおじさん。

 

駅員さんはにこりと笑うと

 

「3人で、6780円ね。」

 

そう言い、高山に今発行した切符を手渡した。

 

 

「ふぅ・・・、なんとかばれなかったな。」

 

松本はほっとして、大息をついた。

 

「いたぃぃ・・・」

 

「ゴメン、ゴメン。あそこで声がするとは思わなかったからさ。」

 

「・・・?」

 

かばんと松本のやり取りをよそに高山の様子が変だ。

中島はそう思った。

  

「・・・・・。なぁ、中島?さっきの駅員さんの名前覚えているか?」

難しい顔して高山が切符を見ている。

 

「ん?確か、並河だったと思うよ。」

 

「高山どうした?」

 

松本も話に参戦してくる。

 

「・・・切符が4枚あるんだ。」

 

「機械が苦手って言ってたし、ミスじゃないの?」

 

「いや、そんなことないだろ?」

 

 

外の世界とは関係なくかばんの中からは悲痛な声が聞こえる。

「ねぇ・・・もう出ていい?」

 

「切符、4枚だよな・・・。」

 

「ん。」

 

「4枚だ。」

 

カタンカタン。

カタンカタン。

電車は軽快なリズムで進んでいく。

 

 

「小守、出てもいいよ。帰ったらみんなであの人にお金と礼の手紙送ろうぜ!」

 

カタンカタン。

カタンカタン。

 

窓からみえる風景はいつの間にか

雪景色から見慣れた街並みへと変わっていた。

 

 

狭いよぉ

対のお話。はなさかGさん

昔々あるところに

おGさんがひとり村はずれの小さな小屋に住んでいました。

おGさんはいつも孤独でした。

 

ある日のこと

1人だけでは寂しかろうと、

村の親切なおJさんが

一匹の子犬を連れてやってきました。

 

おJさんは言います。

「おGさん、この子を育ててみんか?」

 

おGさんは大喜び。

おJさんにお礼を言い、子犬を育てる事にしました。

 

子犬は真っ白な犬だったのでシロと名付けられ、

おGさんの愛情の元、すくすくとと育ちます。

 

ある日のこと

シロは畑を指します。

『ここ掘れワンワン』

『ここ掘れワンワン』

 

おGさんは不思議に思いながらも

掘り起こしてみる事にしました。

 

なんと

大判小判が

ザクザクザクザク。

 

それからというもの最初は戸惑ったいたおGさんも欲に目がくらみ

シロに土を掘る事を仕込みました。

シロも育ててくれたおGさんの喜ぶ顔を見るため一生懸命に掘ります。

 

掘れば一杯出てくるかもしれない。

 

人間欲が出てくるものです。

あちらこちらで掘りました。

 

ですが、自分の畑で掘るところのなくなったおGさんは

村人達の畑も掘ってしまったのです。

 

村人達はカンカンです。

責任を取ってこのおGさんに子犬をあげたおJさんが

おGさんの元へ行きます。

 

「おGさんや村人が困ってとる。畑を荒らすのはやめてもらえんかのぉ?

それに、シロのヤツも一日中掘らされて手がボロボロで弱ってとるではないか。」

 

おGさんは小判を眺めていておJさんの話は聞こえません。

一向に畑を掘る事を辞めようとはしませんでした。

 

おJさんは少し手荒な気もしましたが、

村人の代表としての責任もあります。

シロを無理やりもらいました。

 

「ちゃんとしつけたら返すからな。」

 

おJさんがシロを保護した時

シロはもうすっかり弱っていました。

それでも、掘る事を辞めようとはしません。

 

「そんなに、おGさんが好きなのか?」

 

「おい、そこは肥溜めじゃぞ?」

 

ボロボロの手から、

掘れるのはやわらかい土だけになっていたのです。

しつけのため、おJさんは厳しくシロを叱ります。

 

「ダメじゃないか、シロ!」

 

毎日毎日、厳しくしつけました。

 

でも、シロは掘る事をやめません。

 

足がボロボロで、

そこから病気にかかりシロは死んでしまいました。

 

悲しみにくれ、いつまでも泣いているおJさん。

そうです。おJさんは子犬の頃からシロの事を知っているのですから。

 

「ごめんな・・・ごめんな・・・あの家に渡したから・・・」

 

「でも、お前はおGさんが好きだったんだな。」

 

おJさんはシロの気持ちを汲み

せめて生前、シロが大好きだったおGさんの元にそのなきがらを返します。

 

相変わらず、小判ばかり眺めているおGさん。

おJさんは不快に思いながらもおGさんにシロの亡骸をわたしました。

 

「ひとりじゃ寂しいだろうからコレも一緒に植えてくれないか?」

 

そう言いおJさんはおGさんに一本の木を手渡します。

 

犬の死体を返してもらったおGさんは

もう小判は手に出来ないと泣きながら

庭に墓をつくりシロを埋めその隣に木を植えました。

 

時がたち・・・木はドンドン大きくなります。

 

おGさんは気がつきます。

もうすぐ年末だ。

あの大きな木から臼をつくり餅を売れば儲かるのではないかと。 

すぐさまシロの元へ植えた木を切り倒し臼を作りました。

 

この臼でつくった餅は

少しかわった色をしていて小判のように光り輝いていました。

味の方もたいそう評判でたくさん売れます。

おGさんの元にお金が舞い込んで来ます。おGさんの笑いは止まりません。

 

しかし、おGさんは考えました。

もう年末年始も終わり。いつか餅は売れなくなる。

 

「じゃあ、まだ臼が必要とされている間に売ればいい。」

 

と、そう思い立ったのです。

 

おGさんはシロのお礼にとおJさんに臼を買わないか?

と、持ちかけます。

 

「それは、シロに渡したものではないのか?」

 

と、木がなくなっていたことに気がついたおJさんは

おGさんに文句を言うのですが、おGさんはこう答えました。

「シロが夢に出てきて、臼をつくって餅をつけと言うんじゃ」

 

「そうか・・・シロがか。じゃあ、お前さんが今までどおり持っておればいいだろ?おGさん」

 

「ワシはもう年だから、きねが重いんじゃ。生前シロが世話になったお前さんなら許してくれるじゃろ?」

 

じゃあ譲り受けるよ。とおJさんはおGさんから臼を譲り受けました。

 

 

この頃、村では奇怪な病気が流行りだします。

みんなお腹がいたいと訴えるんです。

 

原因はおGさんの変わった餅。

つくったときは金色なのにしばらく経つと真っ黒になり

まるで糞のようになるのです。

 

ですが、現在、餅を作っているのはおJさんです。

コレに腹を立てた村人はおJさんに言います。

 

「こんなものをつくりやがって!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

おJさんはこれ以上病気を増やせないと、

臼を燃やしてしまう事にしたのです。

 

 

おJさんは、燃やした臼の灰を持って

このことをおGさんに 報告しに行きました。

 

「せっかくつくった臼を・・・申し訳ない」

 

「いや、いや、いいのですよ。それにしても本当に運が悪い。生きていればこんな事もあるだろうから気を落とすんじゃないよ。」 

 

おGさんは優しくおJさんを励ましました。

 

すると、おJさんは本当に申し訳なさそうに

「これ、シロの供養に」

そう言い、おJさんはせめて残った欠片くらいは渡そうと、

おGさんに臼の灰を渡します。

 

灰を手渡し太後のおJさん。

肩を落としとぼとぼ、村へ帰りました。

 

 

「こんな灰どうすればいいんじゃ?」

 

おGさんは困ります。

 

「とりあえず、その辺に撒いてみるか?」

 

こともあろうにおGさんはおJさんが一生懸命に集めた灰を撒き始めました。

灰を撒くと・・・

なんと枯れていた桜の木に花が咲くではないですか。

 

「こりゃおもしろい。それ~」

 

 

『おGさんは枯れ木に花を咲かせられる。』

 

村の人にもそのことが耳に入ります。

おGさんは枯れた木に花を咲かせる事が出来るのだと。

 

「それ~」

 

おGさんは花を咲かせます。

おGさんのことを避けていた村人達も大喜び。

春でもないのに桜が見られるのです。

 

それをたまたま見ていた大名様。

 

「コレ、そちはおもしろいものを見せてくれたな。褒美をやろう」

 

おGさんは、たくさんの褒美をもらいました。

 

たくさんの褒美をもらったおGさん。

 

「一芸は飽きられるからな・・・。」

 

と、この先余った灰をどうしようか考えていました。

 

そこへ、おJさんが乗り込んできたのです。

 

「おGさん!灰を撒くとはどういうことじゃ?」

 

「おや、おJさんではないですか?シロが夢に出てきて・・・」

 

「そんなウソをつくんじゃない!!」

 

おJさんは、供養の灰を撒かれた事に腹が立って仕方がありません。

 

「ウソじゃないよ?ほら、見て見なさいこの大名様の褒美。シロの御礼だと思わないか?」

 

「そうか・・・。シロが・・・。」

 

納得してしまったおJさん。

 

「そうだ。お前さんも灰を撒いて大名様から褒美をもらえばいい。まだ近くにいるはずじゃ。」

 

言われるがまま、灰を持ち出し灰を撒いてみます。

なんと本当にきれいな花が咲くではないですか。

コレはシロのお礼なんだと、おJさんも大名様のところへ向かいます。

 

少し、楽しくなってきたおJさん。

 

「はなさかJ。枯れ木に花を咲かせましょう」

 

大名様をはじめ、みんなの前で花を咲かせます。

 

でも・・・

 

「もう、それみたぞ~」

 

散々おGさんが見せていたので飽きられてしまいました。

 

それどころか

 

「他に、何かないのか~?」

 

と、言われる始末。

 

大名様は沈黙を守っていました。

困ったおJさんはやけになり、少し多めに灰を撒きます。

何度も見ている大名様は、花が咲く瞬間ではなく

どんな種があるのかを凝視していました。

そのことが災いして・・・

 

「あいたたたた」

 

灰が目に入ってしまったのです。

 

「こら!そこのはなさかJ!」

 

灰を大名様の目に入れてしまったおJさんはたんまりと大名様に叱られましたとさ。