前のお話へ戻る



砂漠の丘
 

ニコスのもとへと向かう途中、

「そう言えば、鳥がどこにいるのか聞くの忘れたな。」

そういいながら手にしているタマゴを見ていると

どくん。どくん。と、

脈打っていることに気がついた。

 

「え!?」

 

街で手に入にしたおまけはどうやら生きていたらしい。

肌触りも冷たく、何日かしたら食べようと思っていたマールには驚きだ。

 

「どうしよう?リリー?どうすればいいと思う?」

 

マールの頭の上を漂う蝶はマールの頭の中でささやいた。

 

『孵化までの残り時間、1時間24秒。』

 

あまりの返答にマールは困惑。

 

「そんなこと聞いてないよ。ってかこれ何のタマゴなの?」

 

『名称、アグマのタマゴ。』

 

アグマ?聞きなれない言葉だ。

 

「ねぇ?アグマって何?」

 

『アグマ、タマゴの製作者の名前。』

 

「???」

 

よくは分らなかったけどとにかく

もうすぐに生まれるのならニコスにも見せようと

足早に彼がいる控室へと向かった。

 

彼の控室の場所は

わかりやすく、兵士控室の看板が立てかけてあった。

 

他にも兵士志願者がたくさんいるのだろうと思い

マールが控室に入ってみると

中は暗く、誰もいないようでしんとしている。

周囲には槍や鎧など兵士の武器らしきものが一式置いてあり

妙に見つめられている気がした。

 

「うわっ。雰囲気あるな。」

 

むさくるしいイメージがあったのだけど、

どちらかというと魔術製作所のような雰囲気で

いろんな道具も置いてある。

 

部屋の真ん中には木でできた安っぽい机が置いてあり、

黄色くしみのついた布がたくさん無造作に積み重なっていて

その布たちの隣に紙切れが置いてあった。
 

本当は、近くにあった鎧を触りたいと思っていたのだけど、

ニコスを探すほうが先で、彼の手掛かりを探した。

マールの目に留まったのは中央の机の上にある手紙。

勝手に読んではまずいかなとは思ったものの、

無造作に置いてあるので読んでみた。

 

手紙には2、3行ほどしか書かれいなく

冒頭にはこう書かれていた。

 

『マールへ』

 

この文字を見た瞬間にマールは安心して手紙を読み始めた。

 

『試験までずいぶん時間があるので城の裏手にある丘にいます。

地図に印しておくからリリーにでも聞いて来てくれニコスより』


だそうだ。

そして2枚目にはその地図が描かれた紙があった。

 

マールは折られていた手紙を伸ばすと、リリーに差し出した。

彼の頭の上を漂っていたリリーは淡いピンクに輝き

手紙の文字を吸い取り始める。

 

文字が手紙から離れ

円を描くようにリリーの口元へと運ばれてゆく。

 

手紙の中味が真っ白になる頃

リリーの輝きも元へと戻った。

 

「リリー、ニコスのところまで案内してくれるかい?」

 

マールがそう言うと

リリーはゆっくりとマールに道を示すように先へと進んで行った。

 

「丘ってあれだな」

 

城を出リリーのいる方を見るとひときわ目立つ丘がある。

緑で覆われていて周囲の色とは明らかに違う。

 

しばらく歩き

マールが丘の上の方へ行くと

上の方から音楽が聞こえてきた。

 

甘く、優しくここっちよき眠りへと導いてくれそうなメロディ。

  
暑い風が吹いているはずなのに

やさしく温かな吹いている気がして

落ち着いた。

 

演奏者を見たいと思ったマールは

音のする方へと進んで行った。

 

歌が聞こえる。

やさしい歌。言葉のない歌。

音の強弱だけで語られる歌。

 

父親が不器用にも

子どもを抱く女を守るようなそんな力強さに

深い深いおもりの残るそんな歌だ。

 

マールの目に演奏者が映る。

 

「・・・ニコス?」

 

そこには楽器がない。

ただ、黙々と剣をふるう彼の友人がそこにいる。

 

「ニコス!」

 

「あ、マール。」

 

マールに気がついたのか、ニコスは手を止めマールに語りかける。

 

「ねぇ?ここで、音楽を奏でてる人いなかった?」

 

すると、ニコスはにんまりと笑って答えた。

 

「ここには、俺一人だよ。」

 

「ふ~ん?練習?試験がんばってね。」

 

手のひらの汗をふき取るとニコスはマールに聞いてきた。

 

「ありがと。それよりもどうだった?王様何言ってた?」

 

「ぶどうジュースがまずくなるから水をね、なんとかして欲しいんだって。」

 

「ぶどうジュース?」

 

しばらく考えた後ニコスは答えた。

 

「あぁ、ブドウサボテンね。」

 

「ブドウサボテン?」

 

「サボテンの頭にブドウみたいな実がなる植物だよ。9割が水でできてるんだってさ。」

 

「・・・・・それもガイドブック?」

 

「ん。マールも一読しておきなよ。」

 

そんな会話をしている間に

マールの腕に抱いているタマゴが動き出した。

 

「そういえば、忘れてた!ニコス、これもう孵りそうなんだよ。」

 

「で、これ何のタマゴなの?」

 

「アグマだってさ。リリーの奴それしか言わないんだもん。アグマって何さ?」

 

マールはタマゴを地面のやわらかそうな場所に置き

リリーを見ながら愚痴をこぼした。

 

「・・・アグマ。」

 

ニコスはぶつぶつ言いながら卵を見つめた。

 

「おい、マールタマゴが孵るぞ!」


タマゴが孵る。

ただ大きかったタマゴが。

 

パリっ。パリっ。

 

一枚一枚からがはがれ、

マールたちの前に中身が姿を現した。 

 

「・・・ねぇ、ニコス?」

 

「・・・・・何?」

 

「帽子って卵から生まれるんだっけ?」

 

少し間をおいてニコスが答えた。 

 

「・・・らしいね。布地は俺の舌には合わないけどな。」

 

「これ、食べれるの?」

 

「食べたいか?」

 

タマゴから出てきたのは緑色をしたとんがり帽子だった。

何の変哲もなく動きもない。

 

「これが、アグマ?」

 

マールがリリーに話しかけると、

リリーの羽から光が現れ2人に映像を見せた。

周囲は立体TVでも見ているかの用に幻想世界と変化する。

 

『アグマのタマゴ、十数年前にアグマ博士の開発したランダム魔法エッグ。』

 

中央に立体のタマゴが浮いていてリリーは説明をしだした。

 

「・・・魔法エッグか。知らなかったな。」

 

ニコスがぼそっと呟き何かを考えているようだ。

マールはまだ、リリーに話を聞いていた。

 

「ランダム魔法エッグって?」

 

『ランダム魔法エッグ、アグマ博士の発明したさまざまな魔法グッズをその卵に入れて販売していたもの。』

 

タマゴの映像の下の方には年号や何種類ものタマゴが表示された。

 

「それって楽しいの?欲しいグッズが手に入らないじゃない。」

 

『中をあけるまで何が手に入るか分からないドキドキ感を楽しむためのものとして流通。』

 

「・・・で?これはどんな魔法が使えるか分かる?」

 

いくつかの卵の中身の解説ページへと飛んだ。

 

『商品№14.正式名称ききみみ帽子。被った者は色んな動植物と会話ができるようになる。しかし・・・』

 

「おぉ!すごいね!ニコス見た?」

 

話途中で帽子を持ちさっそく使おうとするマールの手をニコスが止めた。

 

「マール、ちゃんとリリーの話聞いたか?」

 

そう言われマールは

もう一度、リリーの話に耳を傾けた。

 

『しかし、被った者は二度と帽子を取り外せない。』

 

「え?外せないの?蒸れたら痒くない!?」

 

リリーの映像が終わった。

目つきが鋭くなったニコスはマールに言う。

 

「アグマの発明品はどこか欠陥があるんだよ。」

 

「知ってるの?」

 

「・・・マスターの敵だからな。」

 

ニコスの顔は今まで見たこともないくらい怖い顔をしていた。

次のお話へ続く

ある激しい雨の降る夜のことだった。

真央は外の雷が恐く布団に潜り込んでいた。

「恐いよぉ」

外からは大きな雨粒が止む事なく音を鳴らしていた。
そして時折鳴る雷がその恐怖感を倍増させていたのかもしれない。

「・・・止んだ?」

急に音が聞こえなくなった。代わりに何かの機械音のような「うーん」って音が続く。

気になった真央は布団から顔を出し音の方へ向かって行った。

音は窓の先で鳴っている。
窓から外を見つめると大きな大きな円盤のようなキラキラした物体が浮いていてそこを動こうとはしない。

「・・・UFO?」

一瞬そう思ったその物体小さな小さな青白い光に別れ、それぞれが歌うようにフヨフヨと空から舞い降りた。

ふよふよ。
ふよふよ。
ふよふよ。

小さな光りはそれぞれが意思を持っているみたいに上下左右と自由に動く。

そのうちの一匹が窓を通抜け入ってきた。

真央の目の前でそれは青白く、そしてお腹が空いた子犬のように弱々しく漂う。

「あなた誰?雷の精霊?」
真央がそう言うと、光は驚いたようで窓の外へと逃げ出した。
すると他に散らばっていた光も集まり空へと帰っいく。
「うーん」って音が止むと空はまた激しい暴風雨へと舞い戻った。

真央はその様子をみて呟いた。
「・・・またね。」

子どもってやつは面白い。

 

少し前まで何も話せなかったのに

 

しばらく経つと龍著に話せるようになってくる。

 

今日もまた、娘と散歩をしていて驚かされた。

 

 

「ねぇ、お父さん!お父さん!見てみて!見てよ!!」

 

「ん?なんだい?」

 

「空見て!」

 

「あぁ。」

 

「ね?すごいでしょ?」

 

「うん。すごいね!」

 

「飛行機が脱糞しているんだよ?」

 

 

 

・・・脱糞。脱糞か。いったいどこで覚えてきたんだろうな。