今年初の“恋愛成就オペラ”!《愛の妙薬》でひたすらキュンキュン

今年初の“恋愛成就系”作品はこちら。新国立劇場の《愛の妙薬》です。とにかく明るい。そして、ひたすら楽しい。オペラって「悲恋」「死」「裏切り」も多いジャンルなので、ここまで安心して“キュン”に浸れる作品って実は貴重なんですよね。

 

ジブリ?ディズニー? とにかくカラフルな舞台空間

 

舞台が始まった瞬間から、色彩の洪水。赤、緑、黄色……プリンシパルたちのカツラは超カラフル。衣装も、どこかジブリやディズニーのようなポップさがあって、テーマパーク感満載。装置も可愛らしく、なにより照明がとにかく明るい! オペラって暗い照明で重厚に見せる演出も多いのですが、今回は舞台全体がぱあっと華やかで、「見ているだけで楽しい世界」になっていました。

オペラ初心者にもやさしい“わかりやすさ”

しかも、物語がものすごくわかりやすい。主役が誰か明確だし、視線誘導も丁寧。舞台の隅々までちゃんと見える設計なので、「いま誰が何をしているの?」となりにくいんです。オペラ初心者でもかなり入りやすい演目&演出だと思います。

世界観を壊さない、安心感あるキャスト陣

今回、とても良かったのがキャスト陣の安定感。誰か一人が世界観を壊すこともなく、全員がしっかり作品のトーンを共有している安心感。声量不足とか音程不安とか、そういう“現実に引き戻される瞬間”がほぼありませんでした。

アディーナとネモリーノの“王道ラブコメ感”が最高

アディーナは、ちゃんとツンデレ。ネモリーノを尻に敷いている雰囲気があるからこそ、この作品は成立するんですよね。一方のネモリーノは、とにかく翻弄されっぷりが自然。この役、新人テノールが演じることも多い印象ですが、細かな芝居や感情の揺れって、やっぱりベテランだからこそ出せる説得力があるなあと実感。「かわいそうなのに可愛い」が絶妙でした。

シモーネ・アルベルギーニ、納得の“モテ男”

そして、強かった。シモーネ・アルベルギーニのベルコーレ。もう“王道ライバル感”がすごい。立ち姿も衣装の着こなしも、「一般的にモテる男」がそのまま舞台に出てきた感じ。声の押し出しも立派で、陽キャなアディーナの相手役として説得力抜群です。
しかもちゃんとアディーナの気持ちのUP/DOWNを拾っているし、引き際も変にウジウジしない。嫌味にならないライバル役って実は難しいんですが、とても好印象でした。

今野沙知恵が変えた“舞台の空気”

今回、個人的にかなり印象に残ったのがジャンネッタの今野沙知恵。彼女が出てきた瞬間、舞台の空気が変わるんです。表情、しぐさ、周囲との距離感。決して派手に暴れるわけではないのに、「この人がいることでドラマが動く」がしっかり伝わってくる。脇役のようでいて、実は作品の潤滑油になっていました。

胡散臭いのに憎めないドゥルカマーラ

さらに、ドゥルカマーラのマルコ・フィリッポ・ロマーノ。胡散臭い。でも、その胡散臭さが逆にチャーミング。「あ、この人に騙されるならちょっと楽しそう」と思わせてしまう空気感が絶妙でした。軽いナンバーを楽しそうに歌って魅せるって結構難しいのに。人生楽しそう。お友達になりたい。

英語字幕のほうが“恋愛もの”として刺さる

あと個人的には、日本語字幕より英語字幕のほうが好み。日本語だと少し婉曲に訳されるニュアンスが、英語だとかなりストレート。恋愛感情の温度感がダイレクトに伝わってきて、ラブコメ感がより強く感じられました。

幸せな気分で劇場をあとに

派手な超有名アリア連発!というタイプの作品ではないからか、客席は少し寂しめ。でも、そのぶん“ラブコメらしいラブコメ”をじっくり堪能できた気がします。キュンキュンが止まらないまま終演。夢の世界を壊さない歌唱と芝居に、幸せいっぱいでした。

……幕間に飲んだの、ワインじゃなくて愛の妙薬だったのかもしれません。

 

【スタッフ 】

指揮:マルコ・ギダリーニ 

演出:チェーザレ・リエヴィ 

美術:ルイジ・ペーレゴ 

衣裳:マリーナ・ルクサルド 

照明:立田雄士

 

【キャスト 】

アディーナ:フランチェスカ・ピア・ヴィターレ 

ネモリーノ:マッテオ・デソーレ 

ベルコーレ:シモーネ・アルベルギーニ 

ドゥルカマーラ:マルコ・フィリッポ・ロマーノ 

ジャンネッタ:今野沙知恵 

 

合唱:新国立劇場合唱団 

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

 

このあと控えている高校生のためのオペラ鑑賞教室では、アンダースタディたちが中心になって舞台を担うとのこと。「万が一の代役要員」で終わらず、実際に舞台経験を積めるシステムになっているのがとても良いなあと感じました。

 

やっぱりオペラって、場数がものを言う世界。客席との空気のやり取り、広い劇場での声の飛ばし方、共演者との呼吸。稽古だけでは身につかないことが本当に多いんですよね。しかも若手にとって、「ちゃんと本番を踏める環境」があるのはものすごく大きい。

 

こういう育成システムが機能しているからこそ、層の厚さにつながっているのかもしれません。“代役”という言葉だけでは収まらない、実践型の育成。観客側としても、未来のスター候補を早い段階から観られる楽しさがあります。

 

ということで、どこかで有休取っちゃおうかと目論んでいるところ。