久しぶりのN響は「大人のオーケストラ」でした。団員のみなさんの安定感がハンパなく、大音量で音が散ることもなければ、ハラハラするような演奏もなく、さらに言うと、アンサンブルの各声部の音がちゃんと聞こえてくる素晴らしいコンサートでした。マエストロはダンディだし、ソリストも円熟の落ち着き払った演奏。品があって格調高かったです。とはいえ、プログラムは破廉恥な作曲家(今だったら活動休止&引退に追い込まれそう)の作品たち。そのギャップがまたよろし。
ベルクのヴァイオリン協奏曲は、夢のうつつでさ迷っているような、幻覚をみているかのような曲。ヴァイオリンも摩訶不思議な音を奏するだけなので、いつもの私だったら睡魔に襲われるところですが、不思議と眠くならないのは催眠術にかけられているんでしょうかね。諏訪内晶子 の演奏は「集中して聴きなさいよ!」と聴衆を惹きつけるものがありました。休憩を挟んでのマーラーはブルーノ・ワルター曰く「天上の愛を夢見る牧歌」。なるほど、今日は天上の音楽で揃えたってことですね。マーラーはベルクに比べて、人間臭いといいますか、各楽器の掛け合いやとろけ具合に色気があって、まだまだ現世に未練を感じます。弦楽器~木管楽器~金管楽器と歌い継がれるのが何とも美しくて幸せな気分になりました。ソプラノソロはオケに埋もれてしまった印象(席によって違うのかな)。華やかな聞かせ処があるわけでなく、ちょっと宗教曲っぽくもある曲なので大変です。
【出演】
指揮:ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン:諏訪内晶子
ソプラノ:森麻季
NHK交響楽団
【プログラム】
ベルク:ヴァイオリン協奏曲
マーラー:交響曲第4番 ト長調