吉田都芸術監督体制になってからと言うもの、新国バレエ団の快進撃がとまりません。毎月のように何かしら公演があるんですから、大したものです。今月は『バレエ・コフレ』…と聞くと、何だこりゃ?ですが、今まで『トリプル・ビル』というタイトルで上演されていた3本立て公演を踏襲した感じです。このシリーズの凄いところは、通常ですと、3チーム位にプリンシパルを割り振ってキャスティングが組まれるのですが、惜しみなくプリンシパルをほぼ全員一つの公演に出演させること! 今日の初日は柴山紗帆が出ていないだけど、他プリンシパルがそろい踏み。何とも豪華でした。何が豪華って、それぞれのプリンシパルが自分の得意技を存分に魅せること。そして、そんなプリンシパルたちに、若手ダンサーたちが食らいついて追い上げていること。充実期のバレエ団ならではの素晴らしい公演でした。

 

 

 まずは再演モノの『火の鳥』ですが、小野絢子以外はロールデビュー。ロシア物ならではの重厚な衣装が目に新鮮。そして、今回唯一のストーリーバレエとあって、小野絢子と奥村康祐という、新国プリンシパルの中でも演技派の二人をキャスティング。濃密な時間でした。


火の鳥:小野絢子
イワン王子:奥村康祐

王女ツァレヴナ:益田裕子

魔王カスチェイ:小柴富久修
 

↓年末年始のくるみ割り人形の入場記念でいただいた絵葉書↓

 

 

 休憩を挟んで二つ目の作品は『精確さによる目眩くスリル』という新制作作品。この作品だけなかなかキャストが発表されず、でも、チラシのメインは渡邊峻郁と米沢 唯なので、この二人は初日確定だろうなと思っていたらドンピシャリ。シューベルトの交響曲第9番の終楽章なんですが、テンポを落とすことなく、超絶技巧を新国バレエ団のテクニック自慢の5人が踊り狂うんですが、なんと裏キャストでは若手テクニシャンを揃えるという「そうきたか!」なキャスティング(もちろん、観に行きます)。ベテランたちが凄いのは、超絶技巧で超高速で休みなく踊り続けるのですが、緩急自在で決めの瞬間がピッタリ決まること。そして、常に笑顔! 日頃「ソロ」で踊っているし、もの凄い技術を見せつけるのに「マイペース」が通用しないのは何かと勝手が違うと思うんですが、必死感が全く感じさせずに軽々と演じきる姿は「これぞプリンシパル!」なのでした。そして、プリンシパルじゃない二人が混ざっているのですが、カーテンコールの並びも序列順ではなく彼女たちに花を持たせて中央に押しやる余裕といったら! とにかく、凄いものを観ちゃった、これに尽きます。カーテンが降りた瞬間、舞台裏からの歓声が聞こえちゃったのはご愛敬。今日のハイライト!


『精確さによる目眩くスリル』
米沢 唯、直塚美穂、根岸祐衣、速水渉悟、渡邊峻郁

 

 

 『精確さによる目眩くスリル』から休憩なしに上演されたのが『エチュード』ですが、こちらは役名が「プリマ・バレリーナ」とか「プリンシパル」という名前からも分かるように、スター性が求められる作品です。昨年、東京バレエ団の60周年記念公演でも上演されたので予習済ですが、ストイックな東京バレエ団と、エンタメ性を感じる新国バレエ団の個性の違いが出ていて面白かったです。どちらも日本を代表するバレエ団、レベルの高さだけでなく、個性もしっかり出せるのが強み。今まで、若手ダンサーとして「妹分」だった木村優里が一皮むけて、新国の殿:福岡雄大と、新国の若殿:井澤 駿を両脇に従えても納まりが良い貫録が出てきました。動きのタメも余裕があって、いよいよ円熟期に入ったかも! カーテンコールなんて「私がこのバレエ団を背負ってます!」な様相でした。そして、メンズの二人は新国の看板ということで踊り対決も、まさかのペアも、出番こそ少ないものの、出てきた瞬間に客席の空気をつかんでしまうのが圧巻でした。

 

『エチュード』
木村優里、井澤 駿、福岡雄大