東京バレエ団 60周年祝祭ガラ『ダイヤモンド・セレブレーション』NHKホール | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 東京バレエ団の創立60周年祝祭ガラ公演です。コンテンポラリー作品を揃えたのがいかにも東京バレエ団。NHKホールは巨大ゆえにオペラグラスこそ必須ですが、どの席からも観やすい会場。最近の見切れ席の多い劇場設計者にぜひ見習ってほしいところです。中途半端に舞台に近くても見づらい劇場よりも、ちゃんと見やすい劇場希望です。建て替えが発表された帝劇がどうなるか今からドキドキ(;^_^A アセアセ・・・ 記念公演とはいえ、さすがに満席にはならなかったけれど、客層が「バレエ・ファン長念してます、東京バレエ団ずっと観てます」という感じの方たちでとても暖かい雰囲気。そして、NHKホールは拍手の迫力が凄いんです。さすが、3600人収容!

 

 「エチュード」はピアノ弾きにはお馴染み、チェルニーの曲による作品(チェルニーのエチュード、ああ、やだやだw)。暗闇に後ろ姿で踊るダンサーたちの脚だけにライトをあててスタート。なかなか斬新です。そして、女性ダンサーを中心に様ざまなレッスン風景が繰り広げられるのが何だかバックステージ物を眺めているよう。そこに突如男性ダンサーが加わりにわかに活気づくんですが、ここからは高テクニックのオンパレード。3人トリオの踊りでは、順番に回転速度がどんどん早くなったり、シルク・ドゥ・ソレイユではお馴染み、クロスさせた2本のラインをダンサーたちが交互に高速でクロスしていく斜め移動、全員で「オディールが何人いるんだ?」なフェッテ、女性ダンサーなのに男性プリンシパルがクライマックスで繰り広げるジャンプしながら回転する技(専門用語なんでしたっけ?)で舞台を一周するかと思えば、男性は男性で集団でハイジャンプ。集団ダンス技術の高さに圧倒されました。迫力たっぷりです。来年の新国立劇場バレエ版が今から楽しみです。

 

 休憩を挟んで小品が三つ。このパートのみオーケストラではなく録音演奏。NHKは放送局だけあって、録音音源の再生が素晴らしいんです。これは東京文化会館も、新国立劇場も、東宝系の劇場も太刀打ちできません。録音公演ってたいがい生演奏とは段違いのクオリティの低さにガッカリしがちなものですが、NHKホールにおける再生は、大きすぎず、小さすぎない音量、バランスの良いミキシングなどどれも完璧でストレスフリー。「ドリーム・タイム」は無音で女性トリオによるダンスがスタート。音楽がない中、どうやってカウントをとっているんでしょうか。誰も寸分もズレないのが凄いこと。武満の音楽が加わってからは男性二人と女性一人のダンサーがソロで、カップルで、トリオで踊るんですが、宝塚におけるトップコンビ+2番手男役によるフィナーレナンバーみたい。「バクチⅢ」はヨガのレッスンでお馴染み、ダウンドッグやチャトランガ、ウッタナーサナなどが繰り返され「あ、ちょっと真似してみようかな」と素人を油断させておいたら、急にインド舞踊が展開。「あ、やっぱりプロに任せよう」とあえなく降参。それにしても東京バレエ団はコンテンポラリー作品がすっかり手の内でうまいですね。とはいえ、素人には無音だったり、効果音の連続、切り刻まれた音楽などではなく、流麗な音楽で踊ってくださってこそ楽しめるというもの。「ドリーム・タイム」は今回の公演唯一のロマンティックなデュエット。ストイックさが勝る傾向のある東京バレエ団ですが、甘さがワンポイント。

 

 そして再び休憩を挟んだハイライトはやっぱり「ボレロ」。ベジャール作品は多々あれど、「ボレロ」は別格。何度観ても素晴らしい作品です。男性ダンサーだけで40人位必要という、版権以前に、ダンサーをここまで揃えられるのは東京バレエ団しかないのではないでしょうか。とはいえ、バリバリ踊るのはそのうちの半分もいなくて、メタボなダンサー(東京バレエ団OB枠?)や、ひょろガリなダンサーは客席からはわかりにくいサイドに、マッチョダンサーはショーウィンドウよろしく客席正面に配置しているのについニヤリ。今日のメロディ役はゲストプリンシパルの上野水香。彼女の「ボレロ」、今が全盛期ですが、それゆえに「いつまで観られるかな」とちょっと寂しくも。東京バレエ団の「ボレロ」は録音による公演も多いけれど、今回はオーケストラがオケピに戻ってきてくれたのが嬉しい。

 

「エチュード」
振付:ハラルド・ランダ―
音楽:カール・チュルニー/編曲:クヌドーゲ・リーサゲル
東京バレエ団初演:1977年5月4日、東京文化会館
秋山 瑛、宮川新大、池本祥真

「ドリーム・タイム」
振付:イリ・キリアン
音楽:武満徹
東京バレエ団初演:2000年5月27日、東京文化会館
沖香菜子、金子仁美、三雲友里加、宮川新大、岡崎隼也

「バクチⅢ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:インドの伝統音楽
東京バレエ団初演:2000年10月5日、東京文化会館
シャクティ:伝田陽美
シヴァ:柄本 弾


「スプリング・アンド・フォール」よりパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:アントニン・ドヴォルザーク
東京バレエ団初演:2000年2月4日、簡易保険ホール
沖香菜子、秋元康臣(ゲスト)

 

「ボレロ」
音楽:モーリス・ラヴェル
振付:モーリス・ベジャール
東京バレエ団初演:1982年7月19日、東京文化会館
メロディ:上野水香(ゲスト・プリンシパル)

協力:東京バレエ団OB