台北アフタースクール/シネマート 新宿 | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 気楽なコメディ映画かと思って劇場に足を踏み入れたのですが、前半は予想通りのコメディ、でも、後半は重すぎない程度に、でも「君たちはどう生きるか?」な流れに気づいたら泣かされてました。1994年の台北の予備校「成功補習班」に通うチャン・ジェンハン、チェン・シャン、ワン・シャンハーの3人組「成功三剣士」を中心とした青春もの。アラフィフ世代の面々には懐かしい世界観じゃないでしょうか。男の子がみんな前髪パッツンの坊っちゃん刈りなのも、女の子たちが凛々しい太眉なのも時代です。気楽なコメディ映画かと思って劇場に足を踏み入れたのですが、前半は予想通りのコメディ、でも、後半は重すぎない程度に、でも「君たちはどう生きるべきか?」な展開に気づいたら泣かされてました。

 

 前半は高校生たちのキラキラした青春ぶりが眩しく、お馬鹿な言動の連続に大笑い。主人公のチャン・ジェンハンはクラスメイトのチェン・スーが好きなんだけど、チェン・スーが好きなのはチャン・ジェンハンの友達の和尚が好き。でも、和尚は女装(のちに性転換手術も!)をしたい男の子。して、チャン・ジェンハンの親友のチェン・シャンはイケメンで女の子からモテモテだけどチャン・ジェンハンが好き。と、青春ものにありがちな人間関係のベクトルがまったく交わらない一方通行。誤解が誤解を呼んで収集が付かなくなってくるサマはまるでシェイクスピア演劇! 

 

 そして、後半はいきなり方向転換。予備校に産休講師の代理としてシャオジー先生が登場するんですが、若くてイケメンで恋愛やセックスについての風変わりな講義を行うんですが、でもシャオジー先生はゲイで、高校生たちもゲイ・カルチャーと触れ合うことで自分自身と向き合い、人生を見つめ直していく青春の日々が描かれます。恋愛対象は女性のはずなのに、男同士でじゃれ合うのも大好き……同性の仲間に友情なのか愛情なのか分からない感情を抱き、悩み、傷つけてしまうというお話にシフト。

 

 30年前というと、LGBTが市民権を得る過渡期ということもあり、自分のアイデンティティを親や友達にカミングアウトする葛藤、打ち明けられた親世代のショックと戸惑い(今のようにネットで情報入手できないし)、レインボープライドを意識して運動する若者たち……ここ30年で世界が変わったことが強く印象に残りました。最初は息子を受け入れられずに勘当してしまうものの、我が子への愛情とのはざまに葛藤し、意を決して実家に戻った(元)息子を不器用に受け入れていく父子のシーンに涙腺崩壊。前半で笑わせて、後半で泣かせるって予備知識なしに観た映画なのでまんまと作者の思うつぼにはまりました。

 

 嬉しかったのは台湾の親日ぶり。部屋の中にはさりげなく日本の漫画のポスターが張られているし、本田美奈子のTバック写真集や吉川晃司の「モニカ」(映画公開の時点で20回忌を迎えるレスリー・チャンによるカバー)が主題歌的に扱われたり、アラフィフには「懐かしい!」映像たちでもありました。まだLGBTがオープンでなかった頃の台湾(今や逆転している気がしますけど)の若者が目指すのがサンフランシスコと並んで日本というのもちょっとくすぐったい。

 

2023年製作/118分/PG12/台湾
原題:成功補習班 After School
配給:ライツキューブ
劇場公開日:2024年7月26日

 

【スタッフ】

監督・脚本・製作総指揮:ラン・ジェンロン
製作総指揮:デニス・ウー、ハンク・ツェン
共同脚本:ダニエル・ワン
撮影:ジャオ・ウェイジエ
編集:キポ・リン
音楽:リン・ゲンノン

 

【キャスト】
チャン・ジェンハン:ジャン・ファイユン
チェン・シャン:チウ・イータイ
和尚:ウー・ジエンハー
チェン・スー:シャーリーズ・ラム

リウ・ジンシー/ミッキー(シャオジー先生): ホウ・イェンシー

 

 

↓台湾版のチラシ↓