事に素晴らしい『ロミオとジュリエット』でした。まずは主演のキャスティングがぴったりで、少年役が一番似合う(と思っている)柄本弾と、中学生の女の子にしか見えない沖香菜子のジュリエットとあって、ティーンエイジャーの恋愛ものがドンピシャリ。とにかく初々しいったらありゃしない。若気のいたり、「これしかない」という思い込みの激しさ、想定外の事態への戸惑いっぷりなどを表現するのに、全然トウが立ってないのに脱帽。大きなロミオと小さなジュリエットなので、クランコ振り付けならではの超難易度の高そうなリフトの数々がどれも簡単な技に見えたのもびっくり。バルコニーの場なんて、散々踊って、リフトもしまくった挙げ句の懸垂なんかもあって、男性ダンサー泣かせ。でも、ヒョイっといとも容易そうに演じているのが凄かった!!!
華奢なダンサーが多い日本のバレエ団は「かわいい」に納まってしまうこもが多い中、ジプシーたちは「元男役ですか?」と思ってしまう大きな動きと激しい表現だし、マキューシオが殺さたあと「あんた邪魔!」とロミオを突き飛ばすし、キャピュレット夫人は殺されたティボルトに襲いかからんばかりにのしかかての嘆きっぷり、迫力たっぷりでした。(キャピュレット夫人はそのすぐ後、しれっとジュリエットにパリスを引き合わせる変わりっぷりもドン引き←た、楽しんでますよ!)。男たちもティボルトは中学校に一人や二人いそうな大人の言うことなんてきかないやんちゃ坊やだし、マキューシオのお調子っぷりと身体能力の高さも学生っぽい。来日公演や、日本のバレエ団でも大人ぽいダンサーが演じるとついつい「中高生世代の話」ということ忘れてしまいますが「兄も恋人もフィアンセも(ついでに恋人の親友も)一日で失ってしまう女子中学生を巡るスキャンダラス」な事件、大人たちしっかり! と思いつつ、ロミオやジュリエットの両親だってまだ30代、ひょっとしたら20代!ですもの、そりゃ歯止めがきかなくなりますよね。。。昔はキュンキュンしながら眺めていた『ロミオとジュリエット』の世界ですが、今回は「大人たちが不甲斐なくてごめんね」と申し訳なくなりながら家路についたのでした。
東京文化会館は古い多目的ホールですが、音響の良さ、音圧の高さはサントリーホールや新国オペラパレスといった専門施設よりも実は上ではないかと密かに思っているんです。プロコフィエフの心情にそった雄弁な音楽&畳み掛けるような変容の渦にドップリ。チャイコフスキーがメロディメーカーであるのに、対し、芝居歌的バレエ音楽はプロコが最高峰! 演劇的な作品だとよりその威力を発揮します!
【キャスト】
キャピュレット公:木村和夫
キャピュレット夫人:奈良春夏
ジュリエット:沖 香菜子
ティボルト:安村圭太
パリス:生方隆之介
ロザリンド:政本 絵美
モンタギュー公:鳥海 創
モンタギュー夫人:平木 菜子
ロミオ:柄本 弾
マキューシオ:宮川新大
ベンヴォーリオ:樋口祐輝
ジプシー:伝田 陽美、三雲 友里加、加藤 くるみ
【スタッフ】
振付:ジョン・クランコ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団