東京バレエ団の『くるみ割り人形』はロシア版の流れをくむものなので役名はクララではなくマーシャ。コールドバレエの衣装がシンプルでスタイリッシュで、装置の色彩が重厚で重めです。東バもダンサーの世代交代が進んでいて王子役の池本 祥真は2018年4月入団ながらほぼほぼ主役デビュー。176cmの身長とのことですが、東バは長身のダンサーが多いので小柄に見えるのが面白いところ。めいっぱいジャンプしていて、動きがキビキビしているのが若々しくて好感度大です。その一方、女性ダンサーのサポートはまだこれからのようで、抱っこしそこねてヒヤっとさせられたり、手を伸ばしたら相手役が…いなかったり、お披露目公演ならではのスリリング満載なのがライブの醍醐味! もう一人の新進スター、マーシャの金子 仁美は体幹の強さが伝わってくるダンサーで、ヨガやピラティスが得意そう。難易度の高そうなポーズのキープ、王子にリフトされた時の静止っぷりがアッパレ。格好良い系のダンサーに成長しそうでこれからが楽しみ。
オーソドックスなプロダクションなので、全体的なテンポはゆったり。NOT ファンタジー(スタダンとか)、NOT ショーアップ(新国とか)。第一幕は大人が子役も踊ったりしているけれど、前半は芝居中心なので、くるみ割り人形が王子に代わってから俄然面白くなります。雪のワルツは雪の精たちの人数が少なめだけど、個人的には花のワルツよりもお気に入り。そして、お菓子の国への旅立ちは、乗り物でもなく、気球でもなく、王子がマーシャをひょいと担いで幕。と、書いたばかりだけど、二幕頭では遊園地のティーカップのような乗り物に乗っていてビックリ。
第二幕の王子とマーシャノパ・ド・ドゥでは「ドシラソファミレド」の下降音階で盛り上がるチャイコの音楽は、マーシャが夢から覚める頃には「ドシシ♭ラソファミレト」と一音増えているんですよね。一夜でちょこっと大人になったマーシャの描写ですかね。チャイコ侮りがたし。
【キャスト】
マーシャ:金子仁美
くるみ割り王子:池本祥真
ドロッセルマイヤー:安村圭太
ピエロ:伊藤健太朗
コロンビーヌ:中沢恵理子
ウッデンドール:岡崎隼也
マーシャの父:中嶋智哉
マーシャの母:榊優美枝
弟のフリッツ:安西くるみ
ねずみの王様:山田眞央
スペイン:伝田陽美、宮川新大
アラビア:長谷川琴音、樋口祐輝
中国:涌田美紀、井福俊太郎
ロシア:加古貴也、山下湧吾
フランス:足立真里亜、安西くるみ、大塚卓
【スタッフ】
指揮:フィリップ・エリス
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
協力:東京バレエ学校
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
振付:マリウス・プティパ
改定演出/振付:斎藤友佳理
装置:アンドレイ・ボイテンコ
装置・衣装コンセプト:ニコライ・フョードロフ