東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第365回定期演奏会『トスカ』オペラシティ | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 アリアの後の拍手はご遠慮ください、という趣旨のご挨拶で始まったこの公演。通常、オケピの中から柔らかく響くオーケストラの音が今日は非常にストレート。お隣りの新国立劇場公演だと舞台裏で演奏されるバンダも、扉を開け放した舞台袖で演奏されました。プッチーニ作品はヴェルディ作品と違って台本がしっかりしているのが特徴で、『トスカ』も芝居として大変良く出来ているのですが、オペラ上演として観ている時は、舞台転換だったり、スペクタクルな人員配置だったり、時には芝居だったりに意識が向かってしまい、意外と雑に聴いていたんだなと反省。今回の主役はオーケストラとあって(あ、独断と偏見です)、いつもの公演だと聞き落としてしまうフレーズが聞こえてきたり、パーカッションの活躍ぶり、木管パートの歌心など、非情に興味深く楽しい公演でした。何よりも、コンサートホールならではの生オルガンでの演奏! オペラが上演できてオルガンが設置されているホールというと、NHKホール位しか思い浮かびませんが(新宿文化センターもオルガンが設置されていますが、最近はオペラ公演なくなりましたね)舞台センターのオルガンが鳴り響く豪華さは最高! そして、演出家による劇的効果がないと、指揮者が好きに演奏できるようで、聴きなれた『トスカ』とは違う「間」があってこれまた楽しい!

 

 2000人前後のキャパが多いクラシックのコンサート会場ですが、オペラシティ コンサートホールは約1600席と一回り小さいホール。日本人演奏家にはこれ位の大きさだと無理なく歌える印象を受けました。とはいえ、それはオーケストラも鳴りまくるので、場面によっては歌手の声をかき消してしまうほど。正直、シャルローネもスポレッタも「出遅れ? あ、歌ってたの?」弱弱しさ。ま、スカルピアの腰ぎんちゃくだから弱弱しくても違和感なし。そんなオケと果敢に張り合っていたのがカヴァラドッシとスカルピアのお二人。通常のオペラ公演の広い舞台だとそんなに声量豊かな歌手という印象を受けてなかったのですが、ホールとの相性が抜群で絶唱ぶりが過不足なくてピッタリ。革命家とその前に立ち誇る悪役ですもの、絶唱の挙句散ってくれてこそカタルシスってもんです。理性よりも感情が先に立つ男たちが絶品でした。カヴァラドッシvsスカルピアの対決が際立つと盛り上がりますね。そして、紅一点のトスカ! 今回は男たちのドラマにフォーカスされているので、タイトルに反して脇役ポジション。カーテンコールでもラストの登場ではないんですが、存在の艶やかさと華やかさで魅了。私はトスカよりも、カヴァラドッシよりも、スカルピア推しなので大満足。

 

 

曲目
プッチーニ:歌劇「トスカ」(演奏会形式)

 

出演

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

指揮:高関 健(常任指揮者)


トスカ:木下 美穂子
カヴァラドッシ:小原 啓楼
スカルピア:上江 隼人
アンジェロッティ:妻屋 秀和
堂守:晴 雅彦
シャルローネ&看守:大塚 博章
スポレッタ:高柳 圭


合唱:東京シティ・フィル・コーア
(合唱指揮:藤丸崇浩)
児童合唱:江東少年少女合唱団