しばし休止されていた一幕見席が今年の六月公演から復活、さらに前日に座席指定で予約もできるようになったとのこと。暑い中、買えるかどうかわからないチケットのために長時間並ぶ必要がなくなりました。そして「ちょっと時間が空いたから歌舞伎でも観るか」な生活が戻ってきました! それにしても、歌舞伎座が新開場してもう10年になるんですね。ノンビリした緞帳の解説、拍子木の抜けの良い音、客席がザワザワしている中急速に開く幕など、久しぶりの四階席はワクワクの連続でした。狭くて膝が前の座席にあたって痛い座席すら愛おしい♪
夏の歌舞伎座は涼やかな作品が多いのですが、今回は『裸道中』ということで衣装が涼やか(というか脱ぎまくり)。とはいえ、歌舞伎俳優が脱いだところで喜ぶ人がいるかどうかは疑問w 華やかな衣装や踊りが登場しない「ザ・お芝居」でしたが、何組もお見受けした海外からのお客様、楽しめたかしらん?
賭博から足を洗えず、女房の着物すら質に入れてしまい、もはやこれ以上の貧乏なしの状態の勝五郎宅にかつてお世話になった清水の次郎長が突然の訪問。座布団がない→近所で法事があったので貸してしまいました、布団がない→絹の布団が2組あったのにこちらも貸してしまいました、お茶がない→近くのお店から無理矢理借りて(というか強奪して?)くる、酒がない→近所でノコギリなどの工具を借りてそのまま質に入れるなどなど、勝五郎の見栄っ張りぶりと、それに翻弄される女房みき、それらをすべてお見通しの清水の次郎長のやりとりが面白いんですが、挙句の果てに清水の次郎長ご一行の着物すら質にいれて博打でお金をこしらえようとするものの、そんなに話がうまくいくわけなく、みんな下着姿になってしまうというコメディ。
勝五郎とみきは夫婦喧嘩が絶えないのですが、それでも勝五郎に文句を言う輩がいようものなら「あたしの亭主に何てことを!」と食って掛かるみきの変わり身、ついに次郎長一行の着物まで没収されてしまった勝五郎が「死んでお詫びを」と反省した時「私を売ってください」と夫婦愛を訴えるみき、果てには最後のばくちとして「(勝五郎)丁と出たらばくちから足を洗う」「(みき)じゃああたしは丁にかけるよ」「(勝五郎)丁だ!←サイコロなんて振ってないんです」「(みき)うれし~~~い」で幕。なんだかんだでこの夫婦に当てられっぱなしの1時間でした。世代交代が急速に進んでいる歌舞伎界、獅童も七之助もすっかりベテラン枠。油がのっている役者による芝居は気持ちが良いものですね。そして、大笑いさせておいて、最後は人情に訴えるお芝居に涙したのでした。
歌舞伎座新開場十周年 八月納涼歌舞伎
次郎長外伝 裸道中
博徒緒川の勝五郎:獅童
勝五郎女房みき:七之助
大政:男女蔵
小政:橋之助
法印大五郎:虎之介
保下田の久六:吉之丞
豚松:市村光
次郎長女房お蝶:高麗蔵
清水の次郎長:彌十郎