【CINEMA】マシュー・ボーン IN CINEMA 赤い靴@ル・シネマ | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 2020/6/17(水)〜6/28(日)に予定されていた来日公演が中止となりガッカリしていたのですが、このたび、映画館でロンドンの舞台が見られることになりました。ありがたいことです。舞台中継を観るたびに思うのは「NHKって凄いな」ってこと。オンデマンドで海外のオペラやバレエ、ミュージカルが身近で見られるようになったけれど、画質が全然違うし、画面の切り替えもストレスフリー! 動いてもぶれないし、色もキレイ。これは、国内の舞台中継を観ている時にも言えることで、スカイステージやwowowなどでも収録していたりするけれど、NHKで同じ作品を中継するとその違いにビックリします。

 

 さて、マシュー・ボーン版の『赤い靴』ですが、アンデルセンの童話よりもバレエ映画の『赤い靴』に準じていて、バレエ・リュスのセルゲイ・ディアギレフらしき人物(=ボリス・レルモントフ)が主役。ディアギレフというと、ニジンスキーとの虹色な関係が有名ですが、こちらはプリマドンナのヴィクトリア・ペイジと、新進作曲家のジュリアン・クラスターとの三角関係がメインストーリー。プリマに芸に生きることを求めるボリスと、プリマに愛に生きることを求めるジュリアン。才能はあるんだけれど「歌に生き、恋に生き」には至らないヴィクトリアは「踊りを取るか、恋を取るか」で悩みます。が、舞台人あるあるで、一度主役を務めたプリマは、引退してもやっぱり舞台に立ちたくなっちゃうということで、スッパリ引退ってわけにいかないのが難しいところ。これは、今を生きるOLさんにもありますよね。仕事が楽しくて結婚してもフルタイムでバリバリの人もいれば、子供優先で時短で働く人。この作品、バレエを仕事に置き換えるといろんなことを考えさせられます。

 

 で、マシュー・ボーンの振付ですが「最高傑作」という宣伝文句にはちと疑問。個人的には『白鳥の湖』のような衝撃や「リピートしなくちゃ」というような感動をえられませんでした。ウェスト・エンドの中劇場のプロダクションなので、バレエを踊るには舞台が狭くて、10人も登場すると身動きが取れない状態。こんな中で伸び伸び踊るのは至難の業。面白かったのは、プロセニアムアーチ(緞帳回りの枠ね)が天井からぶら下げられていて、舞台展開に合わせてグルグル回ること。バレエの公演の舞台を観ていたハズが、一瞬にして舞台裏に転換されるのが何とも鮮やか。大劇場だと1分近くかかる手法なので、ステージの狭さを逆手にとったベテランの技! ただ、三角関係のストーリーなので観ていて迷子になることはないけれど、ストーリーを追うのに忙しくて、ダンスとして楽しいか?と問われると複雑な気持ちに。

 

 マシュー・ボーンの好みなのか、女性ダンサーはロシアン・バレエで良しとされる「立ってるだけで美しいスタイル」のではなく、ウェスト・エンドの女優にありがちな、ちょっとぽっちゃりして可愛らしさが勝るタイプ。男性ダンサーは長身で手足が長くて、コートを羽織るのが抜群に似合う人たち。ゆえに、「プリマ役は日本人でも踊れるだろうけれど、男性役は日本人には太刀打ちできないな」という印象を受けました。肘から先が、膝から下が長いんですよ。こんなにスタイルが良いと、衣装の着こなしだけで魅せるだから、悔しいの一言。西洋人は抜群に似合うんですよね。そしてもう一つが、女性ダンサーも男性ダンサーも表情が豊かなこと。時にダンスよりも顔芸が目立ってしまう位、場面ごとに変化を見せるんですわ。何とも小憎らしい(/・ω・)/ ただ、映画館サイズにアップになると、非NHKの画質の悪さでも目立ってしまう肌の汚さ。こればかりはアジア人が有利。あ、だから欧米のテレビ局は画質UPに積極的じゃないのかも!?(独断と偏見です)

 

マシュー・ボーン IN CINEMA 赤い靴  The Red Shoes   97分

【スタッフ】
演出・振付:マシュー・ボーン
舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン
照明:ポール・コンスタンブル
音響:ポール・グルーサス
音楽:バーナード・ハーマン
原作:映画『赤い靴』(監督:マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー)および、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる同名童話

【キャスト】
ボリス・レルモントフ(バレエ団プロデューサー):アダム・クーパー
ヴィクトリア・ペイジ(新星バレリーナ):アシュリー・ショー
ジュリアン・クラスター(苦悩の若き作曲家):ドミニク・ノース
イリナ・ボロンスカヤ(プリマドンナ):ミケラ・メアッツァ
イヴァン・ボレスラウスキー(プリンシパル):リアム・ムーア
グリシャ・リュボフ(バレエマスター):グレン・グラハム

https://mb-redshoes.com/

 

 

 

 

以下、公演中止となった来日公演のチラシ