【イベント】ひらけ、アーティゾン美術館 | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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「美術館自体が美術品!」という感想、ヨーロッパの美術館を訪れるたびに抱く感想ですが、東京の最新の美術館を愛でる会が開催されました。このたび、ブリジストン美術館がアーティゾン美術館と名前を変え、来年の開館に向け、展示室はまだ何もない空っぽの状態ですが、休むことなく24時間、空調をかけ続けながら、静かに環境を整えています。竣工は2019年7月ですが、美術品展示OKとなるまでには数か月かけた清掃作業、しばしの寝かせ期間が必要なんだそうです。かつては2年間を要したこの作業、今は各種技術を駆使してここまで短縮できたんだとか。ちなみに、音楽ホールでは「良い音響のため」と持てはやされる木材も、美術館においては「アンモニアが出るから」ご法度とのこと。

  

なお、学芸員さんが「略称はゾンビです」と自虐ネタで笑わせてくれた新名称、アーティゾン美術館ですが、ART+HORIZONの造語だそうです。「なれるのに時間がかかるかもしれません」と表示されていました。ブリジストン美術館という名前に慣れていたので、新しい横文字はなかなか難しく感じます。でもまあ、日比谷の芸術座も今はシアタークリエとして親しまれているので、慣れかもしれませんね。

 

 

美術館のエントランスは3階になります。途中、2階にはまだ商品が搬入されてないミュージアムショップがありました。こんな状態が覗けるのは開館前の今限定! 貴重な体験です。ロッカーもこのフロアにあるようですね。

 

  

3階に上ると左手にレクチャールーム、右手にクロークを備えたレセプションが出迎えてくれます。今回の館内ツアーはまずレクチャールームに集合、3グループに分かれて案内されます。

 

 

レセプションはクロークも兼ねています。なお、アーティゾン美術館は事前予約制が導入され、日時指定のチケット購入が必要です。定員に達しない場合のみ当日券が発売されるそうですが、「新幹線待ちの時間を利用してちょっと覗いてみようかな」というような利用は出来なくなります。フラリと立ち寄りにくくはなりますが、入場待ちの大行列はオフィス街では迷惑ですものね。そういえば、先日のCHANELの展覧会も日時指定の予約が必要でした。映画館のように、美術館もこのようなスタイルが主流になるのかどうか気になるところです。

 

 

エレベーターで6階に上ってから降りるように鑑賞するスタイルです。不要な荷物はクローク↑に預けて身軽になるのが良さそうです。というのも、空港の出国ゲートのようなゲートを通り抜けての入館になり、金属など怪しい反応があった場合は待機しているスタッフの方に声をかけられることになります。ゲートの先に小さなモニターがあるのがわかりますか? 

 

 

ブリジストン美術館は天井高が2.7m、場所によっては2.4mと一般住宅クラスだったので大型作品の展示ができませんでしたが、アーティゾン美術館の6階の天井高は4.2m。吊りもの展示も見越して、天井設備も凝っています。

 

 

空調は染み出し型を採用。フローリングの合間に数ミリの隙間があり、そこから空気が上に空気が昇ってきます。この隙間から物が落ちないよう下には網が貼られていましたが(地下鉄のエスカレーターから切符を落としたことがあります)、埃は溜まりますよね。掃除はどうするんでしょうか???

  

 

温度は22度、湿度は55%にコンピューター制御。湿度や温度が変化に伴う伸び縮みが続くと絵具割れや剥離など美術作品の劣化が早まるんだそうです。

 

  

開館前とあって、設備のテストも行われていました。観客が作品に近づきすぎないためのバー、左写真は太目、右写真は細めです。採用になったのは右手のバー。

 

 

  

5階展示室は天井からの吊りは想定してないそうで、6階とは設備が異なります。また、床の色味もダークな6階に比較するとライトな仕上がりです。

    

イヤホンガイドは廃止され、観客は無料で専用アプリを利用することができます。館内にはWi-Fiが張り巡らされ、GPSによってストレスなくお目当ての作品の解説がみられるそうです。これも、先日のCHANELで体験したシステムですね。この場合、ヘッドフォンの持参が必須となります。忘れた場合は・・・館内で販売があるそうです。 

 

館内照明は照度だけでなく、色味も調整でき、作品に合わせて調整されるそうです。そういえば、美術展によって照明って異なりますよね。今まで意識していませんでした。

 

5階展示室は中央に大きな吹き抜けが! 4階と5階は吹き抜けになっている空間があります。下のフロアが見下ろせるだけでなく、吹き抜けの対岸も見渡せるのが面白い設計です。

 

 

5階と4階にはビューデッキが設置されています。幅の狭い廊下のような空間ですが、大きな窓に面しているので気持ち良く休憩ができそうです。三菱一号館美術館や国立新美術館にもこのようなものがありますが、鑑賞の合間にこのようなスペースで休憩できると嬉しいですね。

 

改築後の建物にはブリジストンの本社は戻ってこず、1階から6階が美術館、上層階はオフィスとして貸し出すそうです。そして、お隣の戸田建設(アーティゾン美術館を建てたのもこの会社!)も間もなく取り壊され、京橋に新しい美術ゾーンが出現する予定とのこと。ビューデッキからの風景も楽しみです。

  

 

 

ベンチには充電用のコンセントも設置されています。鑑賞途中でスマホの電池残量が乏しくなっても安心です。

 

  

フロア移動の際のロビーにはチームラボによるスクリーンが。これは巨大なスマホみたいなシステムでタッチした作品が拡大表示されたり、作品を検索したりすることができる凄モノ。子供たちが喜んで遊んでましたが、大人だって楽しい!

  

 

  

ロビーの一部がベニヤ板だったので何かと思いきや、彫像の設置予定スペースとのこと。いったん、床をふさいだ状態で引き渡されるんですね。てっきり穴があいた状態でだと思っていました。

 

 

4階には古美術展示室も。この部屋は15mもの巨大ガラスが導入されています。写真だと腰上にみえるかもしれませんが足元から天井までがガラス張りです。このサイズのガラスは竣工後は搬入できないため、工事初期に持ち込まれ、つい最近まで保管されていたそうです。

 

ガラス対面の壁が黒いこと、明るい部屋から位部屋への移動なこと、なによりもガラスに汚れ一つないので正面衝突する人がいるのではないかと心配。

 

 

5階・6階は広いスペースを展示に合わせて自由に壁を立て込むタイプですが、4階は既にいくつかの常設部屋に分かれています。古美術展示室の他には吹き抜けの空間も。5階から見下ろしていた吹き抜け空間は下から見上げるとこんな感じ。

 

 

足元には展示台のサイコロや足台がまだ置かれていて、開館準備中って感じ。どこで使われるんでしょうね。

 

  

4階で使用予定の展示ケースはイタリア・ゴピオン社製。大英博物館でミイラが飾られているやつみたい。高さが調整できるだけでなく、ケース横には磁石で照明が立てられていて、簡単に移動できる優れもの。

 

とはいえ、イタリア製・・・導入にあたって「メンテナンスは大丈夫か?」との声があったそうですが、まるでアーティゾン美術館の開館に合わせたかのうよう、今年1月に日本に拠点ができ、稟議が通ったんだとか。

 

 
    

最後の部屋はカーペットが敷かれ、他展示室に比べて天井が低い空間です。ブリジストン美術館のオマージュが感じられます。

   

    

展示室を通り抜けるとライブラリーが登場。小さい部屋ですが吹き抜けが印象的です。天井に向かってそびえる書棚は上段になるに従い感覚が狭く設計されているのでより高さが強調されます。

   

  

   

棚には現在ダミーでポスターが飾られていますが、将来的には作品目録などが設置されるそうです。椅子はカリモクのもので、軽くて優しく体を包み込んでくれます。ごろっとできるソファもあって、こんな書斎欲しいです!

    

  

    

最後はブリジストンの創業者・石橋正二郎氏の胸像に見送られます。ブリヂストン美術館の作品たちは、ブリヂストンが会社として購入したものではなく、石橋氏の個人コレクションでスタートしたそうです。最近、都内の美術館では個人コレクションの展覧会がいくつも開催されていますが、身近にすごいコレクションをお持ちの方がいらしたとは!

   

    

16.5mの吹き抜け。京橋のビルでこのような贅沢な空間作りは貴重です!

   

   

エスカレーターとクロークの間に設置されているモニュメント。立体的なので見る角度によって印象が異なります。

   

     

工事期間中は、オランジュリー美術館や北海道、久留米、広島などの美術館でコレクションを発表していた他、31点も新しいコレクションを購入していたというアーティゾン美術館。開館記念の展覧会は所蔵コレクション展です。ブリジストン美術館時代ではありえなかった206点もの展示が予定されているそうです。

   

開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」
1月18日(土) 〜 3月31日(火)
  
ヴァシリー・カンディンスキー《自らが輝く》1924年
石橋財団アーティゾン美術館蔵

    

    

今回は見学できませんでしたが、1階のミュージアムカフェは壁面がガラス製。気候が良ければ90度回転させてオープンエリアに変換可能とのことですが、お隣の戸田建設の建て替えが終わるまでお預けになりそうです。定期的に通いたい美術館がまた一つ増えました。

 

公式WEBサイト

https://www.artizon.museum/