藝大オペラ『モーツァルト:魔笛』@東京芸術大学奏楽堂 | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 今日は辛口です。「芸大といえども稽古不足だとこうなるのか」な残念な公演でした。

 

 ソリストの粒が揃ってないのは仕方ないとして、重唱は声のボリュームがバランス悪いし、会話部分はテンポがかみ合わない&そもそも恐ろしい程の棒読み(それもスロー再生状態)で、言語指導どころか日本語指導が必要でしょうよ、とゲンナリ。稽古期間がどれだけあったか知りませんが、客席からも準備不足がアリアリでイライラ。高関健先生の指揮はスピーディでサクサク進むのに、台詞になるととたんに間延び。流れをブチキル進行に辟易。一曲一曲だとテンポとか流れとかフレージングを気にするのに、作品全体だと無視ですかいっ! おまけに暗転&時間のかかる転換の連続。そりゃ、藝大の奏楽堂は劇場ではなく、あくまで「コンサートホールだけどオケピと幕はありますよ」な施設(演出家泣かせ)なので本格的なプロダクションは期待していなかったけれど、まさか発表会のように、袖から登場して芝居せずに歌って袖にはけるの繰り返しだとは! 何もない空間だけど、客席から「背景が見える!」「装置を感じる!」と見えるように演じるのは学生オペラだと力量不足できついですね。同じ学生オペラでも、昨日の昭和音大はきっちり準備して歌も仕上げていて、なんだか「芸大ブランド」にあぐらをかいて馬鹿にされているんじゃないかと思った次第。でも、失敗あってこその成功。次回公演に期待してます。

 

 さすが芸大!と思ったのはオケとコーラス。長丁場だけど、弦楽器がなめらかだったし管楽器も伸びやか、コーラスも揃っていてとっても美しかった! そして、自信のなさか、それとも緊張のあまりか、能面のように表情が強張りまくりのソリストたちの中で、童子トリオは登場した時から愛嬌を振りまき、他ソリストが歌っている時も棒立ちにならずに、さりとてソロを邪魔することなくちゃんと作品に参加していて、素晴らしい三人組。一人じゃない強みと、三人でいることを活かした小芝居。パパゲーノの田中夕也さんは台詞が流れてしまうのと芝居が空回り調が気になったけれど、それでも果敢に芝居で攻める姿勢がだんだん心地よくなってきて、「場数をこなせば素敵な歌役者になれる!」と応援気分に。一人だけ、唇型にへそ回りのおなかを露出しているというオペラ歌手体系にはつらい衣装だったけれど、体操のお兄さん的な爽やかさでエロくならずにクリア。パパゲーナの髙橋 慶さんも歌に芝居に大活躍。この二人の「パ・パ・パ」が全公演を通してのハイライトだったと思います。ここだけちゃんと歌と芝居と客席アピールがバッチリで、総合芸術してました。モーツァルトも喜んでいたことでしょう。

 

 ちなみに、前回プロダクション(実に20年ぶりの『魔笛』だったんですね)ではウルトラ怪獣がパパゲーノを取り囲んだ場面、今回はパンダの着ぐるみが登場。お隣りの上野動物園から借りてきたんでしょうか!?

 

【スタッフ】
指揮:高関 健
演出:直井 研二
美術:鈴木 俊朗
照明:大平 智己
衣裳:西原 梨恵
振付:高野 知美
音響:岩崎 真
舞台監督:穗積 千寿 
演出助手:小野寺 東子 
副指揮・合唱指揮:宮松 重紀
副指揮:小﨑 雅弘
コーチ:田中 梢、大藤 玲子、山口 佳代
コレペティートル・原語指導:三ツ石 潤司
特別原語指導:H. クフィル

【キャスト】
ザラストロ:狩野 賢一
夜の女王:愛宕 結衣
タミーノ:須澤 尊臣
パミーナ:渡辺 智美
弁者(僧侶1):渥美 史生
パパゲーノ:田中 夕也
パパゲーナ:髙橋 慶
侍女1:田井 友香
侍女2:石田 滉
侍女3:中島 郁子
モノスタトス:糸賀 修平
童子1:髙階 ちひろ
童子2:佐々木 美歌
童子3:松平 幸
僧侶2:児玉 和弘
武士1:児玉 和弘
武士2:小池 優介

管弦楽:藝大フィルハーモニア管弦楽団
合唱:東京藝術大学音楽学部声楽科3年生