【コンサート】田代万里生ミニ・コンサート@銀座山野楽器 本店7FイベントスペースJamSpot | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 6月16日から赤坂ACTシアターで日本初演が開幕するミュージカル「サンセット大通り」。劇団四季での上演がかなり前に発表されていたものの、主演予定だった志村幸美の病死に伴い上演自体が取りやめ。今回、初演から約20年を経てようやく日本初演となります。

 今宵はジョー役で出演する田代万里生のミニ・コンサート~『サンセット大通り』~。稽古中だけど、役者は大変ですね。ミニ・コンサートというよりトークショー的な50分(20分オーバーだそうで、披露されたナンバーは
 ♪Sunset Boulevard
 ♪Too Mucu in Love to Care (ソロ版)
の二曲のみ。ほんとミニ。でも、見どころを一生懸命説明し、上手に盛り上げてくれた楽しい時間でした。田代万里生っていつもニコニコ&ゴキゲンな感じの人ですね。好感度大です。

 実は日本語版で「サンセット大通り」のナンバーを聴くのは初めてなんですが(「With One Look」はコンサートなどの別翻訳版であります)、一つの音一つの単語が入れられる(例外もあるけど)英語と違って、いつくかの音でようやく一つの単語となる日本語だと、どうしても音が繋がり、ビート感が失せてしまうんだなぁというのが第一印象。おそらく、オケ版もビートをソフトにした編曲になると思われます。そして、最近ではこれを禁じ手とするプロダクションも多いけれど、今回は一つの音にいくつも言葉を当てはめる「早口言葉処理」で歌詞を詰め込んだ、ストーリー性重視な処理。音だけう受けるイメージは原曲とかなり異なってます。イタリアオペラをイングリッシュ・ナショナル・オペラの英語版で観た時のような不思議な感覚。

 田代万里生は広い音域にわたってむらなく安定して音を出せる貴重なミュージカル歌手なんですが、それでも歌詞大渋滞なナンバーはかなり歌いづらそう。役者って芝居では年齢を自在に行き来することができますが、声だけは年齢を誤魔化すって難しく、若者は若い声とテクニック、年齢を重ねるに従って声質も歌いまわしも変わってきます。そんなわけで、ミュージカルという世界は演劇の中でも特殊な作業が必要になるんですが、役者の実年齢と役の年齢は必ずしも一致しないけれど(「放浪記」の森光子や、「李香蘭」の野村玲子しかり)、今回は上下はともかく各役10~15歳位年齢のサバを読んでいるので、実際の舞台でどこまでメイクするか、どこまで化けられるのか、はたまた、開き直ってしまうのか、あれこれ気になっているところです。

 とりあえず、主役のノーマ・デズモンドに関しては年齢設定をいじっているようです。演じるのが宝塚ファン以外にはほぼ無名(そして芸風も君臨型とは異なる)安蘭けいなので致し方ありません。今回のホリプロ版が発表されるまで「麻実れい大本命、もしかしたら朝丘ルリ子、キャラクターは違うけれど本人のやりたがり具合と知名度で鳳蘭」あたりで日本版は上演されると思ってました、私。鈴木裕美演出では「今やほとんどの人に忘れ去られた老女にして伝説の大女優」ではなく「山口百恵のように若いころ売れたけれど、さっさと引退した50歳位の女優」に設定しているとのこと。アイドルとか宝塚のように若手の頃売れた人なのか(紫苑ゆうが女優としてデビューのイメージ)大女優として時代を築いた人(伝説の大女優、原節子がカムバックのイメージ)なのか、どのように登場するのか気になります。

 ちなみに、ノーマ役の安蘭けいは現在41歳、ロンドン版初演時のパティ・ルポンは44才、ロス版初演時のグレン・クローズは47才。意外と若い時に演じているんですが、かの地の女優さんたちの老けっぷりとふてぶてしさはどこからくるんでしょうね。てっきりみなさん50代だとばっかり思ってました。

 蛇足ながら、28歳の田代万里生が演じるジョーよりも若い設定の新進脚本部員(今回のトークショーの説明によると22歳位の設定)ベティ役の彩吹真央は38歳。今日はソロ版だったのでわかりませんが、声質といい見た目といい、実年齢より上に見える女優と、実年齢より若くみえる男優のカップル、本番の「Too Mucu in Love to Care」では、ジョーがベティのつばめに見えたりしませんように!

 そして、同世代にして宝塚で同時期に活躍した安蘭けいと彩吹真央とう二人に親子以上に離れた役で共演させるあたり、キャラクター重視ではなく、色々と大人の事情があるんだろうな、と感じさせられるキャスティング。ノーマの一人目の夫にして現在は執事のマックスを演じる鈴木綜馬は51歳。役者と役年齢は違ってもどうってことないんですが、宝塚並に役者の年齢幅が狭いカンパニーです。

 と、ほんの短いミニ・コンサートながら、本公演に向けて、ちょっと歪んだ状況、それをあれこれ矯正しようとしている状況が垣間見えるひと時。初日まであと一カ月弱。現場はさぞてんやわんやだと思いますが。とりあえず、若々しく、軽やかなカンパニーによる「サンセット大通り」、日本版に頭をシフトして、本公演を楽しみたいと思ってます。