※作品評価は

◎=おもしろい ○=ふつう △=う~む ×=よくない 珍=珍作

 

6月前半のNHKは15本。曜日の並びもあってか、けっこうな本数になりました。

民放編がホークスに関する内容で終わったので、NHK編はそれを引き継いでホークスに関する作品から笑

 

70~80年代パ・リーグファンであれば目が離せなかったであろうETV特集『ある野球人の死 “不惑の大砲”門田博光』。予想通り、ライターの谷上史朗氏による生前の門田への長期にわたる聞き取りがかなりベースになっている。

 

 

そこに藤原満、藤本博史、松浦正、定岡智秋、山田久志、山下和彦、田淵幸一ら往時のパ・リーグ関係者、番記者、同窓生、間寛平、大谷昭宏らへのインタビューを重ねていくことで、門田博光とは何者だったのかを浮かび上がらせていく。タイトル文字が80年代風なのがまた泣かせる演出で…

 

門田を映すにはとても60分では足りないし、結局はホークスの福岡移転は長い目で見ればパ・リーグの活性化につながったわけだが、進むほどに切なくなるはなぜなのか…。もし村田兆治、野村克也、水島新司が存命だったら何を語ってくれただろう。じき村田兆治版も出るのだろうか。

 

同じくETV特集からは『あなたの隣人になりたい ~“難民”の人々と歩む~』も良作でした。さすがのテムジン。

 

 

東京・中野で難民申請者への食糧支援などを行うつくろい東京ファンドの活動、スリランカ出身者、アフリカの某国出身で内戦により夫を殺された女性ら仮放免中の難民申請者に密着しながら、昨年6月に改正された今月施行された入管法による影響と申請者の現状を映し出す。

 

偶然にも同じ日の夕方には“報道特集”でクルド人仮放免者に関する特集を行っていたが、現在のシステムがいかに支離滅裂か…しか感じられない。

 

中間マージンが発生する“実習生”(とまだ呼ばせてもらう)はどんどん受け入れ、それによって増え続ける“失踪者”には全く責任を持たないのに、本当に紛争に巻き込まれていたり、日本語もできて労働意欲がある人たちは拒絶するという矛盾…

 

数多いALS患者ドキュメントの中でもちょっと視点が違って興味深かったのは“ハートネットTV”の『あなたとつながりたい ~ALS ある家族の記録~』

 

 

驚いたのは、ALS患者のコミュニケーションツールの発達具合。かなり進行した患者でも、脳波を読み取って音声言語化したり、ロボットアームを動かしたりする機能がほぼ実用化されていたとは。それで講演会もできるという…

 

患者家族のファミリーストーリーの面も残しつつ、技術に関する内容が際立っているのがなかなか新鮮でした。しかし、それらの技術がこれから悪用されなければいいけど。

 

ここ最近、性暴力・性犯罪への関心が高まる中で出てきたNHKスペシャル『子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇』は、ネット上で女児に接近する男性たちの行動パターン、受刑者の生々しい手紙や声などを紹介し、子どもへの性的搾取の実態を映した前編が良かった。

 

 

しかし、大河ドラマで『光る君』をやっているタイミングでこれというのも何とも皮肉な…

 

ちょうど5年前に放送され、物議を醸して(理由は公表されていないものの)再放送が突然中止になり、結局お蔵入りとなったETV特集『性犯罪をやめたい』のことを踏まえてか、被害者・加害者両方の視点から子どもへの性加害を俯瞰できるよう、構成にかなり気を使っていたように思えました。

 

地方局作品では、福岡局からふたつ。“小さな旅”『初夏 輝きつないで』は田川市でも伊田地区がメインで、川渡り神幸祭を軸に、伊田地区の現代や今を生きる人々に思いをはせられる良作でした。惣菜屋“月うさぎ”に行きたくてたまらない…

 

 

タイトルだけで視聴意欲がわく『私がマルチ商法に勧誘されて』は、若いディレクター自身が先輩からマルチ勧誘を受けたことをベースに、専門家や業界団体へのインタビューなどを積み重ねることで、マルチ商法の現在と問題点を整理・俯瞰していく。

 

 

尺に対してインタビュー相手がかなり多いため、中盤は情報がやや渋滞を起こすものの、最後にはその先輩まで登場するなど、こちらも考えを巡らせながら目を離さず見ることができました。

 

こういう自身の体験を基にした作品は、雑に扱いさえしなければ実感がこちらにも伝わってくるのでやっぱり強い

 

 

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