【TVドキュメンタリー時評 2024年1月前半・NHK編】
※作品評価は◎=おもしろい ○=ふつう △=う~む ×=よくない 珍=珍作1月前半のNHKは9本。正直、いまいちパッとしない期間でした。年明け最初に出た、復元師”こと繭山浩二・悠親子の仕事に密着した『ゴッドハンド』や、京都市立芸術大学の学生と京都市・崇仁地区の人々の交流を映した“Dearにっぽん”『“差別の壁”を越えて』も悪くはなかったけど、似たようなジャンル・テーマの過去作品と比べるとどうしても物足りなく…。役不足ならぬ尺不足の感が。流転の秘宝を復元せよ - ゴッドハンドバラバラに割れた皿も元通り。どんな傷もなかったことにする復元師がいる。長らく、表に出てこなかった技。時価数十億という清朝の花瓶と李朝白磁の修復撮影が許可されたwww.nhk.jp「“差別の壁”を越えて〜京都・崇仁地区〜」 - 「Dear にっぽん」去年10月、京都市立芸術大学が被差別部落として複雑な歴史を抱える崇仁地区に移転。地域と向き合うことになった芸大生はここで何を学び、どのようなものを生み出すのか。 崇仁地区に移転した大学の新たな方針は、土地の歴史や文化とつながり芸術を生み出すこと。この地域で長年続いてきた「皮革業」に関心を持った芸大生は、革を使って作品づくりに取り組む。しかし、住民との交流を…www.nhk.jp台湾総統選と中国の関係、北朝鮮の軍事技術がメインで、実質的に“こちら側”の安全保障がテーマになるNHKスペシャル2本『“巨龍”中国が迫る』と『北朝鮮 極秘ミサイル開発』も一見新しい情報を出しているようで、でも結局は予定調和で特に感じることもなく…“巨龍”中国が迫る 〜台湾総統選・市民たちの選択〜 - NHKスペシャル1月13日に行われる台湾総統選を前に、台湾統一の意欲を露にする“巨龍”中国が揺さぶりをかけている。この8年政権を担ってきた蔡英文総統は、対峙する姿勢を貫き、中国との緊張が高まっている。野党・国民党は中国との関係改善を掲げて政権奪還を目指す。二大政党に不満を持つ若者たちを中心に第3極も存在感を示す。様々な立場の市民に密着し、台湾だけでなく東アジアの今後も大きく…www.nhk.jp調査報道・新世紀 File2 北朝鮮 極秘ミサイル開発 - NHKスペシャルNHKスペシャルの新シリーズ、第2回のテーマは、軍事偵察衛星の打ち上げ成功を発表するなどミサイル技術を急速に進化させる北朝鮮の軍事力について。いま世界中の研究者や一般市民が、衛星画像やSNSなどの公開情報を使った調査で、その知られざる実態に迫ろうと取り組んでいる。迎撃困難といわれる「極超音速ミサイル」の実験は本当に成功したのか?軍事国家・北朝鮮のリアルな姿を…www.nhk.jp割と良かったのは、能登半島地震後の様子も含めて、北陸沿岸の漁師の人たち全体に思いを馳せることができるラストが印象的だった“小さな旅”『冬 ともに生きる』。「冬 ともに生きる ~福井県 越前海岸~」 - 小さな旅日本海に沿って断崖が70キロにわたって続く福井県の越前海岸、冬には冷たい風が吹きつける。しかしこの季節ならではの恵みも。代表格は全国にその名を知られる「越前がに」。冬の間、越前町ではカニをゆでる湯気があちこちで立ち上り、漁港は活気にあふれる。福井市の居倉町には、寒風に耐えて海沿いの崖の上に咲く「越前水仙」。厳しさの中にある恵みを分かち合い、支え合いながら厳し…www.nhk.jp広島出身の大学生で、核廃絶を訴える活動を続けている高垣慶太さんの活動と葛藤、韓国出身の留学生との対話・交流を追った“Dearにっぽん”の『“夢物語”と言われても』。出る人たち、作る人たち、両方の真面目さが見て取れる佳作。「“夢物語”と言われても〜広島・ある大学生の模索〜」 - 「Dear にっぽん」核廃絶を訴える活動に取り組む広島出身の大学生、高垣慶太さん。同級生から異なる意見をぶつけられ迷いも生じる中、アメリカの国際会議に参加した。そこでみつけたものは。 高垣慶太さんは21歳。幼い頃から核を巡る問題に関心を持っていたわけではないが、広島・長崎で被爆した2人の曾祖父の経験を知り、その記憶をつなぎたいと活動を続けてきた。しかし、国際情勢が緊迫化する中、…www.nhk.jp近年、視聴率の低下と反比例するかのように、12月から1月にかけて“ここまでやるか?”と思うほど総合の各番組に紅白歌合戦を絡ませるケースが目に付くが、極めつけだったのがNHKスペシャル『世界に響く歌 日韓POPS新時代』。世界に響く歌 日韓POPS新時代 - NHKスペシャル世界の音楽シーンで快進撃を続けるYOASOBI。「アイドル」はなぜ言葉の壁を越えてグローバルな熱狂を生み出したのか?アメリカ初ライブへの密着取材や「アイドル」の誕生秘話を通じて、J-POPの新たな潮流をひもとく。そして、いま世界を席巻する存在に躍進を遂げたK-POP 。NewJeansのプロデューサー、ミン・ヒジンの独占インタビューなど貴重な証言からアジアか…www.nhk.jp坂口健太郎がナレーションを担当したのは、映画『ハナ』などのムン・ヒョンソン監督が手掛けるOTTドラマの主演になったからなのか。“日韓POPS”と銘打っているが、実際には日本からはYOASOBI、韓国からはNewJeansなどHYBEエンターテインメント系列所属の紅白出場グループのことばかりに。確かに描いていることは間違いではないものの、ミン・ヒジンPDへのインタビューも明らかに本人が困惑しているほど質問が甘いし、ビルボードチャートを基準に“世界進出”の度合いを測定する考え方自体がもう古くなっていることに作り手は気付いていないのか…紅白歌合戦とNスペの相互補完的な企画色も強すぎて、音楽にも人にもフォーカスができないまま結局はNHKの手前味噌になり、大きな話がレベルの低い所で矮小化されているのが悲しい。例えば昨年、キリンジ(KIRINJI、堀込高樹)がニューアルバム“Steppin’ Out”で韓国のバンド、セソニョン(새소년, Se So Neon)を招聘してコラボ曲『ほのめかし』を作ったことなどは、セールスや再生回数云々では測れない重要な出来事だったのだが、そういう話は出てくる気配もなく…KIRINJI - ほのめかし feat. SE SO NEON(Official Music Video)KIRINJINew Album『Steppin’ Out』2023.9.6 ON SALE数量限定盤(3CD):SCKN-1001 ¥10,000(+tax)通常盤(CD):SCKN-0001 ¥3,500(+tax)LABEL:syncokin* 数量限定盤はsyncokin OFFICIAL STORE...www.youtube.com同じ音楽ドキュメンタリーでも、昨年の10選に入った“808 Revolution”や“わたし、推しになります”の10倍(以上)は予算がかかっているはずなのに、中身は10分の1以下というのはあまりに勿体ない。作り手自身、音楽シーンにそこまで関心がないのでは…という疑念がどうしても浮かぶ。ちなみにそのキリンジの新作“Steppin’ Out”。テレ東のドラマ『かしましめし』の主題歌『nestling』も素晴らしいし、いいアルバムでした。まさかここに来て、キリンジのアルバムを即買いすることになるとは思いませんでした。nestlingProvided to YouTube by syncokinnestling · KIRINJInestling℗ 2023 syncokinReleased on: 2023-04-11Lyricist: Takaki HorigomeComposer: Takaki HorigomeAuto-generat...www.youtube.com(ご意見・ご感想はtwitterからもどうぞ)https://twitter.com/amaguribouzu