遺産分割協議で決めたことが守られない | 司法書士事務所尼崎リーガルオフィスのブログ

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父の遺産について兄弟3人で話し合い、長男が父の自宅の土地と建物を引き継ぐ代わりに、長男は次男と三男へそれぞれ1,000万円ずつ支払うという内容で遺産分割協議書にサインをしました。



ところが、長男は不動産を相続したにも関わらず、あとの2人にお金を払っていません
このような場合、お金をもらっていない次男と三男はどうすれば良いのでしょうか?



通常、契約で約束のお金が支払われないときには、契約の解除が問題となります。
しかし、遺産分割の場合はお金が支払われなかったとしても解除はできないとされています


「お金を払って!」と求める手段はいろいろあります。
遺産分割後の親族間の紛争として家庭裁判所に調停の申立をしたり、簡易裁判所に民事の調停を申し立てることもできます。
さらに、簡易裁判所に支払督促の申立や、民事訴訟の提起も可能です。



しかし、相続問題のような親族間の紛争については、売買代金や貸金の支払い請求とは異なる要素が多くあるため、家庭裁判所で調停による解決が最も良い方法です


調停で話し合いによる解決ができれば、調停調書が作成されます。
この調停調書は法律上確定判決と同じ効力を持つので、約束どおりにしてもらえなかったときには、強制執行による取り立てが可能になります
また、強制執行の前に家庭裁判所に申し立てれば、家裁が履行勧告や履行命令を出してくれます
正当な理由なく履行命令に従わない場合は、10万円以下の過料に処せられます。
もし、家裁での調停で解決しないときには、民事訴訟によって解決することになります


また、簡易裁判所での民事調停で解決した場合には、家裁と同様に調停調書が作られ、約束通りの履行がなければ強制執行が可能になりますが、家裁のように履行勧告や履行命令をしてもらえる制度はありません
また、簡易裁判所での支払督促も、確定判決と同一の効力を持つため強制執行が可能になります。


以上のように履行がないときにはいろいろな方法がありますが、遺産分割協議のときにお金を渡してもらうなど、問題にならないようにあらかじめ対策しておくことが一番です。