紀田順一郎:著「最初の一冊」
三一書房:発行 1981年

クローバー 作者は、終戦当時10歳。「ものごごろついたときが戦中であり、それから終戦の衝撃と戦後の混乱のさなかにめぐりあった、さまざまな分野における最初の一冊」について書こうという企みである。もう少し年が上だったら子どもらしい書物に出会っていたかもしれない。確かに。大正生まれの私の母は、「コドモノクニ」という美しい絵本の思い出を今でも大事にしている。そんな作者は、自分の本との記憶をたどって1冊の本を表した。

クローバー 第1章は、「幻の画家を求めて」<教科書>。すでに国民学校となっていた時代の「カズノホン」という題の算数の教科書。「明らかに絵の格が違う。算数のほうは、子どもの描写にせよ、草花の描き方にせよ、筆致に味わいがあり、・・・」と書く。画家を捜す。しかし本書は戦争中の疎開の子どもたちの悲惨な生活にも及ぶ。そこには旧運隊のような上級生による下級生へのリンチがあり、それを指導していたのが教師だったという事実。

クローバー 第2章「うたの本」。娯楽がなかった時代、歌はだれにも平等だったが。作者は分析する。閉ざされた心情を歌っているに過ぎない歌は「原則として新しい活力や創造力を生み出す歌ではない」と。

クローバー 「閉ざされた庭」<絵本と図鑑>。「孤独な暗箱」<絵から写真へ>。「炎の予感」<地図帖>。「失われた環」<児童読物>と続く。そして「うつし世は夢」<推理小説>で終わる。最後の言葉は「私の胸に浮かぶのは、次の言葉である。永遠というのは30年だ。(マーク・トウェーン)」う~ん、どんな意味だ。