運命の騎士
ローズマリ・サトクリフ:作 猪熊葉子:訳
岩波書店:発行 1970年
ブリテン島を舞台にしたサトクリフの物語には、時代を超えて共通して出てくる食べ物がある。蜂蜜とか牛の肉、大麦のパンとか。そのひとつがリンゴ。青銅時代にもローマの軍団がいた頃もそして、今回の舞台中世の騎士の物語でも美味しそうな果実のリンゴやりんご酒として登場する。
主人公はろくに食べ物ももらえない砦に暮らす孤児。犬を飼う手伝いをすることで誰に守られることもなく、人と人の間を蹴飛ばされながら生き抜いてきた。それがひょんなから、新しい領主のお抱え楽士の目にとまり、そして一人前になるよう他の騎士に預けられる。その騎士には、主人公より2歳年上の孫がいた。二人はその育ちからすぐ気統合することはなかったが、次第に心を通わせるようになる。そして主人公は騎士の従者となっていきることを決意する。
イギリスといえば近代史で十分と思っていたが、サトクリフの物語を読み始めるといろいろなことが気になりだす。いったいイギリス人と言える人たちはいつ頃から出現したのだろう。たくさんでてくる異民族や土着の氏族、そしてたくさんの混血に多様な価値観、宗教観。騎士が荘園の領主として人々の生活を守った中世。このあたりで「イギリス人として」としてといういう言葉が出てくる。詳しいことはわからないが、鎌倉時代のご恩と奉公の関係に似ているよういも思える。
しかし寒そうな物語。夏に読むといいかも。少々煙たいか。生活の様子を丁寧に書いてくれるのが、物語をより面白くしてくれる。「大地のエイラ」もそうした物語。花丸のおすすめ。こちらの作者も女性。