辺境のオオカミ

ローウマリ・サトクリフ:作 猪熊葉子:訳

岩波書店 1980年


馬  イルカの指輪をもったローマ軍団の若者の物語とくれば、ローマ・ブリテンのシリーズなのだがこの物語は今までのものとは少し違う。ひろがりがないのだ。舞台が軍団の中限定ということもあるが、作者の描こうとするテーマが少し違うように感じた。

馬 理由は作者の後書きで判明。この物語のヒントがウェスタンにあったというのだ。そりゃそうだわとすぐ納得。映画にそのままなりそうな構成だったのだから。アメリカの映画にようあるような。とかくとずいぶん不出来に聞こえてしまうだろうが、もちろん安直な内容ではない。ただこれまでと同じようなものを期待しない方がいいというはなしだ。別の物として読むといい。

馬 タイトルの辺境とは、ローマの属州として辺境の地ブリテン島のさらに北、氏族とローマ軍団の曖昧な境。軍団の兵士の多くが土地の氏族の出身であり、信じる宗教もキリスト教ではなく習慣もその多くが混成部隊のような氏族のもの。オオカミとはかれらのこと。そこに派遣されたイルカの指輪を持つ若者の奮闘と友情と勇気と成長の物語。彼もまた辺境のオオカミとして生きる決意をする。最後実在の皇帝が出てきてしまうところも収まりが悪い。でもこの作品でサトクリフはスランプから抜け出せたそうだ。


馬 「イギリス・カントリー紀行」という旅行案内とエッセイが組み合わさったような本を古本屋でみつけた。その中にダート・ムーア・ポニーという野生のがっしりした足の太い黒毛の馬の写真があった。「仔牛ほどの大きさしかない」とコメントが付いていた。登場する馬はこんな感じなのかなぁと思った。

馬 紀行の作者は車での移動が多いらしく、道路のことも出てくる。まっすぐな道がローマ人が作った道、そのあとをくねくね曲がっているのがイギリス人の作った道と説明される。「ローマ人の物語」でローマの軍団は道を作りながら進むというのがあったが、そうかと思い出した。関係ないけど稲本選手が出ている車のCMのバックに2段の高い橋のような物が写っているが、あれはローマの水道橋。「ローマ人の物語」の最終章を読むと、ローマ人の建造物へのこだわりがよくわかって面白い。こちらもおすすめ。