ベルリン1919

作:クラウス・コルドン 訳:酒寄進一 発行:理論社 初版:2004年


  3部作のうちの1作目。ゲープハルト一家を中心に進むこの物語、今回の主人公はハンスの兄、リレ、13歳。第1次世界大戦に出征し、右腕をなくした父親が除隊して戻ってくるところから物語は始まる。

  ベルリンでも一番貧しい人たちが暮らすアパートには、たくさんの人が寄り添う。道で馬が死ねば、人びとは包丁を持ってきて早い者勝ちに馬の肉を切り取り始める。それくらい命をつないでいくに必要な物資がなく、多くの人びとが苦しんでいた。それでも赤ん坊がいればだれかが面倒をみ、助け合って暮らしている。時々、ローザ・ルクセンブルクのような歴史上の人物が登場するが、多くは作者の想像による人物達である。名前の残らなかった1919年にドイツの首都、ベルリンに生きていた多くが労働者階級の人びとである。

 ドイツ皇帝が退位し戦争は終わる。やっと平和が来る。しかし人びとの期待とは別に、ベルリンの街は権力争いで内戦状態となる。本文650ページ。その中で少年リレの成長が描かれる。でも読めてしまう。

 東ドイツに生まれの作者は、あとがきにこう書いている。「かつてのベルリン・・・・にあった貧困は今のドイツには存在しません。しかし貧困にあえぐ地域が消えたわけではありません。わたしたちが第3世界とよぶ地域に場所が移っただけなのです。・・・そして戦争も根絶されていません。・・・1918年に革命を起こした人々が望んだ戦争と貧困のない暮らし。それは新世紀の始まりでもまだ夢のままです。しかし夢は見つづけなければなりません。夢をあきらめた人は負けなのです。」


 調べてみたら、第3巻も出版されていた。訳者が原稿に出会って20年、「20年越しの執念の翻訳」と書いていた。充分。でも読まないと、是非読んでください。ここに紹介する本の基準は読んでおもしろいことが第一、むずかしい紹介だったかもしれないけど、おもしろいことは間違いなし。