蝶人皐月映画劇場その3 | 花鳥風月人情紙風船

花鳥風月人情紙風船

映画や読書感想、短歌や俳句などを毎日連載しています。

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2105~14

 

 

1)ガス・ヴァン・サント監督の「追憶の森」
妻に死なれて絶望し青木ガ原樹海で自死するためにやって来たアメリカ人の前に出現した渡辺健は夢か現か幻か?欧米キリスト教徒がみる「アジア仏教徒の不思議な霊的世界」というよくある視点がいささか気になるずら。

 

2)メル・スミス監督の「ビーン」
さえない美術館員ローワン・アトキンスが、思いがけず大活躍してしまうお馴染みビーンもの。しかしホイッスラーの名画を台無しにしてしまい、そのかわりにポスターとすり替えたら、誰でもすぐに気がつくのではないかいな。

 

3)オリヴァー・パーカー監督の「ジョニー・イングリッシュ気休めの報酬」
ご存じビーンのローワン・アトキンスが「007」に扮して超ドタバタの大活躍だが、プーチンそっくりの詰まらん役者が出てくる本物の「007」よりこっちのほうがよっぽど面白いずら。

 

4)五所平之助監督の「大阪の宿」
大阪に左遷され宿に入った保険会社のリーマン佐野周二を取り巻く女たちの群像を快適なテンポで鮮やかに浮き彫りする五所平之助の腕の冴えは瞠目に値する。とりわけ芸者うわばみに扮した乙羽信子の美しく愛らしいこと!

 

5)今村昌平監督の「復讐するは我にあり」
捜査陣をきりきり舞いさせながら5名の連続殺人をやらかした凶悪犯の半生を描く。緒方拳が怪演しているが、題名は内容と合わない。それにしてもやまゆり園の植松が殺したのは無抵抗の19名、26名に重軽傷を負わせているのだから比較にならない悪辣無惨な犯行だ。

 

6)デルマー・デイヴィス監督の「折れた矢」
先住民の視点から白人の横暴を描いた珍しい1950年製作の西部劇。主人公のJ・スチュアートとアパッチの酋長ジェフ・チャンドラーの友愛がうるわしい。薄幸の死を遂げる可憐なヒロイン、デブラ・パジェットは健在ずら。

 

7)デヴィッド・リーン監督の「オリバー・ツイスト」
ディケンズの小説の2回目の映画化。英国で1943年に撮影された。悪役フェイギンをアレクギネスが演じているが、役者、演出ともども見事な出来栄えで文句なし。

 

8)トッド・ブラウニング監督の「怪物團」
1932年製作の恐るべき勧善懲悪アメリカ映画。舞台はサーカスであるがサーカス場面は出てこない。美貌の軽業師が自分に恋した小人を食いものにしたので、小人症、下半身損傷、両手両足喪失男、シャム双生事、半陰陽、骨人間、小頭症などのフリークスが一致団結して悪女に復讐。下半身の無い障害者にしてサーカスの見世物にしちまう。障害者を差別するとこういうことになるのだ。植松、分かったか。

 

9)岸善幸監督の「あゝ荒野」
昔から潜水艦映画と拳闘映画に駄作は無いが、これは寺山修司の小説を原作に自由に逸脱・発展させた素晴らしい拳闘映画。主演の菅田将暉、ヤン・イクチュン、助演のユースケ・サンタマリの名演。そして前篇、後篇の長丁場を一瞬のたるみを感じさせることなくラストまでぶっ飛ばす岸善幸の快調なメガフォン。この監督の実力は明らかに同期の是枝選手の上を行くものだ。

 

10)ケヴィン・レイノルズ監督の「ウオーターワールド」
エラ人間に扮したケヴィン・コスナーが海を舞台に大活躍。1995年製作の大金をつぎ込んだ大掛かりな海洋冒険ドラマなり。全然期待していなかったけど結構面白かった。

ユニクロに一歩先んじSPAに転換せざるが敗因でRか 蝶人