指揮者Ⅳ
ブルックナー - 交響曲第4番変ホ長調WAB104
- 「ロマンティック」
セルジュ・チェリビダッケ![]()
本日は世界の3大オーケストラが相手にしなかった
世界一変わり者の指揮者をご紹介します。
ウィーン・フィル、ベルリン・フィルが演奏を断った指揮者
その人の名は
セルジュ・チェリブダッケ
彼の名を知らなくても誰もモグリだなんて言いません。
デビュー当時の録音は別として
彼のレコードやCDは絶対手に入らなかったんですから。
えっ、どうして手に入らないんだって
彼は自分の演奏を録音する事を酷く嫌ったんです。
じゃあどうやって私は彼の演奏を知ったのでしょうか。
それはNHK・FM放送です。
セルジュ・チェリブダッケはスタジオ録音を絶対行いません。
コンサート会場でのライブ録音も絶対厳禁です。
彼は言いました。
私の音楽は聴衆と一体となり作るものです。
聴衆のいないスタジオ録音なんてありえない。
そして楽団員や聴衆と一緒に創造した音は一瞬のうちに消えます。
それを録音しようなんてもっての外
もし録音して他の人に聴かせたとしても
私の創造した音楽の良さは絶対伝わらないのです。
だから私のライブの録音は絶対しないで下さい。
周りのスタッフは言いました。
あなたの素晴らしい音楽を後世に伝えるべきです。
たとえ10人中1人にしか伝わらなかったとしてもいいじゃないですか。
しかし彼は残りの9人に自分の音楽を聴かせる事に
我慢ならなかったようです。
結局スタッフは彼に内緒で録音を続ける嵌めになるのです。
私もこの話を聴いて叫びたかった。
10人中1人にしか伝わらなくてもいいじゃないか、
世界のクラシック・ファンはあなたを待ち望んでいるって。
私達クラシック・マニアが彼の演奏を手に入れる方法は唯一つ
FM番組表をしらみつぶしにチェックし、タイマー予約をしましたが
結局出かける事もできず、FM放送にかじりついていました。
マウリッツィオ・ポリーニのライブと並んで
伝説のライブ録音なんですから。
彼らのライブ録音は聴くと言う感覚じゃなかったんです。
高い山に登り、日の出を見に行く
そんな神聖な気持ちへと導いてくれるのです。
とてもちょっと音楽を楽しもうという姿勢では聴けなかったですね。
録音を成功したその日は
もう金銀財宝を手に入れた位の喜びでした。
- ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団, ブルックナー, チェリビダッケ(セルジュ)
- ブルックナー:交響曲第4番
普通指揮者はプログラムが決まると
演奏会当日まで団員と練習を行います。
その期間は1~3ヶ月、長い人で6ヶ月です。
それをセルジュ・チェリブダッケは12ヶ月よこせと言うんです。
当然誇り高きウイーンフィルは断ってきますよね。
俺達の演奏技術を信用できないのかってなりますよね。
一度契約すれば、どんな指揮者にでも服従すると言われた
あのベルリン・フィルも契約を断ってきました。
たった1回のコンサートを行う為に12ヶ月も自由を束縛されるわけですから
楽団員もたまったもんじゃないですよね。
それでも彼の芸術論に賛同してくれるオーケストラはいたようです。
えっ、自由を束縛される?
では彼の練習はどうだったのか。
彼は団員に次から次へととんでもない要求をしていきます。
彼の要求は、川の流れ、風の音、刻々と変化する太陽の光を
オーケストラで再現するようなもの。
どこかの修行僧でもない限りできないような微妙な音の変化を
団員全員に強制するのです。
時にはたった1小節を1日中練習した事もありました。
とりわけピアニッシシ・・・モは凄かった。
音を出してもいけない、音を止めてもいけない
じゃあどうすればいいのっていいたいですよね。
自然界の静寂のようなピアニッシモ
余程集中しないと聴こえません。
それが世界一のピアニッシモと言われた所以です。
彼のすべての演奏はかなり遅いです。
自然界の微妙な変化をも捉え様とすると
この遅いテンポが必要なのでしょうね。
演奏を聴いてまず最初に驚かされるのはピアニッシモ
何と言っても世界一のピアニッシモですから。
次に各パートの楽器の音が
一つ一つ鮮明に聴こえてきます。
ここでこの楽器はこんなメロディを奏でていたのかって
再認識してしまいます。
如何に彼が一つ一つのメロディを大切にしているかですね。
そして演奏会場には神聖なる空気が漂い
オーケストラはまるで生き物のように動き回ります。
気が付けばオーケストラと一緒になって呼吸している自分がいます。
演奏が終わると生きている喜び、音楽を聴く喜びに
浸っている自分がいました。
内緒で録音していた事とリスナーの大反響は彼に伝わりますが
やはりレコード化、CD化する事を許さなかったのです。
時が流れやがて彼は亡くなりました。
普段から演奏会の収益金をほとんど慈善団体に寄付していたため
妻と息子に残された物はライブ録音の著作権のみ。
レコード会社は必死になってCD化する許可を得ようと
交渉し続けました。
彼らの努力は報われ、遂に息子と母は首を縦にふったのです。
1999年東芝レコードが先頭に立ち
次から次へとCD化されていったのです。
前日に山へ登り、夜明け前に展望台へ行き、日の出を見る
そんな感動を彼の演奏で味わえる3曲をご紹介
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調WAB104
「ロマンティック」
第4楽章
シベリウス:交響曲第7番ハ長調作品105
第4楽章
ラベル:「ボレロ」
ここまで書いてしまったアマデウス
それでは彼のの芸術は世界最高?
彼は万能の指揮者なのか?
ところがそうではないようです。
だからこそ音楽って面白いのです。
音楽って音を楽しむって書きますよね。
彼の芸術論はハイドンやモーツァルトに代表される
古典派の音楽には100%通用しないように思われます。
彼の録音にハイドンやモーツァルトがほとんどないのは
そのせいかも知れないですね。
多分彼もその事に気付いていたのではないでしょうか。
もっと長生きしていれば古典派の名演を
もっと多く残せたかも知れません。
昔ハンス・クナパーツブッシュと言う名指揮者がいました。
演奏会でベートーベンやモーツァルトの有名な曲を
ウィーン・フィルとやる事になりました。
練習期間は1ヶ月だったかな?
演奏会当日が近づいているのに彼は一向に練習に現れません。
やっとウイーン・フィルの前に現れたかと思うと
「明日演奏会で行う曲は、皆さん良くご存知の曲」
「もう数え切れない程演奏をして来たと思います。」
「それでは皆さん、明日は宜しくお願いします。」
と言って練習をせずに帰ってしまいました。
でっ、
いい加減な指揮者にも思える彼の演奏はどうなんでしょうか。
とっても素晴らしかったです。
次回はラスト
私が最もエコヒイキしたい人物です。