弓を引くとき指の保護のためにつける革製の手袋のことを弽(かけ)といいますが、

弓道では弓以上に大切にされているものであるため、「鞣替え(かけがえ)」という言葉が「掛け替え」に変化して、「かけがえのない」という言葉が誕生したのではないかという説もあります(この説は本当かどうか怪しいそうですが、、)。

 

私も、いくつか違う弽を使用したことがありますが、偶然出会った弽が私の手にあまりにぴったりで、以降、私にとって、長い間、かけがえのないものとなったのでした。

 

かけがえのないの意味はご存じのように、「代わりになるものがない」です。

 他のもので代替ができない、もし失ってしまった場合に代わりになるものがないという意味から、この上なく大切という意味でつかわれますが、まさにその弽が私にとってそうだったのです。

 

そう、信じ込み、その弽で弓を引くのにもべつになんの不都合も感じていなかったとき、

これも偶然出会ったある方の勧めで、素晴らしい弽師さんを紹介していただきました。

とてもひきやすい弽を作る方だということで、作ることを強烈におすすめされました、、、

 

その弽師さんのもとを訪ね、指一本一本採寸していただき、約2年後の忘れたころ(笑)やっと手元に届きました。

 

素晴らしい弽師さんの作った弽は初め私にはきつくて痛く、そのうち伸びて引きやすくなるといわれても、今までの弽があまりに手になじんでいたため、どうも使用する気がおこらず、結局しばらく眠らせたままになっておりました。

 

ところがたぶんそれから1年以上はたった、、ある日、何となくその弽を試してみたくなり、それをさして弓をひいてみました。

その弽で引いた射をみていた師が、今までの弽よりずっと鋭い離れがでてます、と一言。

 

おっしゃるとおりと、私も感じたのでした、、、

だんだん、その弽がなじんでまいりまして、いまやこちらのほうがかけがえがない弽になったのでした。

 

多分、届いたときの、私の心はその当時使っていた弽が最高と信じていますから、全然新しいものを受ける気がおこらなかったこともありますが、多分、その弽を使う時期が来ていなかったのかもと今ではおもいます。

 

自分が変化したからこそ、その弽を使いこなすことができるようになったのだとおもいますが、

痛くても強制的に、もっと早くその弽を手になじませていたら、、、どうなっていたのかな、、と少しはおもいます

 

もちろんかけがえのないものは存在しますが、その思い込みを常に見直して、

「さらに良きものがある」可能性にいつも心をひらいておくことが、大切ですね。