ちょっと古いヤフーニュース記事を引用。
約三年前の記事。

 

 

なぜネット上に「野良カウンセラー」が跋扈するのか――自称可能な肩書が生む、メンタルヘルスの危険性

2021/10/28(木) 17:30
 
資格を持たずにネット上でカウンセラーを(合法的に)名乗って高額低品質なサービスを提供する野良カウンセラーを批判し,
日本でも公的な資格のある人から効果的な心理療法を受けられるように国の事業をやるべきと
原田隆之氏(筑波大学・人間学群心理学類・教授,専攻は臨床心理学・犯罪心理学・精神保健学)
が述べている.

 

この記事をリンクして

本山真氏(精神科医師/精神保健指定医/日本医師会認定産業医)が肯定的な意見を次のブログ記事で述べている.

【産業医監修ニュース解説】なぜネット上に「野良カウンセラー」が跋扈するのか
タグ : メンタルヘルス , 時事ニュース
2021年10月30日

 

 私はこれらの意見に半分賛成でもあり半分反対でもある.

 

 

賛成できる点

 

 

 まず,賛成できる批判部分としては,

・保険適用外でも大学の相・談室での相談料金は数千円以下なのに「野良カウンセラー」では一時間数万円など法外な料金のところもある.

 

 これはうなずける.

 

 原田氏が一番問題と考えているのは,

・弱っている相手に性的な接触をして倫理的な問題を起こすこともあり,いろいろな害が発生する可能性があること

だそうである.

 

 確かにこれは問題である.公認心理師でもありえなくはないが,資格取得の教育課程の過程で,このような倫理的な指導は行われている.よって公認心理師のほうが危険度が低い.

(ここで資格と呼んでいるのは,公認心理士・臨床心理士のことであって,怪しい民間の資格は除外する.)

 本山氏も上の記事で,以下のように書く.

 

『公認心理師資格、臨床心理士資格を保有しているから○○資格より優れている』といった選民思想的な発想はまったくございませんが、本ニュースにおける『野良カウンセラー』と比して、両資格ともユーザーを守るための倫理規程が設定されているところは大きな違いだと感じます。

(略)

公認心理師資格、臨床心理士資格に限らず倫理規程が設定されている資格、更に加えて言えば、倫理規程がお飾りではなくしっかりと運用されている資格は、ユーザーにとって安心安全な資格だと言えるかもしれません。

 

 私が考える心理師資格の最重要点はここだと思う.逆に言えば,この安心感など「教えられなくても普通に考えれば常識的な話」をのぞけば,心理師資格はあまりあてにならないと思う.

 資格のためのカリキュラムのほとんどは,このような「重要だが当たり前」のことで埋め尽くされる.あとは「役に立たない蘊蓄」だ.

 そして倫理規定に反したことが事件として発覚して問題化した場合は「公認心理士資格・認証心理師資格」をはく奪される.長年その資格を所持していているということはそのような問題行動が少なくとも資格認証団体には認知されていないという事だ.

 

 

 たしかに倫理的な人格面でのハズレくじを引かないことは重要で,そのためには野良カウンセラーより公認心理士から選んだ方が大きな実害を生じる可能性は低い.

 

 野良カウンセラーの一部は宗教家と変わらなかったりする.悪いビジネス臭のする宗教家に捕まったら大変だ。

 ネット上には怪しい野良カウンセラーが多い。

 

疑問な点

 次に私の意見として,ちょっと上の記事には承諾できない点を述べよう.

 ちなみに私は野良カウンセラーでない.ただ過去に関わった複数名の臨床心理士に良い印象は持っていない.

 個人的経験からくる怨念が入っているので、それを含んで読んでほしい。

 

 公認心理師が資格を得るためにどんな勉強をしているかは(過去記事2)で取り上げた本などで見ることが出来る.

 

 

 原田氏は大学で

カウンセリング学いプログラム(博士前期課程)

カウンセリング科学学位プログラム(博士後期課程)

など,いわばプロの心理士(カウンセラー)を輩出する側の人間だ.

 原田氏は良質な心理士を教育する価値があると信じているだろうし,そのような教育を経ていない野良心理士から自分の弟子たちを差別化したいと考えるだろう.

 つまりバイアスが入っていることはしかたがない.読者がそれを含んで読む必要がある.

  

 上の原田氏の記事を引用する。

 筑波大学などで公認心理師の育成に携わっている原田さんは、「臨床心理士、公認心理師のサービスを受ければ、一定の質が保証されている」と述べたうえで、公認心理師あるいは臨床心理士と「野良カウンセラー」の大きな違いは三つあると指摘する。

一つは専門的な知識やスキルがあることです。公認心理師の場合、実習が450時間以上必要です。それに、話を聞くだけではなくて、相手が病気かどうか、どのような心理状態にあるかなどのアセスメント(評価)や、それに基づくさまざまな介入ができるなど、非常に幅広い専門的技能を持っていることが一番大きな違いですね。二つ目は倫理です。守秘義務、身体的接触の禁止、カウンセリング以外での個人的関係の禁止など、倫理に関しては厳しく指導されますし、公認心理師法には罰則の規定もあります。三つ目は研究です。卒業論文や修士論文を書いて、いろいろなアカデミックなトレーニングも受けます。『野良カウンセラー』にはこの三つともありません」

 上でも書いた通り、二つ目の倫理は重要だ。ただこれは比率の問題だ。公認心理師でも酷いのはいるし、野良カウンセラーでも倫理観に優れた人はいるだろう。ただ明らかな法的な証拠を残しまくって非倫理的な行動をする公認心理師は少ないだろう。やるならバレないように悪どくやるだろう。

 三つ目の研究は学者としての訓練なので、相談で顧客に役に立つかは別の話だ。この手の研究は実用までは遠い学者間の自己満足的論文が多い。科学になりきれていないので客観的事実が体系的に積み上がってかないのだ。学問としての存在意義はあってもカウンセラーが研究論文書く必要は無い。

 一つ目の専門的知識やスキルというが、心理学という学問は浅い。私もこのブログで面白い心理実験などは取り上げてはいるが、体系だった分野では無いのないので、充分独学でいける。そもそもどんなスキルで成功したかなんてフィードバックはこのカウンセリングの世界には無いのだ。よほどの大失敗は事歴として避けるようにはなっている。
 そしてアセスメント
 アセスメントというのは、支援者から支援者へ情報を伝える時の言語である。医師に頼まれて心理師がアセスメントテスト業務を下請けする。その結果で医師は処方する。そういう活用の仕方だ。
 カウンセラーが相談者に対し相談時間内に活かせるものでもない。他の支援者に支援を仰ぐ場合に使えるだけだ。
 むやみやたらにアセスメントテストをすべきでは無いというのは常識だ。必ずしもアセスメントテストが必要なわけでは無い。
 そういうテストでなく、総合的な意味でのアセスメントと言うなら、それが客観的にできると言うのは妄想だ。最後にそのカウンセラーが使うのは主観的なもので、他の支援者に協力を求めないならそれで良い。

 アセスメントテストと言っても、各種テストはそのテストをする技巧は蛸壺的だ。Wisc-IVはできるけどVineland-IIは出来ないとか、各種テスト全部できるわけではない。版は新しくなるし。
 だから各種テストは必要ならそれができる人に外注するのが1番手っ取り早い。
 理想を言えば、私はこのような知能テスト、情緒テストなどは、AIに任せるべきだと
 どうしても心理師の主観や技能のブレが入ってしまい、客観性が完全には保てない。
 人を訓練する事で儲けている教育ビジネスの人は言わないだろう。しかし顧客のことを考えれば、アセスメントは最大限AI化すべきなのである。心理師養成の大学は困るのでこういうことは言わないが。

 人を訓練する時間を節約することこそが文明の進歩である。

 ギルドを形成し新規参入障壁をつくり、既得権益者と養成所が儲けるという要素が、「心理師養成」には多分にあると思う。教員免許にも言えることだ。
(教員免許を持たない一流大生の方が、教員免許をもったベテラン教師よりクラスの成績をあげると言う米国の研究結果がある。教員も心理士も天性の資質が最重要か)

続く。