(過去記事1)の続き.

 

勝海舟の系譜

 

山上徳左衛門益平

米山検校・銀一(徳左衛門の七男)(1702-1772.1.13)

男谷平蔵・信陵(銀一の九男)(1754-1827)

勝小吉(平蔵の三男・庶子)(1802.2.17-1850.10.9)

勝海舟(小吉の長男・嫡男)(1823.3.12-1899.1.19)

 

 

 

山上徳左衛門は越後国刈羽郡(新潟県)の農民であったようだ.

その7男銀一は盲人で12-18才で江戸に出た.

徒歩で江戸に行くくらいだから全盲では無かったのだろう.

 

 

江戸時代に入ると鍼治療は急速な発展を遂げ、中には幕臣の奥医師となる者も現れて社会的地位も向上した。また、江戸時代より視覚障害者(盲人)が鍼医となることが多くなり、彼らは検校や法眼を最高位とする階級制度の下で当道座に支配されていた。

 

盲人の稼業である鍼(はり)や高利貸し(盲人に許可された)で銀一は財産を築いた.

一説には幕臣の邸宅で賭博をして富を築いたという.

金に困っていた御家人・男谷家(家禄100俵)の株を買った.

男谷家は1575年以来の最古参の幕臣だった.

 

ある意味,この銀一の財産とそれで買った武家株で子平蔵と孫小吉が食べられたと言えるだろう.

 

平蔵は役を得て旗本(百石)に昇進し,長男彦四郎が家督相続

平蔵三男小吉は御家人・勝家(家禄41俵)の養子になる.

小吉は無学・素行の悪さから生涯無役で旗本になれず御家人のまま.

 

 武士の収入源である俸禄(ほうろく)は家禄(かろく)と職禄であった.つまり小吉は職禄は無く定収入は家禄だけであったのか.生活保護を受けているようなものと言えなくもない.

吉原で豪遊していたので実家の金をむしっていたのか.

 

 ここでちょっと面白いと思ったのは,小吉は無学で字も満足に書けず,喧嘩好きの不良で就職活動もままならず,生涯無役で刀剣売買などで生活していたという.

 

 しかし,ここで面白いのは,1829年数え年7才の勝海舟(麟太郎)が,11代将軍家斉の孫の遊び相手として江戸城へ召された.

 

 

「息子は御殿へ上っている」は、麟太郎が御城に出仕していた事を指す。親類本目(ほんめ)家の
女性で、江戸城本丸の呉服ノ間に勤めた阿茶局(オチャのつぼね)が麟太郎に御庭見物をさせた時、
麟太郎の物怖じしない活発な子供姿が11代家齊の目に留まり、孫の初之丞(後の12代 家慶の
五男)の遊び相手として7歳から9歳まで召し出された(男子禁制で10歳の前に御城下がり)。
   麟太郎は「あばれもの」で、女中からお灸をすえられる事もあったが評判は良く、於美津の方(家慶の側室、13代
   家定の生母、後に本寿院)から特に目を掛けられた。

 

 この孫は後の12代将軍家慶の五男だから,将来の将軍候補でもあった.そこへ数年もの間,学友として城へ行っていたのか.その父親は無職なのに!

 

 ここで思い出すのは明治維新まで徳川慶喜が側室としていたお芳(およし)の父は新門辰五郎は200余名の町火消の棟梁であり,任客・博徒らの元締めであった.

その辰五郎が,小吉を

「喧嘩で(勝小吉の)右に出る者なし」。

と評していたという.

 

勝小吉は道場破りなどを繰り返していたという.

 

 ふーん.

 ここで思うのは,現代人の間隔とは違うのだなと思う.

 子の評価などは10才未満なら,その子自身の才覚もあるだろうが,(母親の美しさと)父親の職業の地位で評価されることが多いだろう.

 麟太郎にとっての父親は無職である.

 しかし,時の将軍にすら取り入ってもらえているのだ.今だったら,天皇が孫を生活保護家庭の子に近づけるだろうか.あるいはヤクザの娘を妾にするだろうか.

 

 我々の現代感覚は,実はここ100-150年位の短いスパンのものにすぎない.

 

 江戸時代と言えば,まだ私有財産が充分に保証されておらず資本制では無かった.福沢諭吉が発明した経済という用語もなかった.

 経済的に豊かなものが社会的地位が上という感覚では無かったのだろう.

 

 無職でも喧嘩が強かった小吉は町では顔ききで,もめごとがあれば仲裁に頼まれた.映画ゴッドファーザー2(1974)のヴィトーがコソ泥から町の相談役,そしてマフィアのドンになっていくことが思い出される.

 

 今でも,無職の専業主婦が町内会の顔ききである例はあるだろう.あるいは引退した老人とか.でも現役世代で無職で生活保護を受けていて町の顔ききとか無いんじゃないだろうか.

 

 おそらくこれは時代の価値観に大きく依存すると思う.

 

 特別支援教育も,なにはさておいて,将来の職業のことしか考えていないようなのだ.それは現代の価値観に縛られすぎている気がする.

 

 

 

 

(過去記事1)