2024年4月6日(土)

毎日小学生新聞・15歳のニュース

に次の見出しの記事があった.

 

”みんな佐藤さんに”衝撃の未来明らかに

 

この記事の内容こうだ.

夫婦同姓を続けていくと,

2531年には日本人全員が佐藤姓になる

そういう研究報告を東北大・吉田浩教授が行った

というのだ.

 

この記事は,以下の研究報告メモ(全5ページ)に基づく.

https://think-name.jp/assets/pdf/Sato_estimation_yoshida_hiroshi.pdf

 

上のメモは,査読付き学術雑誌に掲載された論文ではなく,

Think Name Projectという選択的夫婦別姓をすすめる政治団体のサイトに置かれているものである.

 

政治団体と筆者である吉田浩・東北大大学院教授が3月22日に記者会見を開き,

4月1日に報道解禁とし,4月1日にマスコミが一斉に報じたという経緯がある.

 

この記事はだいぶおかしい.

突っ込みどころがありすぎる.

 

 毎日小学生新聞を読む素直な子供らが騙されていくのかと思うと恐ろしい.

 

 グーグルで良く調べたら,批判は沢山上がっていた.

 

(A)2024.4.2「2531佐藤さん問題」はよくできたエイプリルフールネタだった

 

(B)2024.4.11 『2531佐藤さん問題』は何が問題か?

 

 この研究報告はかなり問題点のあるのだが,上の二つのサイトでほとんど挙げられている.

 

 例によってこの経済学者は,研究報告の最後に留保をつけている.

 

注;この推計は数々の仮定のシナリオに基づく暫定的試算であり、確定した将来を示すものではありません。

 

 おそらく,4月2日でなく4月1日に報道解禁とは,吉田教授なりの

エイプリルフール・ネタ

として逃げ切りたいという意思なのだろうと推測する.政治団体からしたら4月2日にしたかったが吉田教授は同僚にはエイプリルフールネタと言い訳したいのかもしれない.

 炎上商法か。

 実際,上の批判サイト(A)は4月2日のものなので,エイプリルフールネタだろうとしている.

 

ただ、後述するように分析中にはきちんと読む人向けに「これは嘘ですよ」ということを示唆するヒントが散りばめられているので、(依頼元の団体はともかく)分析を依頼された東北大の先生はエイプリルフールの軽い冗談のつもりで書かれたのかもしれない(それにしてもやや悪趣味だと思うが)。(2/n)
2024-04-02 18:34:46

 

 しかし,政治団体やその思想を推進したいマスコミは,4月1日だけでなく,その後も報道を続けた.

しかも,子供向け新聞にまでだ.

 

 これは悪質である.嘘なら4月2日には自身がそう表明しなければ学者としての誠実性が問われる.

 

 私や上の批判サイトの人が,東北大にねじ込んでいってこの論文の誤りを指摘したとしても,

 

・あなたの話も私の論文も数学的客観的には間違えていない(前提を都合よく読みかえれば).

・仮定に関しての妥当性や結果の解釈は主観的な話であって,見解の相違にすぎない.

 

と,吉田氏は逃げるだろう.留保をつけて逃げる準備をしているのだ.

 

(A)では手厳しく次のように言われている.

>これを元に選択的夫婦別姓を喧伝している人には、論理的思考力と知的誠実性の少なくとも一方に著しい欠陥があるとしか思えない。(1/n)
2024-04-02 18:34:25

 

 

 こうやって,

政治的主張をもった人(運動家・マスコミ)が肩書のある専門家(経済学者)の論文をプロパガンダに使う.使われた専門家は論文には留保や注など他の専門家から批判されればいつでも梯子を外せる準備をしている,

という構図は(過去記事1)の東大経済学者(当時横浜国大)のサンデーショックによる私立中学の学力向上効果の論文とにた構造にある.

 

 ThinkNameProjectの中の人は,サイト(A)(B)くらいの理系的知能をもった人がいないのだろうか?高校数学分かっている人ならすぐに吉田メモのおかしさには気が付くはずなのだが.良心は捨てて,自分らの政治思想が実現すれば手段は択ばずということだろうか.

 

 残念なことに,ThinkNameProject側の宣伝を垂れ流す大手マスコミはたくさんあるが,

この研究報告のおかしさを指摘する大手マスコミは無い.

ブログなど個人が書いてあるもので,

これを大手マスコミが報道することは無い.

 

 これではマスコミの予想がはずれてトランプ旋風がおこる理由もわかる.

 

 一般人や子供たちは,大手マスコミや子供新聞の記事しか目にしないのだ.

マスコミの記事を書く人は,上のサイト(A)(B)の筆者らほどの知性のある人がいないのだろうか。

私が新聞記者であったとしたら,このような考察も記事に書いたと思う.

記者は全て素人前提で,肩書ある人の引用しかしないか,それしか上司がゆるさないのか.

 

 (過去記事2)でも書いたが,ルソーの頃より時代は変わった.今の経済学者が使用している程度の数学(高校数学か学部教養程度)はもう全国の庶民が沢山持っている.肩書を持った経済学者の(留保を仕込んだ)論文をマスコミや政治団体が一般大衆を抱き込もうとしても,昔のようにはならないのだ.

 

 

佐藤さん問題メモへの反論の具体的な点

 

 もうこの吉田メモはおかしなところだらけなのでいちいち全部言葉にしないし指摘していることが全てと思ってほしくないが

上の批判サイト(A)から私が重要と思う点をあげると

 

・別の類似シミュレーションでは苗字が1種類になるのは60億年後(その一種は佐藤とは限らない)

・吉田メモは分析のほぼすべてのパートが誤りであり,選択的夫婦別姓の導入とは関係もない

・佐藤姓が増えると佐藤姓同士の婚姻が増えるがそれを考慮せず一定の割合を仮定している.

・佐藤姓の割合は僅かに減少している。(6/n)

・佐藤姓が増加傾向にあるという以降の議論の前提条件自体が事実に基づかない。誤差の範囲の変動を恣意的に切り取った推定値に基づく砂上の楼閣(7/n)

・「夫婦別姓の場合は年と世代を重ねても佐藤姓の占有比率に変化はない」という誤った仮定(後述)が追加されている(orこの仮定を認めるならば夫婦同姓でも平均的な苗字構成が変化しないと想定すべき)。(10/n)

・出生率の改善のほうがずっと効果が大きいという結論が導かれる。そもそも人口が0になれば名字も0になるわけだから、わざわざ難解な確率過程の解析をするまでもない

 

上の批判サイト(B)から結論をとると

・ 婚姻により佐藤姓が増加するという根拠が不明な前提に基づいて試算している
・ 恣意的に選択されたモデル式に基づいて試算している
・ 精度の不明なデータに基づいて試算している
・ たった1年間の2点のデータに基づいて500年先の未来を試算している

 

 私が一つ吉田メモにノリ突込みすると,

 

 2022年から2023年まで出生数は79万9728人から75万8631人に減っており,前年の94.86112778%となっている.

よって

758631*(0.9486112778)^n<1 => x>256.639

 

だから

257年後,つまり

2281年には出生数0となり滅亡する.

みんな佐藤さんになる2531年より250年前に滅亡してる

のだ.

 

 今から257年前というと1767年(徳川家治、田沼意次が側用人、明和事件)か。


 マジレスすると,

夫婦同姓か夫婦別姓かは,佐藤さん問題とはほとんど関係ない.

兄弟姉妹同姓か兄弟姉妹別姓かがカギになる.

結局,子供ら全員に同じ姓をつけるなら(父の姓をつけようが母の姓をつけようが),佐藤さん問題は確率的には長期的影響がほぼない.(吉田論文でしている不自然な仮定は長期的には不自然な結論を招く)

 

 この政治団体メンバーの平均出生率を公表してほしい。持続可能な出生率2.07を超えた上で語っているのかが気になる。


 というか,むしろあと何年もしないうちに

佐藤よりも

王とか,李とか,グエンとかサントスとかムハンマド

などの姓のほうが多くなる

と思うんだ。


 中国韓国では夫婦別姓で基本子供は父の姓を名乗り、妻は追い出されやすい、という話は(過去記事2)に書いた。


(過去記事1)

 

 

 

(過去記事2)

 

 

 

 (過去記事2)