(過去記事1)の補足.
母集団が異なる試験の偏差値の補正方法について書いた.
高校数学をちゃんとやった人なら後はスピリットを理解すれば
誰でも一本道でできるので省きました。
しかし少し変形するなら複数の方法がありえるので,
今回は具体的に計算方法を書きます.三つ書きます。
(もっとも一番普通なのは(1)で、z偏差値だけでT偏差値を使わない。これは一本道なので(過去記事1)を読んだ殆どの人は(1)を最初に想起したと思う)
(1)修正z偏差値
まず,無料全国テストを行い,
全受験生の平均Aと標準偏差Dを計算します.
(これは4科目総合,2科目総合,できれば4科目で理社配点を変えた場合,などいくつかのケースに分けてやるのがよい.
科目ごとにやるという手もある.)
Dは,((素点)ーA)^2の(素点を動かしたときの)平均の平方根(ルート)です.
素点Xの人のz偏差値は
50+10(X-A)/D
となります.
そして,その後,模試を行って,
ここでも全受験生の平均A'と標準偏差D'を計算します.
普通はそこでの素点X'に対しz偏差値は
50+10(X'-A')/D'
を出して終わりです.
しかし,ここでもう一工夫します.
無料全国テストと模試の両方の受験生を標本生徒という事にします.
標本生徒だけで無料全国テストの偏差値データの平均aと標準偏差dを計算します.
(aは50,dは10に近い値になるが誤差が出るでしょう.)
また標本生徒だけで模試の偏差値データの平均a'と標準偏差d'を計算します.
そして
ea’+f=a
e(a’+d’)+f=a+d
となる実数e,fを求めます。
具体的には
e=d/d’,
f=a-a’d/d’
です。
そうしたら,
模試の修正z偏差値は
(模試の修正z偏差値):=e(模試のz偏差値)+f
と定義できます.
この
模試の修正z偏差値
と
全国無料テストの(標本生徒だけない全生徒から計算した通常の)z偏差値
は
対等に比べることができます.
母集団の異なりを補正できたわけです.
別の模試を実施したら,その新模試と全国無料テストの標本生徒は入れ替わりますから,
上の計算をあらためてやる必要があります.
しかし,全国無料テストのz偏差値は修正されることはありません.(全国無料テストのA,Dの値は変わりません.)
だから,
2回模試(旧模試・新模試)をやったら,
その
全国無料テストの(標本生徒だけない全生徒から計算した通常の)z偏差値
と
旧模試の修正z偏差値
と
新模試の修正z偏差値
を対等に比べることが出来ます.
実力が伸びたか下がったか分かるのです.
(2)修正T偏差値
上ではZ偏差値を使いましたが,修正T偏差値というのも計算できます.
修正z偏差値xが出てきたら,
全国無料テストでz偏差値xをとった場合の対応する素点Sを
(x=50+10(S-A)/D => S=A+D(x-50)/10)
と計算し,全国無料テストで素点Sが全受験生の上位何%かを調べればよいのです.その順率(順位÷受験者数)からT値(T偏差値)を求め,
模試の修正T偏差値
と呼びます.(順率からT値を求める方法は(過去記事2)の最後に書きました.)
そして,
全国無料テストのT偏差値
と
模試の修正T偏差値
を対等に比べることが出来ます.
(3)第二修正z偏差値
修正X 偏差値のもうひとつやりかたがあります.
それは,
全国無料テストと模試の両方を受験した生徒を改めて標本生徒と呼びます.
個人が模試でとった素点から,その個人が標本生徒に入ったときの順率を計算します.
そして,全国無料テストの標本生徒の中でその順率の生徒が,
z偏差値がいくつだったかを見ます.
それが模試の第二修正z偏差値です.
全国無料テストのz偏差値
と
模試の第二修正z偏差値
を対等に比べることが出来ます.
(4)最後に
この他にも計算方法はあるでしょう.
どれをとっても似たような値になると思いますが,本当にそうなるかは確かめてみないと分かりません.
複数の計算方法で異なる結果が出たら,
成績分布曲線のカーブ
の問題で,各受験生の学力(試験力)以外のものが,その数値にでていると考えた方が良いです.
3つのうちの全てで合格可能性80%以上なら安心できますが,
計算方法のブレで合格可能性が変わってくるようだと,当日の試験でも試験内容や受験生の併願動向によって不確定要素が大きいと予想されます.
(過去記事1)
(過去記事2)