(過去記事1)から特殊算について話してきた.

 

特殊算は中学受験する人しか習わないものだ.

世界的にも習わない.これは日本独自の算法だ.

 

和算という江戸時代からある日本式数学をもとに,

戦後経済成長期の中学受験塾が開発したものである.

 

海外でもそうだし,日本でも文科省の小中高のカリキュラムに特殊算は無い.

中学校で習う方程式・連立方程式の解法の方が一般的で汎用性が高いからだ.

 

特殊算は私流には3パターンだが,受験塾的には24種類あって,

問題の種類によって使う特殊算を選ぶ必要がある.

どの特殊算をどのように使うかは訓練と勘の勝負になる.

一方で(連立)方程式は汎用性が高い.近代的な方法だ.

 

特殊算を使うべきかどうかは,賛否両論ある.

中学受験塾大手を含むほとんどは賛成派,

一部の小さな塾は賛成派のようだ.

下のサイトは特殊算に反対する中学受験塾.

 

中学校では中学入試で方程式を使ってはいけないというアナウンスは無い.

答えしか書かせない問題なら解き方は関係ない.

導き方を書かせるような問題の解きに,中学校はどう採点しているかはブラックボックスだ.

 

 導き方を書く欄に方程式の解法を書いて良いかどうかは塾によって意見が分かれるようだ。

 

私の予想では,おそらく方程式でも丸にしていると思う.

 

理由は2つ.

 

一つ目は(過去記事2)でも書いたように,特殊算の第2・3パターンは方程式的解法と見分けが難しいからだ.

 

2つ目は,採点する時間の節約のためだ.

 

 つまりは,公平性を保ちつつ迅速に採点作業を進める必要がある.

 

例えば2023年麻生中学だと,入試日が2月1日,算数は10:20-11:20,

2月3日15時に合格発表だ.出願者数は918人.

2月1日11:30に試験会場から答案用紙を回収して

12:00から採点して,

2月3日午前に合否会議にかけるとして,

採点は2月1日の午後半日と2月2日で900枚の答案を採点する.

採点集計も間違いがあったら大変なので何度もチェックするだろう.

何人の教員で採点するかは知らないが,採点者によって採点のブレがあっては公平性を保てない.

 

 各塾も入試問題傾向の分析には力をいれているが,どうやって採点されたかは知らない.公表されていないのだから分からない.

 

 ただし,私立中学側は,方程式の解法を書いても丸にしているとは言わないだろう.そう言ったら世間から批判を浴びることは間違いないからだ.

 私立中学に入るには,正規の学校ではなく民間の塾に金を払う必要がでてきて不公平になるからだ.

 

 それなら特殊算は出題しないほうが良いのだが,(過去記事1)で論じたが,なぜか正確には分からないが辞めない.というかこの特殊算の問題はかなりの頻出問題で,受験生の多くが解ける準備をしているので,これが解けないとかなりのハンデを負うことになる,そういう重要な位置づけにある.何年かにたまに出る捨ててよい難問とかではないのだ.特殊算問題はかならず得点源にしないと不利になる問題なのだ.

 

 特殊算は学ぶ価値があると考える人もいるし,価値がないと考える人もいる.

 

 中学受験大手塾が方程式を教えず特殊算を教える理由は3つ考えられる.

 

1つは世間からの批判を回避するため.

有名大手塾が方程式を本格的に教えたら,批判されるのは私立中学だけでなく塾もだ.そして世間から批判を受け,私立中学潰しともいえる入試改革されたりしたら塾業界が衰退する.小規模塾はこの心配が余りない.むしろ方程式を教えることで大手塾と差別化ができる.

 

2つ目は,特殊算は得意だが方程式が理解できない生徒が一部いるからだろう.特に係数が負の数になるものなどは,計算の途中で負の数が出てくる(負の数は中学1年生の範囲).年齢的にまだ成熟していないのか数学的発想法に向かないのか,なんらかの理由で方程式が理解できない小5・6はいる.彼らが中学生になったときに方程式を理解できるかどうかは未知数だが,中受塾の役目は私立中学入試までだ.合格した後はお役御免である.

 

3つ目は,営業効果.特殊算こそ民間受験塾業界が培って作ってきたもので公教育との差別化をはかれるものだ.公立小学校で勉強していては習えないということが塾に通わせようというインセンティブになる.

 

 特殊算についての私自身の考えは次回書く.

 

 続く.

 

 

 

 

(過去記事1)

 

 

(過去記事2)