(過去記事1)では
”分数の割り算はなぜひっくりかえすのか?”
の説明をした.
そこで取り上げたサイトで
”なぜ0で割ってはいけないのか?”
にも答えていた.
なぜ0で割ってはいけない
で検索したら,検索1位に入っていた.
今回はこれについて答えよう.(上のサイトとは異なる方法で.)
問い:なぜ0でわってはいけないか?
ーーーー答えーーーーーーーー
0+0=0
と
分配法則
●*(▲+■)=(●*▲)+(●*■)
(今回の場合に限るなら●*(0+0)=(●*0)+(●*0))
を認める以上,
論理矛盾が出るからです.
1=(1÷0)*0 (割り算は掛け算の逆算)
=(1÷0)*(0+0) (0=0+0)
=(1÷0)*0 + (1÷0)*0 (分配法則適用)
=1+1 (割り算は掛け算の逆算)
=2
よって1=2
矛盾.
------------答え終り--------------------
補足
0=0+0や除算が乗算の逆算であることは基本であるとして,
0で割れることと分配法則は
トレードオフの関係にあります.
両方を採用すると矛盾が出てきます.
自然数,整数,有理数,実数,複素数,行列環,多項式環,有限体,...
いろいろ数の概念は拡張されていきますが,
分配法則は絶対に捨てられない法則です.
整数では加算から乗算を作りますが,一般には加算と乗算は別々に定義され,分配法則だけが唯一の加算と乗算をつなぐ法則です.
たとえば行列などになると
A*B=B*A
という乗算の可換法則ですら捨てられてしまいます.
それでもそこそこ奇麗で使い勝手の良い数理モデル・ツールが出来上がって応用上の利用価値があるのですが,
分配法則を捨ててしまうと,途端に複雑度が増し,使い勝手が悪くなります.
分配法則を捨てて0で割ることを可能にした数理モデルとして
輪(りん,wheel)
があります.例えば有理数全体の集合に要素1/0を新しい要素とともに追加することによって,有理数同士の演算はそのままで0で割り算できる整合性のとれたモデルを作れます.
ただし輪という数理モデルは分配法則を犠牲にしたためかなり複雑で使い勝手が悪く,応用がありません.
数理モデルとは,自然数にしろ整数にしろ行列にしろ,奇麗で使い勝手がよく応用範囲が広いので重宝されるわけです.複雑で応用の無い数理モデルは普及しませんし教育の場でも出てきません.それだけです.
...と書きましたが,輪にも将来的には応用があるかもしれません.輪について詳しく研究している論文(英語48ページ,2001年11月)として以下があります.
https://www2.math.su.se/reports/2001/11/2001-11.pdf
上が検索2位.よくみたら著者が同じでした.
(過去記事1)