中学生だった頃、学習塾に通っていた。
当時三十代の金沢大卒の男が、農家の息子で、親から農地の一部に建物建ててもらって、小中学生向け学習塾をやっていた。
 私は塾長と呼んでいた。当時独身で、私が高校に受かって退塾したあとすぐ見合い結婚し、のちに一人息子を得た。塾長は顎が出てて面白いキャラで生徒から人気があった。
 英数国の三教科、一教科一回2時間、週3回通った。塾長は英語担当。数学と国語はそれぞれ大学生がバイトで教えていた。

 国語講師は明るく面白くやる気のある男で、生徒から人気があった。私も嫌いではなかった。

 たぶん中2の夏だったと思う。塾長が中3は夏期講習やるけど、中2はやらないと言った。その時に、よその塾はやってるし、たしかに経営者としては稼ぎどきなんだけど、うちは金儲け主義じゃないからやらん、と言った。
 当時中学生だった私は、ほう、と経営者目線でみることが出来た。

 で、そのあと通常の塾の授業があるのだが、これが中学校の定期試験の直前までやるのだ。その塾には複数の中学校から通う生徒が集まっており、各中学校の定期試験の時期は微妙に違う。使っている教科書も出題範囲も違う。だから塾でやる授業内容は、定期試験と関係ない。
私は、定期試験の直前は定期試験準備勉強に専念したかった。試験直前は部活などは休みになるのだが、それでも日中学校へ行って、帰ってきてから2時間を塾にとられるのは痛い。往復考えると2時間半は超える。

 それで、ある時、国語講師がこう言った。

続く