ニートの自伝・4 | シケた世の中に毒を盛る底辺の住民たち

シケた世の中に毒を盛る底辺の住民たち

リレー小説したり、らりぴーの自己満足だったり、シラケムードの生活に喝を入れるか泥沼に陥るかは、あなた次第。

タローがいなくなった夜、俺は生まれて初めての自慰行為に及んだ。
何の知識も参考文献も、もちろん肴になる対象さえなかったが、

力任せに掴み、衝動のままに振り回した。

庭にお墓を建てようと言う母親の言葉も聞かず、

泣くことも忘れ、自分の部屋にこもり、
体の奥から押し上げてくる「生」への計り知れない欲求を

抑えきれずに至った結果だった。

それまで、自分の周りの生ある者がこの世から消えてなくなること、

つまり、「死」に直面したことがなかった。

人は、いつか死ぬものだ。
という見識ぐらいはいくらかあったが、実際に冷たくなっていく様を何もできずに見ている、
あの索漠とした感情は、中学生になりたての俺には、

到底どこにもぶつけようのない大きなものだった。

まー君の裏切り、タローの死。
俺の大切にしようとするものは、全て離れて消えていってしまう。
それならいっそのこと、何も大切にしない、何にも関わらない、

決して自分以外のものに信用を預けたりしない。
そうすれば、俺は傷つけられることはきっとない。

そう考えるようになったのは、それから2年ほど経ってからのことで、
その当時の俺には、何か一つの事象について考えを巡らせる余裕なんて、

持ち合わせていなかった。

今、改めて思い返してみると、キッカケとなった出来事は全て必然であり、

この世界の動物として最低限の生理現象が、

年相応の一番柔らかい表現で提示されただけだ。

そんなことを言えるようになった今でも、きっと他人を信じることはできない。
仲良くなれそうな人がもし現れても、まー君やタローのように、

見えない部分を隠される不安や消えてしまう焦燥に駆られ、

心から信用することなんて、到底無理だと思う。

だから、俺は外へ出ない。出たくない。

20年以上も前から、俺は何も変わっていない。
俺は、誰にも傷つけられたくないんだ。




つい、今の自分の感情を登場させてしまった。癖は治らないものだな。
中学生の俺の話に戻ろう。

かくして俺は、ピアノも弾かなくなり、両親とも口を聞かず、

部屋に閉じこもりきりになっていった。

数千という月日をかけて、夕陽が日々沈むように、

日々スペルマと共に、朽ち果てていったのだ。