色があせはじめた真っ赤なゼラニウム

次の芽が育つように

摘みとって

そのまま捨てることができなかったから

一輪挿しの小さな花瓶に活けたら

ふわっとまぁるい別の花が咲いたみたいになった


捨てなくてよかった


深く紅い花びら

ひとひら

ひとひらと

落ちてこぼれて


紅い紅いルージュ

引きすぎて

みっともない私と比べて


ゼラニウムは

枯れかけても

真紅に染まり

美しく花びらを散らす


私は同じ紅でも

似合わない


私が最後に飾るなら

薄いピンクまじりのベージュなんだろうな

いつもの


紅が似合わないのは

悲しいけど

仕方ない


あでやかな真紅のゼラニウムに憧れる

私はピンクの金魚草なんだろう

歳相応にシワだけは深く増え

地黒にピンクベージュって

似合わないけど

笑わないで


もし

あなたより先に

私が

最後に瞳を閉じたら

歳相応に

薄化粧で

唇に花びらを

乗せるように

ピンクベージュにしてね


少しは泣いてね

いつまでも君を愛すると言ってね

心のなかで


もしも

私が先に

最後に瞳を閉じたら

なにも要らないから

生きてるうちに

ピンクベージュの薔薇に

私の名をつけて

ひとつだけ

ください


あなたの心の庭に植えてね

思い出の中だけでも綺麗に咲いていたいから




















朽ちかけの

ゼラニウムにも

似て紅を

落とすが如し

花の色褪せ




朽ちつつある花の

命の儚さ強さ

こんなに萎れても

なお鮮やかな深紅を

身にまとっている

嫉妬するほど美しく

残酷だけれど

強烈に命を感じます

ゼラニウムがだいすき

けれどゼラニウムにはなれないから

花の散り際が美しいほど

その生き方に

嫉妬してしまいます