2022年2月24日に「プーチンの戦争」が開始されてから既に2年が越えた。その間に日本の内外を取り巻く情勢はどのような変化を示しただろうか。

 

1 国際情勢の変化

国際情勢は急速に流動化してきた。既に数年間にわたって続いてきた「冷戦終了後の国際新秩序」の模索という過程は、一挙に混迷状態に陥った。民主主義グループと権威主義グループの対立は、基本的には続いているものの、それぞれのグループ内での利害関係が複雑化してきた。そこにいわゆるグローバルサウスの台頭という新たなうねりが加わったが、第3極と呼べるほどのまとまりはない。

 

ガザに拠点を置くハマスの軍事部門がイスラエルを奇襲攻撃したことにより、中東情勢は不安定化し、周辺地域への波及も恐れられている。こうした情勢を奇禍とみているのか、中国の影響力拡大の動きは、世界の多くの地域で顕著になっている。アジア太平洋地域の平和と安定に対する懸念も高まってきている。

 

世界経済の状況も余り良くない。イスラエル・ハマス軍事衝突が直接の原因にはならないとしても、油価の上昇が将来国際的なインフレにつながっていく恐れも排除はできない。アフリカ大陸、南米大陸でも、各国国内政治の不安定化の種は尽きず、そこに中国やロシアなどが橋頭保を作ったり、地歩を固めたりしようとする動きも看過できない。

 

今年の秋に行われるアメリカの大統領選挙の結果、国際秩序は更に乱れていく可能性もある。

 

流動化している国際情勢がいつ、どのような収まりを見せるのか、見通しをつけることは困難だが、第3次世界戦争の危機が迫ってきているようには見えない。歴史の重要性を説く識者の中には、第2次世界大戦前夜の状況に似ているとして警鐘を鳴らす人もいるが、現状変更を厭わない幾つかの権威主義的な国が民主主義諸国に対して新たな戦争を挑発しているようにも見えない。

 

例えば、習近平の中国と満州事変以降の帝国日本との間の類似性を求める議論がある。この議論は、習近平政権が独裁政治体制を敷いているのに対して、当時の帝国日本は独裁体制と呼べるほど責任者の姿が明確になっていなかった歴史的事実を無視している。また、ロシアはジョージアとウクライナに対して侵略戦争を仕掛けたが、今後民主主諸国側の警戒心が大きい限り、モルドヴァやバルト3国などに直ちに武力攻撃を行うと予想することには無理がある。

 

このように、歴史の教訓は重要であるが、教訓はあくまでも教訓であって、近未来に対する正しい予想を可能にするものではない。中国やロシアの現状変更の試みを抑止する方法は、多々あり、不必要に危機感を募らせることは、却って危機の現実かを招きかねない。あくまでも慎重な情勢分析が重要だ。

 

国際情勢の流動化が、日本にどのような影響を与える可能性があるかについて、私たち一般国民はよくフォローしていく必要がある。同時に、日本として国際情勢の安定化に向けて何ができるかについて、真剣に考えていく必要がある。

2 日本の国内情勢

岸田文雄内閣は多くの国内的な課題に直面している。課題解決への取り組み方について、多くの国民は不満である。政治不信も増大している。一方、マイノリティー対策など、表面的には、良い方向での変化も現れているが、ダイナミズムに欠けている。日本は相変わらず、停滞、低迷を続けているように見える。日本は、国際情勢の流動化に対して過度の危機意識を持ちすぎる危険性と、国内情勢に危機意識を持たなすぎる危険性の二面性を抱えている。

 

それでは、私たち一般国民はどうすればよいのか?

 

国際情勢と国内情勢の変化に目を配りつつ、日本の公的部門の動きを批判的に見ていく姿勢が重要である。政治家や役人たちに誤魔化されない目を養うことが必要だ。

 

こうした観点から、国際問題と国内問題の双方において、日本として取るべき方向性について、次号から取り上げていきたい。(20240308)