政治とカネの問題を巡る報道が、連日メディアを賑わせている。国会論戦も始まった。今年の通常国会の会期中に、どの程度政治改革の具体的な方向性が見えてくるかに関心がある。
一方、国民の間には、「またか」という既視感が早くも拡大していることが心配だ。この「既視感」には、次の補欠選挙、総選挙、参院選挙などが行われる際には、相変わらず投票率が低く、低空飛行の自民党が政権に残る可能性が大、との予測が含まれる。「大山鳴動して鼠一匹」の世界が続くとの諦めの気持ちが拡大する恐れがある。
政治資金規正法の改正を始め、政治改革は一朝一夕にはできない。国民には、長期にわたって政治家に対し改革を進めるよう圧力を与え続ける必要がある。しかし、日本の風土からして、それは可能なのか?
筆者は外務省現役時代、2年間那覇の外務省沖縄事務所に勤務したことがある。外務省勤務の経験などを基にして、これまで2020年に「普天間飛行場、どう取り戻す?」及び「2022年の沖縄」の2冊を上梓し、その中で沖縄県の民意と国家利益の関係を取り上げた経緯がある。その際の結論の一つは、民意は移ろいやすいことだ。
長年政権を握っている自民党の議員たちは、この点をよく承知している。嵐が通り過ぎるのをじっと待つ忍耐力を備えている。「すれ違い答弁」、「暖簾に腕押し」、「平行線」などは与党の得意とするところと言えるだろう。自民党政府と対等の立場に立って議論をしていくことは、日本の民主主義を守る上で、非常に重要であるが、野党にその力があるのか、マスコミにその能力があるのか、甚だ心許ない。
私たち国民は、自己研鑽が必要だ。持続的可能性の高い民主主義のためには、一般国民が「井戸端会議」で政治問題に花を咲かすことが重要だ。数人集まってスマホ・ゲームをするのであれば、その一部の時間を割いて「政治って一体何だ?」と話し合って欲しい。そして、選挙の際には、投票所に向かうことに行って欲しい。
かつて日本でもベトナム反戦運動、安保反対運動、大学紛争など、若者たちのエネルギーが政治問題に向けられたことがあった。例え議員たちの活動に大きな希望が持てないとしても、若い人たちが協力し合って、政治改革を訴えるならば、政治も動く。今がそのチャンスだ。「政治とカネ」の問題を、「老トル」に任せっぱなしにしてはならない。若い人たちが、政治家の尻を叩いて欲しい。「国民の民意」を活かすも殺すも、あなたたち次第だ。