玉城デニー沖縄県知事は、「地方外交」の展開を提唱している。同知事の意図するところは必ずしも明確ではないが、沖縄県として台湾、中国、ASEAN諸国など東アジアや東南アジアとの間で「文化交流」を進めるということであれば、その意義は大きい。諸手をあげて賛意を表明したい。

 

文化というのは不思議なもので、過去の日本その他諸国の歴史的経緯を見ても、平時と有事の間では、その役割が全く変わってしまう。文化は、平時には諸国民の相互理解を促進し、武力衝突や戦争の勃発を抑止することに貢献するが、有事或いは戦時では、国策遂行の先兵として使われる。

 

実際ロシアの対ウクライナ侵略では、ロシア軍によるウクライナの文化遺産や文化施設に対するミサイル攻撃が頻繁に行われている。その一方、ウクライナ国民はロシア文化を否定する動きを強めている。キエフ・ルーシの樹立以来のロシア人とウクライナ人との文化的な結びつきを思い起こすならば、文化の相互拒否の実状は悲惨としか言いようがない。

 

片やインド洋から太平洋をまたがる広範な地域では、中国は、挑発的とも言えるほど軍事的、政治的、経済的な活動を強めている。日米韓など関係諸国は、こうした中国の動きを警戒している。このようなときに、沖縄県が独自に、或いは政府とともに、中国や台湾などで琉球文化の紹介事業を展開していくことは、沖縄県民の平和に対する姿勢を理解して貰う上で、非常に重要だ。これは日本の平和姿勢を理解して貰うことにも通じる。

 

沖縄県が「地域外交」を展開するに当たっては、玉城知事には、かつて琉球王国が関係を深めていたアジア諸国との間で、「文化交流」を強化していただきたい。沖縄の振興計画においても、琉球文化事業の展開は「選択と集中」の対象とすべきだ。(了)