FF9に登場する、優しく勇敢な名前だ。
ビビは見事に名前負けして、内弁慶で我儘な犬に育った。
俺の部屋の隣、姉の部屋で寝起きをしているので、起きると扉をガリガリ引っ掻く。
俺の方が早く起きるので、開けてやると一目散にリビング平気、父親を引っ掻き家の前の公園へオシッコに連れて行かせる。
公園から帰って来て、既に扉の閉まっている姉の部屋の前や、両親の寝室の前で伏せる。
洗面所で身支度を整えた俺が、廊下を渡り玄関へ行くには、ビビの脇を通らなければならなかった。
伏せてはいるが寝ているわけではない我が家の忠犬は、寝ている両親を護ろうとして接近するものに牙を剥く。
吠えるときはこちらの顔を見ないで、爪先を見て吠える。目は血走っている。
何度か噛まれたことがある、足の親指の爪を貫き穴を開けられたこともある。
何度も吠えられた。
おそらく、我が家に来て物心つく直前に、俺がアキレス腱を切って入院していたからだ。
物心ついた後に退院した俺は、
奴からすれば「新入り」だったのだろう。
そんな根性の曲がっているビビだったが、
誰かが出掛けようとしたり、独りでいることに気づいたりすると、それはもう鳴き叫び、よく吠えた。
ドッグフードはジャーキーや茹でた肉を混ぜないと絶対食べないし、人の食べるものは奪おうとする。
本当に我儘な犬だった。
口に腫瘍ができて、上顎に穴が空いて、歯が抜けて、膿んで溶けた骨肉で呼吸がし難くなった。
ポッカリと穴が空いて、そこから呼吸ができるようになったけど、既に体重は元の半分にも満たなくなっていた。
病院で打つ点滴がほぼ唯一の栄養補給、水分補給だった。
昨日の明け方、すっかり寝たきりになってた老犬ビビは沢山鳴いた。
みんな起こされて撫でてやり、みんな寝不足になった。
昨日の昼に病院に行って、もういつ死んでもおかしくないと言われた。
昨日の夜は寝たまま、瞬きしか出来なくなっていた。みんなで起きて撫でたり声をかけた。もうあまり聞こえてないようだった。二度吐いた。内容物はない。
今日の昼前。
11:05分頃、一度咳をしてそのまま息を引き取った。
お疲れ様。
もう痛くもないし、苦しくもない。
明日、火葬場へみんなで見送ってくる。
お疲れ様。
お前に噛まれたときはすごい痛かったぞ。
馬鹿犬め。
いつか会いに行ったときは愛想よくしろよな。
