大ベストセラーとなった岩波新書の‘東京大空襲’は小学生のとき以来何回読んだことだろう。少なくとも、10代の頃には‘ビートルズ海賊盤事典’とともにつねに手の届くところにあった。その本にも何枚ものショッキングな写真が掲載されていたが、本著はその写真をメインにした著。
写真版とはいいつつ、文章に割かれているページのほうが多い。‘東京空襲を記録する会’の設立以来、運営の中心的人物である早乙女氏だからこそ集められた写真、証言の数々。早乙女氏自身が逃げ惑った3月10日の空襲だけでなく、42年のドゥリットル空襲や伊豆諸島、八王子、立川の空襲被害までとりあげ、メインは3月10日ではあるが東京の空襲被害全体を俯瞰する写真と内容。
救助に奔走する人、逃げ惑う人、消火活動にかけつける人、亡くなっている人、それぞれが俺たちと変わらない。多くの写真に写っている人々の姿は自分、親、兄弟、子どもそのもの。決して昔の話ではなく、将来に起こること。写真を見ていると、すべてが現実のこととして重く覆いかぶさってくる。
昭和62年
新潮文庫
早乙女勝元 編著
購入価格 : \108