【古者、民に三疾有り】以前のコーチは、教えること、厳しく叱ること、短所を直すことに力を入れていたけど、本来のコーチは、自分で学ぶこと、認めること、長所を伸ばすことに力を入れる。
(陽貨第十七)
子曰わく、古者(いにしえ)、民(たみ)に三疾(さんしつ)有(あ)り。今や或(あるい)は是(こ)れ亡(な)きなり。古の狂や肆(し)、今の狂や蕩(とう)。古の衿(きょう)や廉(れんさ)、今の衿や忿戻(ふんれい)。古の愚や直(ちょく)、今の愚や詐(さ)のみ。
【訳】
先師が言われた。
「昔は、民に憂うべき三つのことがあった が、今はどうやらそれさえなくなった。昔の狂(志が大きくて足元を見ないこと)は肆(大まかでこせこせしないこと)であったが、今の狂は蕩(気まま放題すること)。 昔の衿(自分を固く守ること)は廉(節目を正して潔いこと)であったが、今の衿は念戻(怒って争うこと)。昔の愚(おろかなこと)は直であったが、今の愚は詐(ごまかし)ばかりだ」
*物事には長短がある。従って長所を伸ばし短所を矯(た)めることによって正常になるのである。西洋に発祥した自由と平等の思想は人類進歩の上に大きく寄与するところがあった。戦後日本滔々(とうとう)として流入してきたが、いつしか自由主義は勝手主義に、平等主義は無差別主義となり、現代の人倫頽廃(たいはい)に拍車を掛けつつあるのは、 識者の等しく憂うるところである。