パンタシアから、オヴリヴィアの街に着くと、そこには見覚えのある後ろ姿があった。
  自分より低い背丈と、キラキラの宝石が細工されているにも関わらず、シンプルで動きやすそうな服。そして何よりも、彼自身がコンプレックスにしてあるであろう、黄土色の天然パーマの髪を見て、リックはそれが誰なのかすぐに理解した。

「モニカさん、こんにちは。」

  天然パーマを指先で弄りながら歩くモニカの背中に挨拶をすると、突然声を掛けられた彼は驚きながらこちらを振り向いた。

「び、びっくりした~!って、リックさん!あっ、えっと、この前はご飯ありがとう!」
 
  思い出したようにそう言うと、深々と頭を下げる彼に、リックは「いいんですよ。僕から誘ったんですから、お気になさらず。」と返した。

「それよりモニカさん、今日はどうしてオヴリヴィアに?」

  そう、リックは後ろ姿を目撃した時から、その事が気になっていたのだ。

「ああ、今日はちょっとハクヤのとこに用事があって!オレってキラキラしてる物とか好きで…オヴリヴィア周辺だと、たまに珍しい物が採れるみたいでさ、それで何度かハクヤとは会ったりしてたんだ!──っても、店まで足を運んだのは初めてなんだけどな!今回も、珍しいのが採れたからって見せてもらいに来たんだ!これはそのついでに買ったやつ!」

  そう言うと、先程からずっと左手で掴んでいる袋を、嬉しそうに胸の辺りまで掲げてみせた。

  彼の言う『ハクヤ』とは、オヴリヴィアで鍛冶屋を営んでいる男性の一人である。ハクヤは装飾品を製作しているので、鉱石類やアクセサリーの素材にも詳しいのだろう。
  それにしても、モニカとハクヤが知人であった事には驚きだった。


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「リックさんは、買い物…の帰り?」

  先程スヴニールで買ってきた、ケーキの入った可愛らしい箱を見て、モニカはそう訊いた。

「まあ、そんなところです。ティナの機嫌を損ねてしまったので、好物でもと思いまして。」

  「今回は、僕が悪いんですけどね。」と苦笑しながら答えるリックを見て、あの娘のお兄さんなんて大変だろうなあ、とモニカは内心思っていた。

「ティナの好物ってなんなんだ?」

  箱の形状からして、恐らく洋菓子ではあると思うが、あの無愛想で暴力的な彼女の好む菓子など、モニカには到底予想が出来なかった。

「ふふ、チョコレートケーキですよ。ティナはこれを前にすると、まるで子供のように笑うんです。」

  先程とは打って変わって、楽しそうな笑みでリックはそう語った。クリスティーナのその表情を頭に浮かべながら話していたのだ。
  しかし、兄妹である彼には容易く出来る想像が、モニカには一切合切出来なかったのである。確かに見た目こそ子供のようであるが──こんな事を言ったらまた本人に睨まれてしまう──、子供のように笑うとなると、モニカは、初めて彼女と会った時のあの態度からは、それを頭に思い描くのが難しい。
  モニカがその事で頭を捻らせていると、リックから一つ提案をされた。

「もし、この後のお時間大丈夫でしたら、またご一緒に、今度はティータイムでもどうでしょう?」
「ええっ!?そ、そんなの今度こそ本当に悪いよ!!」

  モニカは頭を横にブンブンと振り、遠慮を全開に表した。しかし、彼のそんな行動も役に立たず、半ば強引に、彼らの居住地へと向かう事になったのであった。