☆ハーレム日記リバイバル☆ 第111号 ミュージシャンが集うSugar Bar | NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

☆ハーレム日記リバイバル☆ 第111号 ミュージシャンが集うSugar Bar

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                                     第百十一号 07/28/2001
                                     Harlem日記
            
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*****ミュージシャンが集うSugar Bar*****

「ジェファイトというミュージシャンが来るから一緒に食事に行きましょう!」

と、日本から旅行に来ているNちゃんから誘われた。ジェファイトは彼女の上
司の友人の友人。ってことは、何もつながりないかも?

「ジェファイトって何のミュージシャン?」と聞けども、日本から来たばかりのNちゃんは会話がままならないらしく「さぁー?」と首を傾けるだけだった。

「まっ、いいかっ。ミュージシャンなんて滅多にお目にかかれないから、楽しみ!」と私のタダ飯軍団パワーがムクムクと膨れ上がったのである。

待ち合わせのために電話の声を聞くと、無愛想な男。

「Nちゃん、なんだか不細工な兄ちゃんだったらどうする?タダ飯でも辛いものがあるね。」と私。
「ごめんねぇー。もしそうだったら。」と低姿勢なNちゃん。

ジェファイトはダウンタウンに住んでるのにハーレムまでタクシーで迎えに来てくれた。「なっ、なんだか麦わら帽かぶった男が1階にいるよ。」と、それが紛れもなくジェファイトだった。

ラメの入った柄シャツに短パンな装いはカリビアン丸出し。

話を始めると、物静かで、なかなか雰囲気のいい男。

「ジェファイトはミュージシャンとしては有名なの?」と露骨に私が問う。
「まぁまぁ、有名だね。」
「食べたいものある?」とジェファイト。

「日本食。」タダ飯軍団一号の私は速攻で答える。
「・・・・。」沈黙のジェファイト。その横でNちゃんは黙ったままだった。

「僕の馴染みのレストランでいい?ヘイシアン(ハイチ料理)だけど。」
「なんだジェファイトってヘイシアン(ハイチ人)なの?」
「そうだよ。」

それにしても、101丁目のレストランへ行くのに地下鉄じゃなくてタクシーだなんて、リッチマンじゃないかぁー。高級レストランへ行くのかなぁー。と、にわかに期待する。でも101丁目じゃぁーどう考えてもゲットーな地域だよな。

KRIK KRAK RESTAURANTは、案の定ゲットーな地域にあった。周りはラテン
系の兄さんたちがウロつき。茶色いプロジェクト<低所得者層のためのアパート>なアパートに隣接。その上、隣は脂ぎったチャイニーズのレストラン。

ブラックのウエイトレス姉さんが、可愛いレモンの絵のついたランチョンマットをテーブルに敷いてくれる。そんな気休めなんて要らないぜぇ〜。家の隣のジャマイカンレストランと同じレベルじゃないかリッチなミュージシャンよ。

そして、調理されたタイが白い皿に盛られてきた。汁っぽい蒸し焼きみたいなもの。炒めたオニオンスライスが、ちょっぴり乗っかってる。

 

「ジェファイト、箸が欲しい。」と私が小生意気なことを言っても、当然のようにジェファイトは隣のチャイニーズレストランに箸を取りにいってくれた。

用心深くタイを箸でつつく。骨をよけて一片を口に入れる。これが意外に、さっぱり味で美味い!「美味いじゃないか!」と大感激のNちゃんと私。
 

「なんだか日本の煮付けに近い味だよね。」と私が言うと、
「ずーっと、ニューヨークに来てからギットリしたものばかり食べてたから、さっぱり味は久しぶり。とっても食べやすい。」とNちゃんも嬉しそう。

サイドでは白いパサパサした御飯に、グリーン豆のスープをトロリとかけて食べる。これもまた乙な味。このレストランはヘイシアンコミュニティー。男どもがハイチの新聞を囲んで会話を始めた。ジェファイトも常連のようで、会話に入る。

「ニューヨークからハイチに戻った男が、ガン・ショット事件を起こして捕まったらしい。」とジェファイトの知人だったのか?大騒ぎしていた。

話が一段落すると、オヤジが私たちに話しかけてきた。「フレンチは喋れるか?」と問うので、「ジュースゥィージャポネ<私は日本人です>」私は、つたないフランス語を披露した。

 

そういえば、大学で学んだ第二外国語だった中国語も「ウォーシーシュエション<私は学生です>」しか言えない。

食事が終わると、Nちゃんが「シュガーバーに連れて行って欲しい!」とジェ
ファイトに懇願。Nちゃんによると、そこには有名芸能人が姿を現すことも多いという。

再びタクシーに乗り込む。

「ジェファイトは日本にも行ったりするって聞いたけど、何の音楽をやってる
の?」と私。

「ダンスミュージックがほとんどだね。」
「ダンスっていってもさー色々あるじゃない?」
「そうだねーワールドミュージックでもないし、ジャズでもないし・・・。」

「今、タカハシマリコのプロデュースしてるんだ。あと二週間くらいでそれが終わる。」

「へぇー凄いね。日本では有名な歌手だよ。私もカラオケで歌うもん。」私のカラオケ18番なんて興味ないかジェファイトよ。

「トシも知ってる。」
「トシ?でた〜久保田利伸さんの事だね。」

そういえば、前に久保田さんに会わせてくれるって、「トシ」なんて、なれなれしく呼んで勝手に友達ぶってるミーハーなアメリカンがいて、

「こんな見ず知らずの私のためにソーセージ焼いてくれるわけでもないし(彼は昔、ソーセージのCMでNY街角にてソーセージを焼いてた)、一曲歌ってくれるはずもないから、会わなくていい。」と断ったおぼえがある。

しかしジェファイトは、そこまでミーハーな感じでなく「よくは知らないけどね。」と、控え目に言った。

ジェファイトは、ミュージシャンといえども派手な色好みタイプでなく、本物の音楽を作ることに情熱を注ぐ芸術家タイプなのだ。

シュガーバーは、アフリカっぽいディスプレイのブラックばかりの客層なバーだった。1階はコ洒落たレストランで、2階は狭いバーになってて、踊ってる人がいる。

 

ジェファイトいわく「Ashford & Simpsonがここのオーナーなんだ。」「え?
誰?」と私がピンと来ないでいるとジェファイトが歌ってくれた。

♪ハッ・ハッ・ハッ・ハッ・ハッ・ハッ・ハッ・ハッ♪

「知ってるぅー男女のデュオでやってた。」
「ダイアナ・ロスとかにも曲を書いてあげてるビッグなミュージシャンだよ。オーナーが後から来るってさ。」とジェファイト。
 

ロングアイランドアイスティーをがぶ飲みしてると、アシュフォードが、やって来た。

軽く握手を交わす。年は感じるが、肩書きがビッグなミュージシャンだけあって、カッコいい!長い髪の毛を無造作に束ねて、テロテロしたベージュでシルクの高そうな洋服をさり気なく着こなしている。とても気さくな人で「ようこそ!」と大歓迎してくれた。

それからしばらく私たちはアルコールを満喫。もとい音楽を満喫。オーナーのセンスからか、DJもいけてる。最新のヒップホップからオールドスクールまでミックスして流してるけど違和感がない。

 

この店では日によって生バンドも入るそうだ。ジェファイトも自分を売り込んでいた。

それにしても、さっきから周りで踊ってるのは女ばかり。それもそのはずブラックの姉さんたちは皆レズビアン。彼女らの一人のお誕生日会。

 

バーカウンター横で、背の高いイスに腰掛けてる赤いドレスの女性の足を抱えあげてるのは、白いセーターの女性。ちょっと太めな女性同士がカップルでダンスしまくっている。

隣に座っていたカントリー調な白いシャツを着たイカツイ風貌な姉さんに「踊
る?」と聞かれ、私も一曲踊った。

 

スケベな男と踊ればベタベタとトリモチのようにくっついてくるが、彼女は品良く距離を保って踊る。

そろそろ12時が近づきシンデレラな私たちが帰る準備を進めていると、店の関係者でBoiという黒いスーツを着た華奢だけどモデルっぽい男前がやってきた。


「ようこそ!」と彼は頬にキスを求める。と、彼も女性だった。ジェファイトとは長いつき合いらしい。

ジェファイトは、おもむろにロングアイランドアイスティーを私に半分くれる。


「酔っ払うまで酒は飲まないんだ。」ジェファイトはクールに言った。酔っ払ってヘベレケになるのが大好きな私とは大違い。
 

「えぇーっ!ジェファイトって本当に真面目なミュージシャンなのね。ウィード(マリファナ)もやらないの?」
 

「家は子供の頃から、母親の敬虔な信仰のもとに育てられてるから、宗教上やらないんだ。」と、しっかりした口調で答えた。

いやはや、ジャマイカンのアーティストにしろ、ヒップホップのアーティストにしろ、いつでもウィードの匂いをプンプンさせてるのに、彼は稀な存在。思わず「女性関係は?」と聞いてしまった。そこのところは、お茶を濁されたが・・・。

ジェファイトは11月にツアーで日本に行くらしい。前回も四国の松山まで行っ
たくらいだから、日本各地を回る。ジェファイトのベースを皆さんに是非、日本で聞いてもらいたい。

 

 

 

 

久保田利伸さんのファンへ
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私は、つよがってるだけで、本当はとても久保田さんに、NYでお会いしたかったです。私も久保田さんの音楽は好きです。

<閉店>KRIK KRAK RESTAURANT
844 Amsterdam Ave <bet 101-102St>
Phone:212-222-3100

Sugar Bar
254 W. 72nd St.<bet B'way-8Ave>
New York, NY 10023-2821
Phone:212-579-0222