☆ハーレム日記リバイバル☆ 第109号 d-Con Mouse TrapとはIT用語じゃないぜ
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第百九号 07/14/2001
Harlem日記
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*****d-Con Mouse Trapとはコンピューター用語じゃないぜ*****
ギラギラとまぶしい太陽が照りつける暑い日、家の中で悪臭が発生した。それは、魚をビニール袋に入れたまま腐らせたような、もの凄い匂いだ。私は、あいにく風邪をひいていたので、匂いに気づかなかった。
レイ(夫)が帰宅すると、
「なんだぁーこの匂いはー。どこかで嗅いだことがあるぞ。」とドーベルマンの警察犬のようにクンクンと部屋中を嗅ぎまわった。それにつられて私も嗅ぐ。鼻づまりの小さな鼻腔に感じる鋭い激臭。
「うっ!生魚の汁が床に染み込んだのかなー?」とレイに問う。
「いや、ちがう!これはネズミの死んでる匂いだ。以前、実家でネズミが死んでた時に、これと同じ匂いがしたんだ。」と興奮気味のレイ。
「そういえばネズミ捕りを仕掛けたよな?」
「どこに?」
「ガムテープのようなベタベタに、くっついてしまうタイプと、もう一つネズミが入ると動けないようにパッチンと挟んでしまうタイプのワナを仕掛けたんだ。」
「えぇーっ!ベタベタの方は知ってたけど、パッチンの方は知らなかった。」
今時パッチンなんて旧式な、やっぱりアメリカって後れてるぅーと心の中で、せせら笑っていた私。トムとジェリーに登場していた、小さなチーズのカケラが置いてる『カマボコ板&バネ』みたいなのを想像していたからだ。
レイは暖房具の下にあるプラスティックの黒い容器d-Con Mouse Trapを見つけ出した。
d-Con Mouse Trapは思いのほかモダンなつくり。楕円を半分に割ったような形で中が空洞になっている。横にある金具のレバーを下まで下げるとセット完了。
「ほらみろ!ここにあるぞー」
「ぎゃーっ、本当だぁー。」
「ネズミの尻尾が見えるぞー。」
「ぎゃーっ、助けてー。」と、中でネズミは死んでいたらしく二重のポリ袋でグルグル巻きにして屋外のゴミ置場へ捨てられた。
それからネズミのいなくなった数日間、レイは、食べ残した食事を、
「ネズ公のために残しておこう。」などと、どうでもいい冗談にネズミの名が飛び交うほどの余裕をみせた。
そして本日、私がノートブックのパソコンをパチパチと入力していると、ヨロヨロと私の目の前を横切ったのはベージュ色したネズ公。ハッと息を呑んだ私。
ネズ公の整った毛並みまで見えるほどの至近距離。
奴はリビングからベッドルームへと、開いてるドアの下をくぐって行った。
すぐにレイに電話。
「ネズ公発見!ネズ公発見!」
「なにぃーネズ公めぇーもう一匹いたのかぁー。」と悲鳴に近い怒りの声をあげる。
「わかった、仕事の帰りにワナを買って帰るから。」と鼻息も荒く電話を切った。
そういえば以前に大家さんから貰った、ネズミキラーの薬があったはずだ。私はクローゼットから薬を見つけ出した。その名もReal-Kill Rat&Mouse Killer。
殺せ!ネズミをマウスを殺してしまえ!といった意味合いの心強い味方。
パッケージには黒いネズミが緑の薬剤に近づいてる絵が描かれている。
うーむ、それにしてもまずそうな色合い。バブの入浴剤を一回り小さくして四角くしたような濃い緑色。こんなものにネズミが騙されるものか。と、思いながらも12個入りのそれを全て部屋にばら撒いた。
そして数分後、心を落ち着けて再びパソコンに向かう。と、ネズ公がベッドルームからヨロヨロと歩き出してきた。睡眠時間が終わったのかいルームメートよ?
いやー待て!ネズ公だぁ〜〜〜。
心の中では『殺せ』と叫んでいる。ゴキブリまでは殺せるけど、いくらなんでも小動物を殺すなんて、とても勇気がない。
でもネズ公の横切る角には、先ほど仕掛けた薬剤が。フッフッフーッこれで、お前さんも一巻の終わりだね。と私は、ほくそ笑んだ。
だがネズ公はチラリと立ち止まろうともせず、デンジャーゾーンを知り尽くすかのように薬剤から2センチほどのキレイな曲線を描いて通り抜けた。その数秒間ネズ公の歩く姿を凝視していた私。
ニューヨーカーなネズミだけあって、日本のグレーなネズミと違ったライトベージュ。
あぁーこんな時に猫がいてくれたらと心より願う。今夜はネズミ退治に燃える
ネズミキラーのレイがネズミ捕獲大作戦を開始するのだ。私は、その戦の前に一息お昼寝。
日本の皆さん、驚くことなかれ!
ニューヨークの地下鉄の線路では、いつでもネズミを観察できるし、以前はダウンタウンでもネズミが大発生してニュースになっていた。
道路工事の穴から下水道を覗いたら、まさにホラー映画で登場したようなネズミの大群を見てしまった人もいる。
ニューヨークという街に憧れて集まる人間同様、ネズミも憧れて集まってるのかなぁー。
※今は、コロナ禍あたりから、レストランが道路に小屋を建ててまで営業しているため、その小屋の下にネズミが大繁殖しているらしい。ゴミ収集もままならないので、ネズミがゴミ袋の上を飛び跳ねてることもある。
夜のNYシティーは、ネズミだらけで、めっちゃキモいっす。