☆ハーレム日記リバイバル☆ 第107-1号 ハーレムのポエムカフェ<閉店Sugar Shack> | NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

☆ハーレム日記リバイバル☆ 第107-1号 ハーレムのポエムカフェ<閉店Sugar Shack>

■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■
                 第百七号 06/30/2001
                                         Harlem日記
            
■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■

*****ハーレムのポエムカフェ<The Sugar Shack Cafe>*****

ポエムカフェその名もシュガーシャック。おぉーカッコイイ!ネーミングからして、ハーレムしてる。シュガーシャックは、かなりハーレムでも奥深い138丁目にある。

素人さんが無防備に行ったりすれば抜け出せないかもしれない。などとちょっと脅しを入れてみたが、それほどヤバイ場所ではない。

来ている客は、ブレードヘア<編み込みヘアスタイル>や、頭にサイケな模様のターバンを巻いたアフリカンなスタイルの良いお姉さんだ。兄さんたちはヒップホップ系も多い。

店内は薄暗く、おっしゃれぇーな空間。こんなゲットーなエリアにソーホーにある業界人が集まるタイプのカフェといった雰囲気。だけど、何故だかキッチンはオープンキッチン。

 

オープンキッチンといえば聞こえはいいが、わし等の座ってる横にアクリルの透明の壁を仕切ってるだけな板場。

ブラックの小さな兄ちゃんが板さんらしくフライドチキンやらフレンチフライといった揚げ物、揚げ物、また揚げ物Oh No!油くさいよー。髪の毛の芯まで油の臭いがしみついてくるほどだ。

ポエムカフェというくらいだから、オリジナルのポエムを来ている客が朗読する。

コンガとベースにバイオリンというカルテットが演奏する中、スタンドマイクを前にしてブラックの兄さんが朗読を始めた。

トコトン、トコトン、トントコトコトン♪と、兄さんの詩はカルテットによる軽快なリズムに乗ってラップみたいになっていく。

ポエムといっても、うぅーむ、「ハイネ詩集」のような美しい恋の詩でもなければ、私を含めドロドロな恋愛経験を積んできた者が聞けば、手が拳になって眉間に皺を寄せてしまうという爽やかな純愛もの、「サラダ記念日」な短歌調でもなく、スラングがバリバリなポエム。

それでも韻を踏んでいる。ビッチ・ファック・ファッキンなどといった言葉もテンポが良くシブイ。ポエムと称されるだけあって下品な言葉も下品に感じないのであった。

素人なせいで、中には「ひっこめ下手くそー」とブーイングを浴びせたい奴も登場するが、皆さん静かに聞いている。なんて上品な客なんだろう。普通のブラックのクラブだったら酒をあおるように飲みまくり喧嘩が始まることだってある。

バウンサー<セキュリティーガード>もムキムキの兄ちゃんが睨みをきかせてるんだけど、ここでは、ちょっと太めな若い姉ちゃんが仕切っている。

締めくくり『取り』をつとめたのは、繊細な雰囲気の兄さんだった。なんとオリジナルのCDまで売っている彼。バックの音楽は尺八のオバケみたいな笛を吹いてくれとカルテットのミュージシャンである爺さんにリクエスト。

ボォービョーォーーーと大きな船の汽笛音のような深い響きが轟くと、静かに兄さんが朗読を始める。美しい!彼の清んだ声は流れるような旋律を描く。自然や宇宙をテーマにして哲学か宗教入ってるっぽい。近頃のブラックの兄さんはオタク系も存在するんだと関心する。

そういえば、日本にいるとブラックの人々と接するチャンスも少ないわけで、一生会わない人もいるだろう。だからブラックといえば、ドラッグ・セックス・暴力といったイメージがメディアから入ってくるばかり。

ブラックの中にはコンピューターオタクやら、宗教にはまり、女性とは『結婚する相手』とだけしかデートできないなんて人も存在する。

 

ラップやヒップホップでヤクザ気取りはもう古い。これからのブラックカルチャーはポエムだという気がした。



<閉店>The Sugar Shack Cafe
2611 F.D.Blvd <W139St & 8Ave>
Phone : 212-491-4422