☆ハーレム日記リバイバル☆ 第93-1号 さすらいのバーカウンター編 第一弾 ハーレムの裏情報 | NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

☆ハーレム日記リバイバル☆ 第93-1号 さすらいのバーカウンター編 第一弾 ハーレムの裏情報

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          第九十三号 03/31/2001
              Harlem日記
           
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〜☆〜☆〜☆〜さすらいのバーカウンター編 第一弾〜☆〜☆〜☆〜

*****ハーレムの裏情報*****

久々にレイ(夫)と喧嘩をしてしまい、気分転換にレノックス・ラウンジへ一杯飲みに行った。

125丁目を一人歩いていると、途中で赤いギラギラした反射鏡みたいなものが付いた大きなポラロイドカメラ調な古めかしいやつを首からぶら下げているブラックのオヤジに遭遇した。

 

「君を撮影させてくれ。」と言ったが、「金とるつもりでしょ。」と無視してラウンジに入った。

日曜日の9時過ぎだというのにカウンターは満席。ラム&コークをオーダーして立ったまま飲んでいた。奥の部屋ではジャズシンガーが歌ってる。あれ?日本の女の子だ。黒いロングヘアーに黒いドレス、壁に貼られたチラシにも日本名が。

さっきのカメラをぶら下げたオヤジが私の隣にやってきた。大きな身体をユサユサさせて、大きなバッグも一緒だ。


「あなたはフォトグラファーなの?どのくらいやってるの?」とオヤジに聞くと、
 

「プロで20年以上はやっているよ。この辺でオイラのことを知らない奴はいない。」
 

「今日は、日本のジャズシンガーが歌ってるんだね。」
「日本人客も最近とっても多いよ。日本から来たモデルやタレントもオイラが撮影したりするんだ。」

「私、この近所に住んでるの。」
「そうかぁー一人でこんな所にいたら、亭主にカンフーで技かけられるんじゃないのかい?」
 

「ジャマイカンなの。家の亭主はブラックよ。」
「そうかーてっきり日本人だと思っていたよ。オイラは一人暮らしなんだ。145丁目のレノックス。5つも部屋があるところに一人で住んでる。家賃は400ドル。」


「ひゃーっ、安い。」
「最高にイカした部屋なんだぜ。遊びにおいでよ。君は太目で僕のタイプだ。」


太目ってのは、ちょっとムカ〜っときたが、どうやら誉め言葉らしい。

「ところで中に入ってジャズ聞くと、いくらなの?」と、奥のジャズをやってる部屋に目をやる。入口のチケットを切るヨボヨボ爺さんにオヤジが「いくらチャージするんだっけ?」と問う。
 

「10ドルだよ。」
「10ドルもするんだ。だったら酒が2杯飲めちゃうから・・・。」と、この日はジャズを聴く心境でなかったので、オヤジと話しこんでいた。

するとショート・ドレッドの男前の兄ちゃんが、わけありな表情でオヤジの傍にやってきた。「パフィー<パフ・ダディーをブラックの人たちは、こう呼ぶ。>は、


やっぱりxxxxxにハメられたんだ。」と妙なことをオヤジに口走る。
「そうかー。」とオヤジもマジな顔つきで頷いている。

昨年タイムズスクエアのクラブでシューティングがあり、車で帰路へついたパフィーは警察に止められ、拳銃を所持していたことによって、この頃は裁判が続いていた。

 

結局無罪になったが、ハーレムの住人は彼の潔白を信じ無罪になることを願っていたようだ。

そういえばOJシンプソンの時も、ハメられたんだという噂がブラックの人々の一部で起こったことがある。まったくぅ〜本人にハメられたのかどうか真実を聞いてみたいものだ。

 

裏の世界では何が起こってるのか想像がつかないところが、恐ろしい。

裏の世界を知っているといえば、私は同姓なことから溝口敦というジャーナリストの密かなファン。彼の著書「チャイナマフィア」によると日本には、中国からの密航を仕切る人がいて、彼らを蛇頭と称するそうだ。

 

蛇頭は不正入国者から法外な渡航費をせしめる。

私は、てっきり中国<主に福建省>の人々が貧しいから日本や欧米に不正入国するのかと思っていたが、ジャーナリスト田中宇さんの「国際ニュース解説」を読むと、そうではないらしい。

渡航費だけでも、アメリカまで5万−6万ドル(500万-600万円以上)、西欧へ3万−4万ドル、日本へ1万−1万5000ドルも必要。それを蛇頭に支払うわけだから、貧乏人に支払い能力があるわけがない。

おまけに福建省は経済特区などもあり、中国で7番目に平均収入の多い地域で、不正移民を多く出している沿岸地域は、省内でも特に豊かな場所なのだという。


その福建では月に5000円も稼げれば良い方だが、ニューヨークのチャイナタウンの中華料理屋で必死に働けば、月に20万円になるから、出稼ぎにニューヨークへやって来るというわけだ。<田中宇さんの国際ニュース解説より一部引用>


http://tanakanews.com/a0911china.htm


余談だが、以前ニューヨークでは一部のチャイニーズが手軽な料金で簡単に人殺しを引き受けてくれるという噂もあって、時代劇・必殺仕事人みたいな稼業が本当に存在するのだと震えた。

 

過去プロの殺し屋に殺された日本人は、心の臓を小刀で一突きだったそうだ。

ハーレムのシュガーヒルは昔、リッチなジャズマンも住んでいる高級住宅地だった。が、1994年のウェズリースナイプス主演映画「シュガーヒル」では、同エリアを舞台に兄弟がドラッグディーラーとしてリッチに暮らしている。

その内兄はヘロイン中毒となってしまうのだが、痩せこけてジャンキーになってしまった兄の姿は、かなりエグイ。弟<スナイプス>はドラッグディーラーを抜け出すつもりが、モブ<ギャング>の抗争にもつれ込むというディープなもの。

それは映画の中の話だと思っていたが、ハーレム出身の友人<ブラック現在40代男性>によると、彼の幼なじみのほとんどが、若い頃にドラッグ絡みの抗争で亡くなっているという。

そんな過去をくぐり抜けてきたハーレムは、まだまだ完全に安心しきれない部分を今も残しているといえる。長く盛り場をウロついている平和な顔つきのフォトグラファーのオヤジは、意外に一般庶民の私などが知り得ない裏の世界を知っているのかもしれない。