☆ハーレム日記リバイバル☆ 第82-2号 ニューヨークの老舗ではなかったSevilleラウンジ | NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

☆ハーレム日記リバイバル☆ 第82-2号 ニューヨークの老舗ではなかったSevilleラウンジ

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                                第八十二号 01/13/2001
                                       Harlem日記
      

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*****Sevilleラウンジ*****

「100年の歴史あるバーがハーレムに存在する。」という情報を入手。勝手に私が、ここだ!と踏んで潜入調査を開始したのがSevilleラウンジ。

ちなみに最近ではラップスターのミュージックビデオ撮影が行われていた。大きな照明や機材に囲まれ、かなり大掛かりな撮影だったから「何の撮影?」と野次馬の男の子に聞くと、

「ビデオ。」と素っ気なく知らされた。

Sevilleラウンジはハーレム125丁目の真中に1つだけある大きなビルの裏にある。

夏に行ったときにも、白と銀色な雪の結晶の飾り物が、天井いっぱい所狭しと吊るされているクリスマスのギラギラデコレーション。ストリッパーでも出てきて踊り出しそうな異様な華々しさだ。

さて、入り口から入ろうとすると夕方5時を過ぎてるのにカギがかかってる。「閉まってるの?」とガタガタとドアを押すと、中からオヤジが出てきて開けてくれた。防犯らしい。

いたいたバー冥土。(バーメイドで変換したら、はずみで文字が、こうなった。)

しかしバー冥土と呼べるにふさわしいバーメイドには、冥土まで、あと一歩ともいえる婆ちゃんがブルーペイントのバーカウンター越しに無愛想に立っている。

「何飲むの?」と唐突に聞いてくるから、

「ウォッカ」と答えると、

「ウォッカは何にする?スミルノフ、アブソルートetc…」

「スミルノフ。」と答えると、小さなショットグラスに、きっちりワンショットを計って氷の入ったグラスにアルコールを注いでくれる。

おいおい婆ちゃん手が震えてないかい?

Aluchuのメールアカウント通りに期待を裏切らないアル中な私は、二杯目を即座にオーダー。

「ダブルで、お願い。」と告げると、婆ちゃんは「こいつは飲める!稼げる!」という態度をあらわにニヤリと笑った。

他の客はというと、基本的には地元の御年寄を中心に中年のブラックのオヤジが仕事帰りに一杯飲んでくというカクウチ型。

奥のバーカウンターに座ってるオバサンは婆ちゃんの友人らしくプラスティックのカップに水やらワインを注いで飲みながら、世間話に花を咲かせている。

しかし、ワインをオーダーすると飛行機内でサーブされるような小さなボトルに入った、まずいホワイトワインが出てくるから、これは、お勧めできない。

その他の客として、美男美女のブラックの若いカップルも入ってきたりする。もー客層がつかめない。

次のオーダーでは、私と私の友人がオーダーしたものを取り違えて婆ちゃんはアルコールを注いだ。

「まちがっとるやん。」と私が言う。婆ちゃんは「へ?」という顔で一瞬たじろぎ、友人のグラスを、そのまま私の前に置いた。

「えーヒロチャンいいの?私の使ってたグラス。」という友人の声。

「いいよいいよ、アルコールだったらエチルでもメチルでもOK」と私。

二人の酒を注ぎ終えると婆ちゃんは「これは私もちね。」と、おごってくれた。

なかなかヤルじゃないかー。

店内にはテレビの大音量。茶の間に居るような、くつろぎムードでローカルニュースが流れている。バーに居ることを忘れかけた頃にリマインドのためか、ときおりR&Bが流れ出す。

「これは奥のブラザーからよ。」と婆ちゃんのチャーミングなウィンクと共に、奥に座っている男性から奢りの酒が私たちのグラスに注がれた。奢ってくれたオヤジは素知らぬ顔でクールに決めながらも、熊のように大きな身体でノソノソと狭い店内を歩き回る。

奢ってくれたってことは会話をしに来るぞ。と、キタキタキター

「君たち名前は、なんていうの?」とオヤジ。
「ヒロエにA」そして、
「ヒロエって名前には、どんな意味があるの?」とオヤジが聞く。

カクカクシカジカを説明する。
「名前は?」と私がオヤジに聞くと、待ってましたとばかりに
「ブラザーだ。」と答えた。ブラザーというのはブラックの男性に対する代名詞だ

と思っていた私は、「へ?」と聞き返した。

「ブラザーっていう名前なんだ。皆が俺様を、そう呼ぶのさ。」と斜に構える。

以前、友人の彼が本名を呼ばせずに「スウィート」と彼女に呼ばせていたことを思い出した。どこにでも居るんだな〜芸名を持つブラック男性。と関心する私。

ブラザーはコンストラクションワーカー、土木・建築の肉体労働者だ。

「羨ましいなぁ・・・私も父の後を継いでコンストラクションワーカーになりたかった。」と言うと、ブラザーは節くれだった手を見せて、

「こんな手になるんだぞ、オフィスワークやってる方が、ましさ。」とニヤリと笑った。

しばらく会話すると、ブラザーは再び奥へ行きジュークボックスの前に佇みタヌキの置物のようにピクリとも動かなくなった。聴きたい音楽を真剣に探しているようだ。

音楽が鳴り出すとバーメイドの婆ちゃんは、若い兄ちゃん客の前で身体をよじって踊り始めた。ダンスダンスそしてダンスで、まだまだ現役の婆ちゃん。さすがハーレム。

愛さえあれば年の差なんて気にしない。あっちの方も現役なのだろうか?と想像すると恐ろしい絵が脳裏に浮かんできたので、慌てて他のことを考えた。

すっかり庶民的な店が気に入った私たちが帰ろうとすると、婆ちゃんが握手を求めてきた。「私はシンシアよ。また来てね。」と、すっかり私たちのことを気に入ってくれたようだ。

というより飲みっぷりに脱帽したのか・・・。

「日本の皆さんに、この店を紹介するよ。」と言ったら、
「日本の皆さん大歓迎よ!」と笑顔で答えた。

それでもきっと、婆ちゃんの笑顔が見れるのは、あなたのグラスに注がれた3杯目のアルコールが飲み干された頃だろう。

 

NYの老舗バーって、案外行ってないものだなぁ〜。近所に住んでたことあるから、ココくらいかも。

 

 

 

 

https://www.timeout.com/newyork/bars/oldest-bars-in-nyc

 

 

<閉店>2130 7th Ave

New York, NY 10027

126th St & 127th St

Harlem
 

<編集後記>
Sevilleラウンジは、100年の歴史ある店ではありませんでした。恐らくイーストビレッジのセントマークス付近の7STにあるアメリカで一番最初にできたバーではないでしょうか?バーの名前は忘れてしまったけど、オリジナルビールをサーブしてくれる店です。