☆ハーレム日記リバイバル☆ 第74号 おやじ3ダル「ハーレム・ゴスペルツアー編」 | NYで生きる!ベイリー弘恵の爆笑コラム

☆ハーレム日記リバイバル☆ 第74号 おやじ3ダル「ハーレム・ゴスペルツアー編」

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                                         第七十四号 11/11/2000
                                          Harlem日記
                                                              
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〜★〜★〜★〜★〜秋の観光特集 第一弾〜★〜★〜★〜★〜

*****おやじ3ダル「ハーレム・ゴスペルツアー編」*****

ゴスペルを歌っているという女性が日本からやってきた。今回はガイドでなく、私、自らが御案内することにした。ついでに友人もガイド研修として参加した。

女の子二人は朝の10時にハーレムの125丁目にやってきた。ゴスペルを歌う彼女はきちんと正装していた。(さすがだ!)

まず、最初に行ったのは観光客が多い教会。ここは下手っぴーなのだ。知っていたにも関らず、とりあえず行ってみた。白い手袋をした黒いスーツ姿のブラックの男性が仰々しく案内してくれる。

二階に上がって席につくと、ステージにはオバサンゴスペラーズが。相変わらず下手っぴーだった。

マイクも脅えるようにキーキーと金属音みたいな不快なノイズ。車の中に放置されていた太陽の熱でヨレヨレになったカセットテープを無理やりラジカセで聴いてる状態とでも言っておこう。あまりにひどいので早々に切り上げた。

次に行ったのは私のイチオシ。以前ハーレム日記でも紹介した教会。入ると同時に、婆ちゃんたちのハグ(抱擁)と熱いキッスで歓迎を受ける。

11時ちょうどに始まるので、私たち4人と白いスモックみたいな服を着た、世話役の婆ちゃん数人に太った男性と席にいるのは太った婆ちゃんと中年男性に小さな男の子くらいだった。

太った男性がエレクトーンに座り、一人の婆ちゃんがマイクの前で聖書を読む。聖書を読む婆ちゃんの「立て」という指令のもとに私たちは立ち上がる。そしてエレクトーンの演奏が始まる。

音が、でかーい!最初は鼓膜が心配で耳をふさぎそうになった。だけど演奏はなかなかのもので、太った男性はプロのシンガーのように低音から高音まで完璧に声が出るし、リズム感もばっちり。

脇にいた婆ちゃんはタムバリンを持ってチャカチャカとリズムを刻む。前の席の太った婆ちゃんはブンブンと大きな身体を右に左に揺すってリズムをとる。手拍子足拍子かなりのエクササイズだ。

2曲目も終わり、やれやれ座ることができたかと思いきや、再び「立て」と指令が出る。そして今回は、さらにエキサイティングなリズム。前の席の太った婆ちゃんの身体は、もはや宙を舞わんばかりに浮き上がる。

そして曲も中盤に入った頃、突然、太った婆ちゃんはドドドッーと演奏者の中に突進。

なっ何事だー!と驚いていたら、いきなり脇に置いてあったドラムに座ってドッドンドッドン、チャカチャカチャカチャカとリズムを刻み始めた。パンチのきいたロックンローラー顔負けの演奏。私たちは驚いて顔を見合わせた。

そして私たち以外は皆、演奏者だと気付いた。

「まだ早いから、これから皆、来るのよ。」と説明する私のツバが乾かぬうち、席にいた中年男性までもが前に立って歌いだす。しばらく聴いてから、次の教会へ移動。

大きな教会の入口で若い女の子が、「ここへ、再び来ることができますか?」と聞くので、
「はい」と答えるとスケジュールのプリントを渡された。
「2時まで居ることができますか?」と聞かれたので、
「ちょっと無理かなー」と答えたら、

「では2階へ、どうぞ」と通された。席に着くと、オレンジと紫でデザインされた衣装に身を包んだ中年女性がステージに20名ちかく座っていた。ムムッこれはいけそうだ。早く歌が聴きたいという気分にさせられる。

だが、マイクの前にはアフリカへの募金がどうのーこうのー慈善事業の説明が長いんだーこれが。あげくの果てにはフランスからジュリー(陪審員)が来てると、フランス人の兄ちゃんがステージに上がり、

「僕はゴスペルを聴くのは初めてだけど、ふらりと通りかかったら、まさにここの教会の名はゴスペルという文字が・・・。」だからどうしたー早く歌わせろーと前置きの長さに、そろそろイライラし始めた私。

「今日は初めていらした方が、たくさん居ます。ようこそ私たちの教会へ。」と、音楽が流れ出すと、前に座っていた赤いスーツや黒のドレスで正装している若い女性や中年の女性そして男性が私たちの方へ向かってきた。

屈託なく微笑みながら握手を求める。一人一人の手はとても柔らかくて温かかった。手の届かない人には笑いかけながら手を振る。

ツアーのお客者様だった一人の女の子は感激して泣いてしまった。思いもよらず初対面の異国の人が、こんなに身近に、温かく迎えてくれたことで感激したのだろう。

いよいよゴスペルが始まった。これこそ本物のゴスペルだ。女性の声が作り出す和音が美しい。完璧なまでの声の重なりは、まるでバームクーヘンみたいに層になっているのが見えてくるようだ。

席にいる人々も両手を上げ、メロディーに合わせて左右にウェーブを描く。


「これが私の聴きたかったゴスペルです。」と、お客様の女の子が言った。ようやく、お客様に満足いただいたことで一安心。

今回のゴスペルツアーは私にとっても意義のあるものだった。どの教会でも、見ず知らずの4人の日本女性を温かく迎えてくれた。信仰のある者は、寛容の心を持っている。人を信じちゃいけないニューヨークに居てさえ、人を受け入れるパワーを持っている。

 

信仰によって生まれるエネルギーを、ひしひしと感じた。

※現在、「おやじ3ダルツアー」は行っておりません。