「さて、と。こんなもんか。」
荷物を纏め、再度部屋を見回す。
これで暫くはこの部屋に戻って来ることはないだろう。
「リュウー、支度終わったー?」
「シオンか。悪いな、待たせた。」
俺は今日、旅に出る。特に宛もない旅だ。一緒に行くのは、このシオンを含めて三人。
シオン、アスカ、シャドウ。三人とも、この世界では激レアな精霊という存在だ。
「じゃ、いこ。アスカもシャドウも待ってるから。」
…シオンにおいては、俺の幼なじみでもある。まぁ、そのあたりの詳しくはまたいずれ話すとしようか。
「ところでリュウ。どうしてまた旅になんて出ようと思ったの?」
「んー…特に理由はないかな。ただ、何となく。」
確かに、名目上での目的はある。
だがそんなのは関係なしに、昔から俺は放浪癖があって、一つのところでじっとしてられないんだ。
「む、来たか。準備は良いのだな、リュウ。」
玄関に行くと、そこには黒と白、対極の人影。シャドウとアスカだ。
「悪い、遅くなった。色々思い出深い物が多くて手間取っちまってな。」
これまで、俺は何度も世界の各地へ足を伸ばしている。その時々に得た記念の品や、「友人」たちからの預かり物など色々なものがこの家には溢れていた。
「さて、それで当面の方針なんだが…」
ポリポリと頭を掻く。
「決めてないのね。まったく、いつものことながら計画性が無いというか…」
返す言葉もない。実際、今までだって「あっちのほうは行ったことがないから行ってみよう」といった好奇心から行動することばかりだったわけだ。
と、行動に悩んでるとき。思わぬ所から助け船が出た。
「…南の町、エトラ…」
聞き取れるかどうかというほど小さな声でアスカが呟く。
「エトラか…その理由は?」
大都市エトラ。俺たちのいる、この大陸の南部主要都市だ。
「…うん…鳥が…」
アスカの独特の会話の間はそのまま描写するとかなり長くなってしまいそうなので割愛させてもらって、その話を簡単にまとめると、この家の近くに住み着いた鳥が、エトラで魔物に住処を追われて逃げて来たらしいということだ。
「成程。元より目的など無いのだから、行ってみる価値はあるか」
シャドウが俺の思ったのと同じ事を口にする。
「そうだな。行ってみるか」
当面の目的は決まったようだ。
皆で歩き始め、ふと俺は背を振り返る。
「じゃ、行ってくるよ」
自宅…いや、そこに「在った」ものに声をかける。
「リュウ、どうしたの?」
いつの間にか距離が開いていたらしく、少し離れたところからシオンが呼ぶ。
「ああ、悪い」
もう一度だけ家を振り返り、すぐに三人の後を追った。吹いた風に乗って、不意に
─いってらっしゃい、りゅーちゃん─
と、聞こえたような気がした──。