父は、誰かの誤射、又は狙われて命を失うことになってしまったであろうにも拘らず、何の義憤も恨みも、そして悔いも無くーー少なくとも、イーヴァルにはそうとしか思えなかったーーひたすら、息子をいたわり、悔しいとも言わず死んでいった・・
『清く』『潔い』聖なる死
だったからこそ、よけい悲しかった。
身も世もないほど泣いた後、彼は父を大木の側に埋めた・・
天涯孤独となったイーヴァルが、一人前のハンターとして独り立ちするのに、さほど時間はかからなかった。
父が自分の技術、経験を、息子に惜しみなく、余すところなく伝えていたことを、彼は、それだけで食べていけるようになった時、初めて理解した。
父から教わった狩猟の技術は、イーヴァルのその後の人生を支え続けたーー
ただ、父が一言も漏らさなかった自分を撃った者への義憤は、彼の中で消えることはなかった。
犯人は、父が倒れる瞬間を見ていたはず、それでも手を貸そうともせず、長い時が流れた今でも、謝罪しようともしていない・・
酒場で飲んでいても、そこに集う猟師達への彼の視線は鋭くなっていた--
敵を討ちたい・・
そんな思いを抱えながらも、白夜の空を見上げてまどろむ自身の見る夢は、母と父と、そして小さな自分の、家族揃った楽しい団らんの情景だったーー