昔物語(9) 船頭 | 前世の記憶を辿る Past life memories

前世の記憶を辿る Past life memories

元ブログ『前世の記憶』の続き。
前世の記憶では前世以外のカテゴリーも様々書きましたが、本ブログは、
前世関係に特化させたいと思っています。

心配していた追っ手の姿が無いことを確認した船頭は、慧子に声をかけた--彼女は乗船後、積まれたぼろ布の下に身を隠すよう指示されていた。

 

緊迫した状況下で声を荒げた時の船頭は、粗野な人物と感じたが、今の口調は落ち着いて丁寧なものだったため、慧子の警戒心は薄れていく・・

 

無事脱出を成功させた安堵感を漂わせる彼を見て、慧子も初めてほっとするのだった。

 

ぼろ布の下に隠れてしばらく休んでくださいと告げるが、彼はすぐ真顔になり、『旅』はまだ続くので その前に着替えをするよう促す。

 

ぼろ布の下には、庶民の女性が着る衣が隠されている--『旅』に、今後も予期せぬ展開が待ち受けていることを暗示する指示だった。

 

 
船頭がその口調から、一介の庶民でないことは想像できた。
そして彼は、何かの規律に従い、その規律に沿って行動を決定しているように感じた。
 
彼女が知る外部の人間は、母を除けば青年僧だけだったが、僧侶の世界とはまた違う世界に居るのだろうーー
ただ、どちらも人に対する配慮を感じ、それは慧子をひどく安心させた。
 
庶民の衣に着替えると一気に睡魔に襲われ、船頭に起こされた時、辺りは漆黒の世界となっていた・・